71話 王女対盗賊
Let the hate flow through you.
かがり火の周りに集まっていた盗賊たちは慌てて武器を取り出している。首領が殺されたことで統率が乱れている今が攻めるチャンスである。
「お、お頭がっ!」
「ど、どうなってんだよ?一人だけじゃ…ぐはぁ!」
一番近くにいた盗賊に向かって全速力で走ってから剣を振りかざす。準備ができていない彼らは成すすべなく私の剣の餌食になる。
そのまま一人、また一人と切り刻む。だが、四人目からはそうはいかなくなる。相手も私を囲むようにして立ち回り攻撃を仕掛けてきたのだ。
「怯むな!相手は一人だ!連携すればやれるはずだ!」
「だれか魔法使い部隊を叩き起こして来い!」
こちらから踏み込んでショートソードを振るうが躱されてしまう。流石に短剣相手にショートソードの速度では間に合わないか。
今度は相手が三人同時に走り寄ってくる。私は一人を剣で牽制しながら他の二人に回り込まれなように立ち回る。
グサッ
「くっ!あああっ!」
がら空きだった背中に短剣が刺しこまれる。すぐに剣を後ろに向かって突き出すが、短剣が引き抜かれるのと同時に逃げられてしまう。
私はすぐに治癒ポーションを空間から取り出し、中身を飲み干す。これで刺された傷口は無かったことになる。
「くそっ!治癒ポーション持ちだ!数は持ってねえと思うが、痛めつけるほうに切り替えろ!」
「おう!」
どうやら私がポーション持ちということで攻撃の方針を変えるみたいだ。それならば私も得意な防御の構えで迎え撃とうではないか。
キンッ キンッ キンッ
四方八方からくる攻撃をくるくる回りながら受け流していく。こちらが欲を出して相手を傷つける度に、私の身体にも傷がついていく。
腕に背中、腹に足、全身傷だらけになるが治癒ポーションを飲んでなかったことにする。だが、傷つけられた痛みだけはどんどんと蓄積していく。
「あ、足があぁ!」
「腕の健がやられたぁ!」
「お前ら!大丈夫か!攻撃できないものは一旦引け!」
私の剣先で傷つけられた多くのものが私の前から逃げようとしている。ここまで私を傷つけておいて逃げられるとでも?
「や、やめ!うぎゃああああ!」
腕から血を流して及び腰になっていた一人を斬りつける。だが思ったように斬ることができない。
よくよく持っている剣を見ると、もうすでに剣の身の姿は見えなくなっていて盗賊たちの血で赤黒く染められていた。
「こ、殺さないでくれ!死にたくないんだ!!!」
「マリンを弄ぼうとした罪よ。死になさい」
剣の持ち方を変えて地面に尻もちを付いている盗賊に近づく。憎しみを手に、そのまま相手の心臓に目掛けて剣を突き出す。
相手の体を貫く感触が剣を通して感じられる。生暖かく、ヌルっとした感触。
剣を引き抜いてから他の逃げ出した奴を睨みつける。
「あ、悪魔だ!ひ、人じゃねぇ!」
一人。
また一人。
もうまた一人。
突き刺す度に腕に感触が残る。
「お前ら!一旦集まれ!あれはやばいやつだ!」
「土よ。塊になり、伸びて、鋭利になり、相手の身体を貫け!」
無数の土の槍が地面から生えて私に襲い掛かってくる。剣を横に振り槍を壊すが、半数ほど私の体を貫いてくる。
「ま、魔法隊!遅いぞ!早くこいつを何とかしないと、全員殺されちまう!」
血がこびりつき、真っ直ぐではなくなった剣を捨て、杖に持ち変える。私を貫いた土魔法を強制的に解除して、治癒ポーションを浴びるように飲む。
「何でまだ動けてるんだよアイツ!お、おかしいだろ!」
「土よ。細かくなり、相手の足を…」
「遅い。火よ。焦がしつくせ」
都合よく一か所に固まってくれている所に火の渦を出現させる。周りには燃える物しかないこの場所で火に包まれたら逃げることすらできないであろう。
火が燃え移り轟音を立てて燃えるのと渦の中からの悲鳴が合わさり、この暗い夜空に向かって虚しく音が捧げられる。
もうここで生きているのは私とマリンだけである。
そう、生きているのだ。
地面に仰向けになって倒れこむ。全身の痛みが急に襲い掛かってくる。脳裏に焼き付いた火の渦を目の前に思い出しながら、気を失ったのであった。




