28話 ギルドでお勉強
ゆったりと読み物回+あっさり目な昇格。
何日か宿屋で休養し火傷の痛みが引いてきたころ、私は冒険者ギルドに来ていた。
中に入るといつもの喧騒が耳に入る。未だにこの押し合いには慣れないが、今日は依頼が目的ではない。
「キャロルさん。魔物について勉強したいんですけど、何かありませんか?」
「あらアリスちゃん。数日見てなかったけど元気そうね。図鑑なら横にある棚に揃っているわよ」
「見てみます!ありがとうございます」
受付を正面としてその左側、飲み物の販売をしている場所にその棚はあった。
3段ぐらいの小さい棚だが、中には魔獣図鑑に動物図鑑、剣の種類や野営の基本など冒険者向けの本が揃っている。
魔獣図鑑を引っ張り出して空いている机に広げる。リンゴジュースを飲みながら読んでもいいが、本を汚したくはないのでそんなことはしない。私はいい子なのだ。
図鑑の冒頭には如何にして魔獣が出現するのか、知識を持った魔獣の行動原理などの論文なるものが掲載されている。
そんなことには興味がない私はぺらぺらとページをめくり、お目当ての魔獣を探していく。
途中にアースボアの挿絵を見つける。少し気になるので目を通していく。
”アースボア : 動物であるイノシシから派生した魔獣。小型、中型、大型に分類される。動物種イノシシと同じく深い毛に覆われており、鼻が良い。獲物を見つけると突進、噛みつき行動を取る。但し、動物種とは違い、後ろや横に動くことが可能。集団での戦闘時は型によって行動が変わるので要注意。
小型::自身に風魔法を掛け、素早い動きで敵を攪乱する。またその素早さを生かし突進の威力も高めている。
中型::土魔法に長けた個体が多い。小さな土の塊を連続で飛ばしてくる。
大型::大きな土の塊を飛ばすことに加えて、風魔法と土魔法を用いた強力な突進に注意。
肉はとても旨いぞ!必ず持ち帰れ!”
これを最初に読んでおくべきだったか。次にアースボアに出会ったら慌てずに対処できそうな気がしてきた。気がするだけで出来るかどうかは分からないが…
あと、最後の行も含め誰かさんが書き込んだ跡がかなり多い。皆が使うからだろうが、これが中々に面白い。
「アリスちゃん?ああ、いたいた。今日は依頼受けないわよね?」
「はい。そのつもりですが」
「なら丁度いいわ。あなたのギルド員証渡してもらえるかしら。ランク昇格したいでしょ?」
キャロルさんはそういうが、こんなにあっさりと昇格してもいいのだろうか。
「あの、でも、何か審査とか、試験とかないんですか?」
「ないわよ。これまでの依頼の成績と討伐状況、それにあなたはD級冒険者4人を一人で倒したから、ギルド職員は全員あなたの昇格を認めたわ」
「あっ、はい。そ、そうなんですね」
なんかしっかり見られていて認められたのは素直に嬉しい。
ギルド員証を首から外してキャロルさんに手渡す。彼女は受け取るとそのままギルド二階へと上がって行った。
私は目的の魔獣を探してまたページをめくり始める。そしてあの忌々しいぷよぷよした塊の絵を見つける。
”スライム : 体のほとんどが水分でできた魔物。決まった形はなく体を自由自在に変化させることが可能。体液中に核と呼ばれる物を保持しており、それがスライムであり、液体はただの防御膜と考える説もある。基本的な攻撃手段は体液を飛ばす又は締め付けるの二つのみ。時折合体することがあり飲み込まれた場合は即死するので注意すること。また下記の様に色によって種類を判別できる。
スライム(原種)::原種と考えられている青いスライム。水魔法を使用し身を守る。
エイシッドスライム::触れたものを溶かす効果を持つ。非常に危険なので液には触れないこと。
ウィンドスライム::空気のように軽いスライム。見かけても手を出さないこと。最悪窒息死の恐れあり。
ライトニングスライム::雷を纏ったスライム。雷が鳴る天候の際によく見かけられる。纏っている雷は食らった場合、心肺停止の可能性あり。注意すること。
ファイアスライム::どういうわけか火を纏ったスライム。土魔法で消火が有効。
その他::数えきれないほど亜種がいるので、割愛する。
討伐方法は簡単だ!剣で核をぶっ刺して終わりだ!
火魔法で焼くのが有効。火事に注意してね。
核を移動できないようにすることが重要。箱等は必須。
水魔法は制御を乗っ取られる。というかされた。”
どうやらスライムという名前のようだ。そして書き込まれた跡を見る限り、かなりの数の冒険者が手を焼いたのがわかる。
私も手を文字通り焼いたので苦労が分かるというものだ。
「はい。アリスちゃん。ギルド員証の変更が終わったわよ。Dランクへ昇格おめでとう」
「ありがとうございます、キャロルさん!」
ギルド員証を受け取って確認する。前のがそのままだが、表と裏に銅の縁取りが追加されている。
裏側には私が今まで行った依頼の達成状況と活動が書かれている。
首に掛けて眺めていると、つい嬉しくて頬が上がってしまう。
それを隠すように図鑑に顔を向ける。決して照れ隠しではない。誰かに見られていたら…やっぱり恥ずかしいからだ。
嬉しい気持ちを胸に、今日はもっと本を読んでいようかなと思ったのであった。
次回もゆっくり回。




