17話 魔獣!
昨日の依頼から一夜明け、今日は街の西側の草原に来ている。
依頼を受けた訳ではなくツナギソウを探しに来たのだ。なぜツナギソウなのかというと、この前受けた依頼にこの薬草の名前があったのに南の草原では見つからなかったからである。所謂好奇心というやつである。
下を向いて探すが一向に見当たらない。それどころか目の間には林が広がっていた。
気が付かないうちに結構歩いてしまっていたようなので、今度は北に向かうように歩き始めようとしたその時。
ガルルルルル、フンッ
林の方から何かの鳴き声が聞こえる。私は腰につけていた杖を取り出して警戒をする。
じりじりと鳴き声のする方向とは逆に下がりつつ、様子をうかがう。
ゆらゆらと禍々しいオーラが木々の間から見えてくる。そしてイノシシの様な姿をした魔獣が目の前に現れる。
しばし睨み合いをするがイノシシが先に突進を仕掛けてきた。私はそれに合わせて風魔法を唱える。
「風よ!切り裂け!」
フンガッ!
真正面に突進してきている相手を切り裂く風を出すが、相手は横に飛び跳ねるという予想外な動きをして躱してきた。
今度は横に避けられないように素早い攻撃に切り替える。
「風の矢よ!貫け! がはぁっっ!」
一足遅かった。突進してくる体制を取っていたと思っていたイノシシが地面から石を放ってきたのだ。
私の放ったウィンドアローが石に当たり威力を弱めてくれたものの、石はお腹に直撃し私は後ろに少し飛ばされる。
背中からばったりと倒れてしまったので、起き上がろうするが、目の前にイノシシの顔が迫っていた。
「うっ!きゃあぁぁ!」
相手は鼻で私を器用にすくい上げると空中に投げ飛ばした。そしてそのまま地面に叩きつけられた。
全身に痛みが走るが骨は折れていないようだ。追撃が来ないうちに立ち上がる。
イノシシはこちらを見ながら地面を足で蹴っている。これ以上は相手の好きにはさせまいと杖を構える。
フガガガガッ
唸り声をあげて突進してくる。だがこちらは攻撃をせずに引き付ける。
心臓がバクバクと鳴る。一歩間違えば相手の全力の一撃を受けることになるからだ。
ドスドスドスッ
勢いを増したイノシシがこちらに近づいてくる。震える手を抑えながら魔法に集中する。
もうぶつかると思われるその時に魔法を発動させる。
「土よ!壁を作れ!」
ドガァァァン
自分の目の前にずっしりとした土の壁が生えてくる。そして不意を突かれたイノシシは土の壁に激突した。
舞い上がった土埃が落ち着くのを待ってから恐る恐る土壁の裏を確認する。そこにはよろけているイノシシがいた。
まだ死んでいないのかと驚くが、驚いている場合ではない。止めを刺さないといけない。
「ウィンドカッター…」
殺さないといけないことに少し申し訳なく感じるが、こちらも殺されかけた身である。仕方ないことと割り切るしかない。
私はウィンドカッターでイノシシの首を切り裂いていく。弱っていたイノシシはなすすべなく倒れる。
「やっと… 終わった…」
全身の痛みが思い出したかのように戻ってくる。痛みに耐えかねて私はその場に座り込んだ。
数分後。
立ち上がることが出来るようになったので、イノシシを観察してみる。
首からは大量の血が流れた跡があるが、襲ってきたときのような禍々しいオーラは無くなっている。一体何のオーラだったのだろうか。
これからこのイノシシを運ばないといけないのだが、入れる箱はあいにく持ってきていない。
仕方がないので後ろ足を手でもって持ち上げてみる。
「んんん!はぁ。」
重い。それはそうである。私を軽々と吹き飛ばせる程の巨体である。手で持ち上げられるわけがない。
それならばと風の魔法を使うことにする。
「風よ。この巨体を浮かせ!」
あの重い巨体が嘘のように浮いている。その代わり強烈な風がイノシシの下で吹いている。
かなり目立ちそうではあるが、このまま街まで運ぶことにした。
◇◇◇
案の定、街に着いたら周りの人たちが私のことを見てくる。まあ女の子が一人で大きなイノシシを連れていたら驚くのも分かる気がする。
そして冒険者ギルドの扉を開けてイノシシの死体と共に中に入る。
他の冒険者たちもこちらを見てくるが声はかけてこない。お互い干渉しない精神が強いのか何なのか…
受付にいるキャロスさんの前に行き、私はこう聞いた。
「魔獣を仕留めたんですけど… どうすればいいですか」
困惑していたキャロルさんの顔がさらに困惑した顔になったのだった。




