47話 怪しくないお姉さん
少々強引なお姉さんはお好き?
「あら、ごめんなさい!アンデッドか盗賊かと思ってましたわ」
ポーションをかけられた私は少し不機嫌になりながら質問する。
「いきなり何のポーションを投げたんですか。それにあなたは誰ですか」
「あら、人に名前を聞くなら自分から名乗るのが基本よ。習わなかったの?」
先にこんな失礼なことをしたのはそっちじゃないか、と心の中で悪態をつきつつ引きつった笑顔で答える。
「私、アリスと申します。Dランク冒険者で、今はクロプ町へと向かっている最中です。」
「アリスちゃんって言うのね。私はルージュよ。森の奥でポーション作ってるただの魔女よ」
色々とつっこみたい部分があるが、聞かないでおく。それよりももっと大事なことを聞かないといけない。
「あの、この森からの抜け出し方ってご存じだったりしますか」
「知らないわよ。うーん、私はこの森から出る必要がないから知らないって言った方がいいかしら」
「それよりもぉ。あなたポーション作りに興味ない?興味あるわよね、だって最初にかけた液体をポーションって見抜いていたし」
「えっ?いや…それはたまたまで」
「そうよね。興味あるわよね!じゃあほら、この醸造台貸してあげるから作ってみなさいよ!」
困惑していると背中を押されて部屋の奥に移動させられる。机の上にはポーションの材料とみられる物が乱雑に置かれており、まず最初に掃除をしたくなるような酷さである。
それはさておき、ポーションを作れと言われたので治癒ポーションを作ることにする。あれはいくつあっても足りないからだ。
煩雑な机の上からツナギソウを探し出し、すり鉢ですり卸す。できたペーストを釜の中に入れて、水を追加しながら煮込む。
いい感じに煮立ってきたらガラス瓶に注ぎ、水で希釈する。
王宮で何度もやったから今でも手が覚えている。練習していて良かったと今は思える。
「はい、作りました。どうでしょうか」
「すばらしいわ。基本に忠実で基本しか行っていない。できた物は超が付くほど基本的な効果のポーション。うん、実に素晴らしいわ」
なんか褒められているようで褒められていないような評価をされた。褒められているのだろうが、彼女からしたらとても平凡なポーションらしい。
しかし彼女のポーションはそんなに基本ではないのだろうか。
「にしても何処でこのレシピを知ったのかしら。分量、分数ともに昔のと変わらないわ」
「えっ。えーと、街で薬師の師匠に教えてもらいまして」
王宮で薬師団団長に習いました。なんて言えるわけがない。森から出ることのない彼女になら言ってもいいかもしれないが、なるべく私の存在を隠し通した方がいいだろう。
「そう、まあいいわ。それじゃあ、あなたは今から私の弟子よ。いいわね」
「え。えええぇー!」
「そんなに驚かなくても。少しの期間だけよ。私の最新のポーション作りを叩き込んであげるわ」
想像はつく、机の上に乗っかっている物がポーション作りに使われるのは分かる。
でも心配なのは効果のほどだ。いい意味ではなく色々とやばい性能をしているのではないだろうか。
「その、安全なんでしょうか…」
「大丈夫よ!作っている最中に爆発とかしたことないし、死んだこともないわ」
「…いえ、そうではなくて、ポーションの効果のほうで…」
「なら試してみる?んーでも君のお腹に穴を空けるわけにはいかないか」
ルージュさんは窓を開けてポーションを外に投げた。
バアアオォン
爆裂音とともに家が振動する。いや急に何をするんだこの人は。
「爆裂ポーション亜種よ。投げた方向にしか爆発が行かないの。便利でしょ?」
私はぽかんと口をあけて突っ立っている事しかできなかった。
ああ、私はこれからこの人に変なものを教え込まれるんだ…




