19話 新しい剣と依頼の取り合い
軽く剣選び。
あとお約束のような何か。
この私に買えぬ物などない、と言わんばかりに暖かくなった懐の私はフラト街にある鍛冶屋さんの目の前までに来ていた。
今日は人さらいに取られてしまった剣の代わりになるものを見に来たのだ。
カラン カラン
鍛冶屋の中に入ると色々な剣や棍棒の様なもの、それにナイフが棚や壁に掛かっていた。
「いらっしゃい。おや、珍しいお客さんだ。何をお探しで?」
49歳ぐらいのおじさんが声をかけてきた。多分この店の店長だろう。
「剣を買いに来ました。ロングソードとかありますか」
「ロングソ… お嬢さん、ロングソードが欲しいの!?」
「はい… なにか問題でも?」
店長はとても驚いているが、私は何か変なことを言っただろうか。
「いや、すまない。こんな可憐な子があの長い剣を持っているところが想像できなくてな。ロングソードはそっちの棚にある。手に取って確認してもいいぞ」
「はい、ありがとうございます」
歩きながら棚を眺めていく。ロングソードと一言に言っても様々な種類があるみたいだが、大事なことに気が付いた。
料金:金貨15枚
足りない。お金が足りていないのだ。というか私は今までこんな高価な物を振り回していたのか。
仕方がないのでショートソードの棚の方を見てみると、金貨5枚程度なので買えそうである。
近場にあったショートソードを手に取って構えてみる。ロングソードよりも軽く振りやすい上に、狭いところでも振れそうである。
他のも試してみるが一つ一つ振った感触が違うことに気が付いた。私はどうやら先端が軽く、握る柄の部分が細めの剣が丁度いいらしい。
選んだショートソードと小さい解体用のナイフを持ってカウンターに行く。
「ん。ショートソードにしたのか。にしても魔法使いなんだろ?なんだって剣が必要なんだい?いや、詮索するわけじゃないから答えなくてもいいけどよ」
「これは…護身用です。剣の方が戦いやすい相手もいるので」
「そうか、護身用か。まあ使う時が来ないことを祈るよ。ほい、おまけで剣帯も入れておいたからな」
ショートソードとナイフ合わせて金貨7枚分を支払って受け取る。服の上から剣帯を着け、ショートソードを体の左側に装着する。
剣は腰に身に着けるとその重さが足と腰に来る。加えて剣帯をしっかりと締めているので私の身体のラインが出てしまっていて少々恥ずかしい。
お金が貯まったら上から羽織るものを買ってもいいかもしれない。
というか、全部空間魔法でしまえばいいのだが、折角剣帯を貰ったのに使わないのも気が引けたのだ。決して忘れていたわけではない。
私は新品の剣を下げて、ギルドに向かう。朝の混む時間帯は過ぎているので気楽に依頼を選べるだろう。
◇◇◇
ギルドに着くと予想通り人は少なかった。居るのは受付の方とまだ依頼を決め切れていない冒険者たち、それと朝から共用テーブルで駄弁っている人たちだ。
私はさっと依頼掲示板を眺めて動物狩りの依頼を探す。私はまだEランクなので、魔獣討伐依頼は受けられないが動物を狩って素材を渡す依頼なら受けることができるのだ。
見たところ中型イノシシ1匹を仕留める依頼か、シカを3匹仕留める依頼があった。前の日に大型魔獣イノシシを倒したので中型イノシシなら楽に倒せると踏んで依頼書を剥がす。それと同時に後ろから声がかかる。
「あ!おい!それは俺たちが受けようとしてた依頼だぞ!」
振り返ると四人組の男女が私の後ろに立っていた。前に出ている男の子がリーダーだろうか。
「それは、俺たちがどちらにしようか迷っていて保留にしていたものだ!」
「そういわれても… ボードに張られたままでしたし…」
「お前はEランクだろ!俺たちDランクより下じゃないか、なら俺たちの方が優先されるべきだろ?それに中型イノシシなんか狩れっこないだろ」
この前大型魔獣を一人で倒したのですけど…
困っていると受付にいたキャロルさんが助けに出てきてくれた。
「あなた達、ボードに張ったままならそれは誰でも取っていい依頼よ。それに彼女は魔獣も倒せるぐらい強いのよ」
「なっ!こんなひ弱そうなやつがか?魔獣を?不正をしたに決まってる!」
言われるがままに聞いていたら何かムカつくことを言ってくるじゃないか。
「はあ、彼女がそんなことをする訳ないでしょう。まだDランクへの昇格はしていないけどそれなりに強いはずよ」
「それなら俺たちが見極めてやるよ。そんなに強いなら俺たち四人ぐらい余裕だよな?」
「ちょっと、あなたたち、それって」
「そうだ。俺たち"猛攻の大鳥"はそこの依頼横取り女に対して決闘を申し込む!」
………と言われたがどうすればいいのだろうか。受けないという手はあるのだろうか。
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