85話 地下水道の雷ウナギ
日が昇り、海を照らし始める早朝。私たちは冒険者ギルドの依頼掲示板の前に立っていた。
意外にもこの町の冒険者の数は少ないらしく、フラト街であったような押し合い圧し合いはここでは無いようなのだ。
冒険者が全く居ない訳では無いので、お互いに避けながら依頼を見る必要があるが、気が楽なのは言うまでもない。
「良い依頼あった?」
「うーん。この領主館の幽霊退治とかどうでしょう」
「ゆ、幽霊?いやよ、そんなの」
「ですよね。私も嫌ですし…」
「じゃあ、なんで言ったのよ!」
二人であーだこーだ言い合いながら決めかねていると、受付からキャロラインさんが出てきて依頼書を渡してきた。
「これ、やってくれるかしら?かなり危険だけどあなた達は魔法使いだから大丈夫だと思うの」
「雷ウナギ討伐?なんですかこの雷ウナギって」
いや、どんなものかは名前で想像がつく。雷魔法を放つウナギってとこだろう。だが、なぜ他の人たちがやらないのかが気になるのだ。
「名前の通り雷を放つウナギよ。ただ、集団でいることが多くてしかも頭がいいから討伐しづらいのよ」
「報酬は…金貨20枚?!」
「え?!いや、流石に高すぎじゃないかしら?」
報酬額を見て二人で驚いてしまう。金貨20枚なんてそうそう稼げる額じゃないからだ。
そんな私たちの反応をよそに神妙な顔をしているキャロルさんが口を開く。
「いえ、この依頼を受けた人たちの大半は亡くなってることが多いの…それなのによく地下水道に住み着いてくるから厄介なのよ」
「そ、そんなに強いんですか?」
「皆が受けなくなるぐらいには…ね」
私が引いている中、一人でやる気になっている少女が声を上げる。
「やってやろうじゃないのよ!成功したらお洋服買い放題よ!」
「え…でも…本当にやる必要があるんですか?というか今まで誰も退治してなくて問題なかったんでしょう?」
「それなんだけど、もうすぐ海が荒れる季節になるの。難しい話は置いておくと、増水した時に町の人に影響が出るのよ」
多分、町に水が溢れたときに雷ウナギが出てきて住人を襲うと言ったところだろう。ならば放っておく訳にも行かないか。
私は覚悟を決めて依頼を受けることにした。
「分かりました。その依頼、引き受けます。ただ、何匹ぐらい倒せば依頼達成になるんでしょうか…地下水道を隈なく探索するなんてできませんし」
「それはここに書いてあるわ。水道の主要な部分を調査して居たら討伐って形ね」
地図を見る限りかなり長く広い水道のようだが、小さい分かれ道まで調べなくていいのは精神的に助かる。
前は隅から隅まで歩かされて放心状態になりかけたからだ…
「あ、それと退治した雷ウナギは持ち帰ってもいいわよ。別途でギルドが購入してあげるわ」
「ほ、ほんとですか!」
ギルドが購入してくれるということはこの雷ウナギは相当においしいか、何か貴重なものを持っているに違いない。
美味しいもの…これは逃すわけにはいかなくなってしまったようだ。
「じゃあ、お洋服のために行くわよ!」
「ええ!美味しい料理のために!」
お互いに違った目標、いや、欲望に忠実な目標のために、二人は地下水道へ繰り出したのであった。




