75話 廃村
結局、鱗の外し方は分からなかったので鱗が付いている皮部分を切り出して保管することにした。
かなりの大きさになったが、形が変わらない鱗は空間に簡単にしまうことができた。最近になって物を色々しまうようになって、空間魔法が上達したおかげかもしれない。
特に二人分の服やら食料やらを日ごろから取り出しているのはいい練習になっているのだろう…
海岸を歩くこと二日。段々とマリンの表情が暗くなっているのが感じられる。海の魔獣についても詳しかったし、もしかしたら前に話していた村が近くにあるのかもしれない。ただ、それだと村についた途端に襲われかねないが大丈夫だろうか。
「マリン…さん?」
「………」
「マリンさん!」
「え?あ、何よ?」
「その、あまりにも顔が暗かったので…」
「そ、そう?そんなに顔に出てたかしら」
「はい、バッチリと。もしかしてあなたを追い出した村が近いんじゃないんですか?」
「そうよ。下手したら殺し合いになるかもね…」
殺し合い…罪もない村人と殺し合えと?それは流石に嫌だ、私は人殺しではないのだ。
殺してしまえ。
マリンを殺そうとするものは殺してしまえ。
また嫌な感情が蘇ってくる。盗賊討伐後から心の底に黒く渦巻く物があるのだ。まるで自分の感情では無いような感覚で、気分が悪くなる。
「おかしい…おかしいわ」
「?」
「小舟は出ていないし、見回りの人たちもいないわ…」
急にマリンが走り出す。走る速度は遅いが、私は後ろに間を空けてついていく。何となくこうした方が良いと勘が言っているのだ。
遠目に村の家らしき建物が見えてくる。だが人の姿が見えない。
「うそ、うそよ!うそよ!」
マリンは叫びながら一直線にある家に向かって走る。私は追いかけずに村の入り口に立ち尽くす。
これは人が居なくなった訳では無く、何者かに襲撃されたものだと分かる。家という家の扉が開け放たれていて、村の中心にある白い骨は多分…殺された人たちの骨だろう…
家の中を見て回るが何も残されていない。残されているのはボロボロになったベットと家具ぐらいだろうか。
部屋に残されている大小の骨を見ていたら気分が悪くなってきたので、村を出て砂浜の上に座り込む。
「風よ。木々を運べ」
「火よ。木を乾かしながら燃やせ」
周辺に落ちていた流木を風で集めて即席の焚火を作る。パチパチと燃える木々を見ながら波の音に耳を傾ける。
………
どうしても考えてしまう。あの盗賊たちを全員殺したことは正しかったのかと。もっと他に解決方法が有ったのではないかと。
これでは本当に私が妹を殺すような人になってしまうではないか… そんな人で私はいいのだろうか。
だが、彼らを放っておいたらどうなる?
この村を襲ったのがあの盗賊たちだったとしたら?また他の小さな村を襲ったとしたら?
私がその村の人たちを殺したことと変わらないじゃないか。
分からない。何が正しいのか分からなくなってくる。
頭を抱えていたらマリンが戻って来ていたようで隣に腰を下ろした。
「お母さんと、お父さんが亡くなってたわ」
「………」
「他のみんなも」
「………」
「あんなに憎んでいたのに、どうしてこんなに悲しいのかしら」
「………」
「うっ、ううぅ。どうして…どうして!」
私は何も言わずに彼女に寄り添う。手なんかは握ったりしないが、横に寄り添う。それしかできないが、それで十分だろう。




