54話 なぜか生きてる
目を覚ますと世界が縦に三等分されていた。
右端から茶色、真ん中が緑色、そして左端が青色とまばらに白色。
そうか、私は横になっているのか。というか私はなぜ生きているのだ。
思い出したかのように呼吸をするとスピースピーと音が鳴る。まるで肺に穴が開いて空気が抜けていっているようだ。
それよりも思いっきり背中を刺されまくったのだが、あの青髪の子はどうしたのだろうか。しっかり逃げられたのだろうか。
重い身体を無理やり起こして世界を横に三等分にする。
起き上がっただけでも頭が重く、何かで叩かれたかのようにクラクラする。
「起きたのね。あまり動かないで頂戴。飛び出してくる血を戻すのは大変なんだから」
穏やかな声の方を向くと青髪の子が杖を持って座っていた。
「あの、助けてくださったのですか」
「そうよ。お節介だったかしら。私だって目の前で死にかけている人がいたら助けることぐらいするわよ」
「た、助けてくれてありがとうございます…」
「お礼なんか言ってないで、今の体をどうにかしなさいよ。ずっと魔法をかけ続けるのも疲れるんだから」
私は空間から治癒ポーション亜種を取り出して一気に飲み干す。飲むのと同時に背中の傷が塞がり、呼吸も楽になってくる。
さすがはルージュさんのポーションだ。ものすごい効果を発揮している。
「ポーション?とても効き目のいい物のようね」
「ええ。この森で会ったルージュさんに教えてもらったんです」
………
なんとも言えない間が生まれる。何か聞けばいいのだが、ここは無難に名前でも聞いておくべきか。
「えっと… お名前を聞いてもよろしいでしょうか」
「えっ?ええ。マリンよ。あなたは…アリスだったわね」
………
また間が生まれる。黙りこくってても仕方がないので何か聞くことを探す。
「騎士団はどうなったんですか…」
「彼らならこの池の底で寝ているわよ。他はもう既に逃げたわ」
ああ、亡くなってしまったのか。精鋭部隊ではなかったが、末端の騎士団員でも亡くなるのは悲しい。私はこれでも一応この国の王女であり、彼らはこの前までは私に優しくしてくれていたからだ。
「あなた、どうしてそんなに悲しい顔をしてるの?あいつらあなたを殺しかけたのよ?」
「え?その…人が亡くなるのは悲しいものでしょう?」
決して嘘は言っていない。実際悲しいし。
「悲しい…ねぇ。」
「あなたはこれからどうするんです?多分逃げた騎士団が報告したら、彼らはまたあなたのことを狙ってきますよ」
「なら返り討ちにするだけって言いたいけど、あなたのことが気になるのよね」
「わ、私ですか?」
「そう。どうして騎士団に刺し殺されたのよ?あなたも追われていたの?」
「色々あって今はクロプ町に逃げているんです。その、懸賞金まで掛けられているので…」
「一体何をしたら懸賞金まで掛けられて追われるのよ?国の秘密を盗んだとかかしら?」
「い、いえ。私もよくわかっていないんです」
実際は妹を助けようとしてたら殺そうとしていると勘違いされただけなのだが…
「で、あなたはクロプ町…いや、逃げた先で何をするつもりなの?」
「何って… うーん」
改めて聞かれると考えてしまう。今までは生きるためにギルドの依頼をこなしていたが、幸いにもお金はかなりあるほうだ。
それならば第三王女としてこの国を一度見て回りながら、困っている人たちを助けて歩くのもいいのかもしれない。
「冒険者ギルドで依頼を受けながら、この国を回りたいんです。それに人助けもできたらなって」
「分かったわ。私も付いていくわ」
「えっ?えええっ!?」
「あなた、自分すら守れていないのに他の人を助けるつもり?そんなの危なっかしくて放っておけないわ」
「で、でも。いいんですか?」
「私は住んでいたところを追われたのよ。ここで殺しに来る奴らの相手をしていたら生きる気力をなくしていたの。でもあなたの目を見て気が変ったわ。あなたといたらきっと人生が面白くなりそうだもの」
「分かりました。その、面白くなるかは分からないですけど。よろしくお願いします。マリンさん」
「ええ、よろしくねアリスちゃん」
マリンが同行することになった。過去に彼女に何があったのかは分からないが、一緒に旅ができる仲間としていい関係を築きたいなと思ったのであった。
マリン
15歳。女性。
使用する魔法:水魔法のみ
運動:苦手
会話でアリスが話しているかマリンが話しているか分かりにくい所は、もしかすると"ア「」"、"マ「」"のように書くかもしれません。
書かないようにしますけど、仕方なく書くことがあるかも…




