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6話 女王、亡くなる

 今日は剣の訓練も薬の勉強もない日である。

 とは言ったものの、もうすでに2歳にもなるアイリスと一緒に遊ぶのがお休みの日の私の役割である。侍女たちは具合の悪いお母様のそばにいないといけないらしい。決して私がアイリスと遊びたいというわがままを言ったわけではない。


 そして今!私は!アイリスのほっぺをぷにぷにしているのだ!なにせとても柔らかいのだ、ぷにぷにせずにいられようものか。

 だがしかし、私のぷにぷにタイムはすぐに終わりを迎える。膝の上に乗っていたアイリスがよろよろと立ち上がろうとしているのだ。ほっぺたぷにぷにも楽しいが、立ち上がるのを見るのもまた楽しい。アイリスがやることすることが可愛く見えるのはどうしてなのだろうか。

 ふらつきながらも二本足で立ちあがったアイリスを褒めていると、アイリスは床に転がっているボールを私のほうに持ってきた。私は杖を取り出すとボールに向かって風の魔法を掛ける。


「風よ。浮かばせろ!」


 アイリスはこれが大好きだ。ふわふわとボールを空に浮かばせて、色々な動きをつけてあげる。そうするとキャッキャッと嬉しそうにアイリスはボールを追いかけまわすのだ。もちろんアイリスを喜ばせるためだけではない、私の魔法の訓練にもなっているのだ。

 そんなわけで二つ目のボールに風魔法を掛ける。これが中々大変で、最初のボールから意識を逸らすとすぐに魔法が解除されてしまう。両方ともに意識を集中させるのはかなりの訓練が必要だった。特に大変なのは可愛いアイリスの反応に気を取られないようにすることが、だが。


  ぽんっ ぽんっ


 浮かせたボール同士ぶつけてみる。跳ね返って部屋中をぐるぐると回っていく、が落ちる気配がない。どうやら今日は調子のいい日のようなので、3つ目に挑戦してみる。


 ふわふわ~


 成功した!滅多に3つ目は成功しないので満足感が心に広がる。どうよアリイス、お姉ちゃんはすごいだろ~。


 ぱたっ


 ん?ボールの方に集中してアイリスのことを見ていないことに気が付いた。もしかして倒れたり、怪我でもしたりしたら大変と思い部屋を見渡す。が、それがいけなかった。集中が切れて魔法の効果を失ったボールの一つがアイリスの頭にぶつかってしまったのだ!


「うぅ…… えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」


 すぐさまアイリスを抱き上げる。よしよしと頭を撫でてあやすと、ぐすんといいながらアイリスは泣き止んだ。ああ、なんていい子なんだこの子は。

 そんないい子にはもっと笑っていてほしいので、とっておきの魔法を披露する。そう空間魔法である。


「ボールをしまえ!」


 ボールに対して空間魔法を掛けていく。するとそこにあったはずのボールが一瞬にして消えていく。それを見たアイリスはきょとんとしている。そうだよな妹よ、いきなり目の前にあったボールが消えるとそうなるよな。


「ボールよ!出てこい!」


 今度はしまったボールをぽんぽんと出していく。アイリスがまたきゃっきゃ言いながら笑い始める。

 ちなみにこの空間魔法はとても便利な魔法である。基本的に物をしまう、取り出すが主な目的で使われる魔法であり、詠唱者が想像できる範囲なら、しまい、取り出すことができる。生き物などの動き回るもの、形がすぐに変わってしまうもの、料理などの腐るものはしまうことが困難である。しまわれた物はどこへ行くのかは分からないが、しまわれた状態を維持しているらしい。


 空間魔法でひとしきり遊んだ後は、アイリスと休憩タイムだ。部屋に置いてあるコップに水魔法を唱えて水を満たしていく。不思議なことに水魔法は出した後に消すことができるが、そのまま水として残すこともできる。いや、不思議なのか?魔法についてはもっと学ばなければいけないな。

 二人で出した水を飲んでいく。なんともゆったりとした時間だ。こうしているとアイリスはすぐに寝てしまうので、コップを落とさないかをしっかり見ておく必要もある。


 いつものように平和に一日が終わっていく… と思ったら誰かが廊下を走る音がしてくる。そして勢いよく私たちがいる部屋の扉が開かれる。


「エイリス様!アイリス様!ゼリス様が!お急ぎください!」


 ものすごい剣幕で侍女が声を出す。ただごとではないと感じ取った私は、アイリスを抱きかかえてお母様の部屋まで走っていく。


 お母さまの部屋に急ぎ入った私の目の前には、想像していたそのまさかの光景が広がっていた…

ぷにぷに。ぷにぷに。したくなるよね。

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