23話 裏路地での報復
美味しいものをいっぱい食べて、お風呂にも入ってさっぱりして、上機嫌な私は宿への帰路についていた。
「いたぞ。準備はいいか」
「本当にいいのかな。もしバレたらどうなるかわからないよ」
「でも、あんなことされたままで終われるかよ!」
空が赤く、とても美しい夕焼けが広がっている。上を見て歩いていたら、突然目の前が真っ暗になり腕を強く引かれる。
反応する間もなく口に布が被せられる。
「んんん!…んんーー!」
何者かに引きずり込まれながらも必死に手と足を動かして抵抗するが、二人にがっちりと抑え込まれて抜け出せそうにもない。
抵抗していたら両手を横に広げられ身体を壁に押し付けられ、足が縛られる。
「やっぱりダメだよこんなこと…」
「もう遅いだろ、それに俺たちの生活を狂わせたこの恨みを晴らすんだろ?」
強烈なパンチが腹に当たる。呼吸が一瞬止まって、激しく咳き込む。一発では物足りないのか、二発、三発と力を込めながら殴ってくる。
一体私が何をしたっていうんだ。
「これは俺に当てた矢の分!」
「これは私の足の痛みの分!」
今度は足を何回も蹴られる。だがこのまま黙って殴られるわけにはいかない。口に使われている布を使って風魔法を繰り出す。
(風よ!相手とこの布を切り裂け!)
「うわっ!まだ抵抗するのかよ。大人しく死にやがれ!」
「かはぁっ! 何の為にこんなことを… あうっ!」
「人の生活を壊しておいてぬけぬけと暮らせると思ったのかよ!」
私が…この人達の生活を壊す?そんなことをした覚えはない…
「あれから、俺たちの評判はダダ下がりだし、依頼も受けにくくなったんだよ!このくそがっ!」
「ライノス。これ以上は死んじゃうよ…」
「うるせぇ、ミリー!お前だって生活がおかしくなったのは分かってんだろ!こいつに壊されたんだよ!」
顔、腕、胸、腹、足。つまり全身を殴られ続けて意識が朦朧としている。すでにかなりの数の骨が折れているんじゃないだろうか。
「どう…して… 私の…せいに…」
口から血を吐きながら必至の抗議をする。何もできないのは歯痒いが、もう体を動かす力も残っていない。
「そうよ、決闘を仕掛けたのは私たちでしょう!」
「だまれぇぇぇ!」
脳天に相手の拳が直撃して体の力が抜け、気が遠くなる。
この…まま… 私… は… しんで… しまうのかし… ら
「ねぇ。もうこの子意識無いみたいだけど。もういいんじゃないの」
「まだだ!いくら殴っても足りない!俺たちの…俺たちのあの生活が…」
「もういいわ!こんな事したってギルドにバレたらタダじゃすまないわ。他の町に行ってやり直しましょうよ!」
魔法使いのミリーは地面に倒れたアリスを殴り続けているライノスを止めようとする。しかし彼は止めようとしない。
「生まれ育ったこの街を出ていくだって?こいつが出ていけばいいんだ!こいつがいなくなればいいんだ!」
一体何が彼をここまでさせるのか。他の三人はその場を離れるように距離を取る。
「誰かがここに来る前にさっさと逃げるわよ。行くわよライノス!」
4人の冒険者は血だらけのアリスを残して走り去ったのであった。




