32話 ポーションの効果
卑怯な手。
地面に這いつくばりボロボロになったカーラは降伏を促してもすぐには返答しなかった。
「降伏しないのなら、このまま魔法を掛け続けるけどいいのかしら」
小刻みに彼女は震えている。怖くて声も出ないのだろうか。
「だ、だれがぁ!降伏なんかするもんですか!」
ぱっと振り返ったかと思うと、私の目の前に液体が迫っていた。
前に出していた右腕で防ごうとするが、大部分が顔にかかってしまった。
「い、いっふぁいななおしはの!」
まずい!雷に打たれた時のように顔と口がしびれて動かなくなっている。
「まさか、これを使う羽目になるとわね。でもいいわ、あなたはこれを使うだけの相手ってことね」
(我を隠せ!)
「あらあら、隠れちゃって。でもいつまで隠れていられるかしら」
左手を使って痺れる右手から杖を取り、相手の魔法に備える。
いや、ここは私からこうげ…
「雷よ周囲に降り注げ!」
カーラは彼女周辺に雷を大量に落とす。
私はその前にすかさず頭上に土の盾を展開する。が、それがいけなかった。
「そこね!土よ強固な壁を作れ!風よ張り裂けよ!」
体がふわりと浮いて土の壁に叩きつけられる。目の前が暗くなり、自身にかけていた惑魔法の効果が切れる。
一瞬だが意識を失ってしまったようだ。
そして目の前にカーラの足が見える。
「ほ~ら~。さっきまでの威勢はどこに行ったのかしら~」
私の足の上に足先をぐりぐりと押し付けてくる。痛い。痛い。痛い。
「それじゃあ、これからやられた分だけ分からせてあげるから」
カーラはローブの中から革袋を取り出すと紐をほどき始めた。たぶんこの中に麻痺ポーションが入っているのだろう。
「まずは、このポーションを飲んで、全身びりびりになっちゃおうか」
私にポーションを飲ませるためにカーラが屈む。不意を突くなら今しかない。
目をつむってから集中する。
(光よ!輝き弾けろ!)
「きゃ!まぶしい!」
(炎よ。燃え盛れ!)
激しい光とともに彼女を炎の渦の中に閉じ込める。目暗ましとはかなり卑怯かもしれないが、相手だってポーションを使ったのだ。文句は言えないであろう。
魔法の火を弱くしていく。ちなみに魔法の火は熱いだけであって、服を燃やしたり肌を焦がしたりは基本的にはしない。基本的というの言葉が付く通り、燃やさないと想像している内は燃えないが制御していないと燃え移ることがあるのだ。
「もう降参するかしら」
立ち上がって彼女の様子を確認すると、彼女はすでに仰向けになって気を失っていた。相当熱かったのだろう。
「おねーちゃんが…まけた…」
「うそだ!おねーちゃんがまけるわけない!」
子供たちは半泣きになりながらうそだうそだ、と言い合っている。
勝った私には何のおめでとうの一言もないのか。
私は少しムスっとしながら気を失ったカーラと泣いている子供たちをどうするべきか悩んだのであった。
敗北シーンは、書かないぞ、書かないったら書かないぞ。
色々薄くなっちゃうからね。




