202話 下りの方が大変
ドサドサドサッ
足を一歩前に出すたびに崩れる雪。
白くて細かいそれは落ちていくごとに大きくなって周りの雪を巻き込みながら音を立てていく。
上りは寒さにやられたもののここまで大変ではなかった。しっかりと前に進めたし姿勢も前のめりで楽であった。
だが下りはどうだ?歩く度に崩れる雪に体勢を崩さないように下るのは非常に体力を消耗するのだ。
「ちょっと!花が無いからって不用心に歩きすぎよ!逸る気持ちも分かるけど、ゆっくり行きなさいよ!」
「分かってます!ただ下りているだけなのに崩れる雪の方に文句を言ってくださいよ。ああもう、風に乗って早く下りたい!」
「だめよ、まだマナが薄いもの。ここから飛んだとして魔法が使えなかったらそのまま雪の中へ埋まるわよ?いいの?」
私は口をつぐんで抗議するが、マリンは断固として飛ぶのを許してくれない。
ほっぺを膨らましてもっと抗議するが、それでも効果がない。つまり、普通に歩いたほうが早いということである。
舞い上がる雪の粉と私の口から出てくる白い息。
どんなに装備を整えても足の間接に負荷がかかるこの下山。
もし今後、山を登るってなったら全力で迂回するのを提案しそうだ。それぐらい大変な経験をしている気がする。
「にしてもほんと、黒いわね。他の町でもここまで黒い雲はなかったわよ」
「そうですね。もし魔族があの雲を出しているならフラト街が襲われているんじゃないかって思っちゃうんです」
「そこまで大々的に動くかしら?あいつ等の目的がよく分からないのよね、あそこまで強くて人間を殺したいならすぐに動けばいいのに、回りくどいやりかたをしている様に思えるのよね」
確かにそうである。
現に私のことを殺さずに操り人形のようにして人を減らそうとしていたぐらいだ。
もしかしたら何か直接手を出さない理由があるのかもしれない。
人同士で争うようにするとか、もしくは人を残して従わせたいとかあたりだろうか?
だが、そこまでして人を残す利益は魔族側にあるのだろうか?
あの動くことのない黒い雲を観察しながら淡々と山を下りていく。
「まだ、だめですか?あれなら滑り降りるとかでも……」
「あんたって人はこういう事になるとすぐに変なことを思いつくんだから!だめよ!止まれなかったり転げたりした時にどうしようもなくなるでしょ!」
「は~い。はぁ、早く下りられないかなぁ」
確実に下りられてはいる。それは分かるのだが、なにせ景色が変わらない。
この下りる作業に段々と飽きてきていて何か考えることが欲しいのだ。
しかし、決して問題が欲しいわけではない。滑りこけて転落するとかもってのほかだ。
「マ~リ~ン~……。あっそうだ!フラト街に着いたら最初に寄りたい所があるんです。それから冒険者ギルドへ顔を出しましょう」
「ギルド以上に大事な場所なの?まあ、私はあの街のことはさっぱりだからアリスに任せるけど」
「私の命の恩人が大丈夫か確認したいだけですから。何かが起こった後で後悔したくないですからね」
山の麓に辿り着いたら全力で駈け出そう。
いや、全力で飛ぶか?どちらにせよ良からぬ事が起こる前に、もしくは人が亡くなる前にあの街へと着かなければいけない気がするのだ。




