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69話 穀物にまぎれて

 拷問が終わって全員が暗い顔で椅子に座っている。それもそのはず、私があんな酷い拷問をしたから…ではなく、盗賊団がこの町に大規模な襲撃を予定しているということが分かったからだ。

 しかも明後日の夜に決行だそうだ。数人の自警団員と私たちでは町にある全ての倉庫を守ることなんてできない。だが、彼らはやってくる。どうにかしなければいけない。


「で、どうするのよ。門の前で迎え撃つわけ?」

「マリンさん…彼らは壁を登れるんですよ」

「散開されようものなら手が回らないな…」

「でも、盗んだものは門を通らないといけないんでしょう?」

「しかし、穀物を盾にしてくる可能性が…」


 全然解決策が思い浮かばない。人が足りない以上、相当厳しい戦いになるのは分かりきっている。何とか回避できないものだろうか。

 イライラした様子でマリンが声を上げる。


「だったらこっちが先に盗賊団を制圧すればいいじゃない」

「んな!自殺行為だぞ!」

「確かに、一か所に集まっている所を叩けば早いですね」

「なあ、冒険者ってこんなに無謀な奴らなのか?」


 無謀とはなんだ、無謀とは。この町を走り回って守るよりはマシな作戦だと思うのだが…

 もちろん、奇襲をして相手の数が減らせたらの話だ。真正面から挑んだら勝てるわけがない。


「で、どうやって忍び込むんだ?まさか正面から門を叩くわけじゃないだろうな」

「アリスちゃん。魔法でどうにかならないの?」

「マリンさん…私一人だけなら何とかなりますけど、他の人にできるかは…」


 惑魔法は極力人前では使いたくない。それにお互いに透明になったら互いに何所にいるか分からなくなってしまうのは怖いからだ。

 剣を振った先に仲間が居たりしたら大惨事だ。それだけは避けたい。


「だったら穀物を運ぶ台車に隠れるのはどうでしょう?わざと盗賊に盗ませるとか!」

「だが、たった二人の冒険者に数十人の盗賊の相手をさせてもいいものだろうか…」

「ふんっ、心配ならいらないわ。私の水魔法に敵うものは居ないわ」

「それなら本拠地が制圧出来た後に、こちらは残党を狩ろうか」


 私は心配しかないのだが…二人で数十人の盗賊を相手しろと?確実に死ぬ未来しか見えないんですけど?

 少なくとも他の人のことを守らなくていいのはいいことだ。多分自分の身を守るので精一杯になるだろうからだ。


「討伐に行く前に治癒ポーションを数十個作らせて頂いてもいいですか?」

「数十個って、アリスちゃん…そんなに死ぬ気なの?」

「そういうわけじゃないですっ!無いよりは安心できると思って言っただけです!」


 私が治癒ポーションを大量に作っている間、自警団の皆さんは小麦を荷台に敷き詰めて山にする。

 後は明日の夕方になったら小麦の山に入り込み、盗賊に荷台ごと盗んで貰えれば奇襲ができるはずだ。

 奇襲が失敗した際のことは考えないでおく。最悪、私は透明化の魔法で隠れることもできるが、マリンを置いていくことにもなる…


 いや、やっぱり逃げることは考えないでおこう。私たちは強いのだ。負けることなんて無いはずなのだ。


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