13話 私の名前と冒険者
馬車に揺られていたらもう夜になっていた。馬車は道から少しそれ、円を描くように止まっている。内側には人数分のテントと焚火がある。
私は焚火の目の前で暖かいスープを飲んでいる。
「それで、その子はなんて名前なのかしら」
ガインのパーティーメンバーだと紹介されたサリアがガインに質問している
「そういえば、聞いてなかったな。いや聞けなかったが正しいか」
私の名前…
考えてみればエイリスという名前は使えない。この国の王女とバレれば面倒だし、騎士団にも見つかりやすくなるばすだ。
だがいい名前はすぐには思いつかない。
頭を捻っているとサリアが口を開く。
「あぁ、言いたくなかったらいいのよ。その…そうだ、私たちは冒険者をやっているのよ」
「冒険者…?」
名前は知っているが、何をしている人達なのかは全く知らない。ちなみに私の声は夕方ぐらいには出るようになっていた。
「そう、冒険者よ!最近は冒険する場所は無くなっていて討伐とか護衛の依頼が多いんだけどね」
「まあ、俺たちみたいに強ければ金には困らないが、最初は…大変って呼ばれる職種だ」
「ちょっと、そんなこと言うと紹介しづらいじゃない!」
「ああ、すまない。だけど、事実だろ?」
「そりゃ、そうだけど…言い方ってもんがあるでしょ。それより、あなた冒険者になってみない?」
「冒険者に…ですか?」
考えたこともなかったが、これから生きていく為に入らないといけないのかもしれないと思う。
「たまにあるのよ、身寄りのない子が冒険者になることって。それにあなたの様な子が国の奴隷として働かされるのを私は見たくないのよ」
国の奴隷?たしか奴隷はお母様が終わらしたはずではなかったのか。
「国が… 奴隷を使っているのですか?」
「そうよ。あんな制度もう終わったと思ったんだけど、一年ぐらい前にまた始まったのよ」
私の知らない間にお姉様が始めたことになる。しかし、何故再び奴隷制度なんかを始めたのだろうか。
「冒険者なら死ぬことはあるかもしれないけど、自由に生きられるわ。ずっと働かされっぱなしよりはましよ」
「それに、今なら俺たちがギルドに紹介できるからな。紹介なしでも入れるが、あったほうが色々便利だぞ」
この人達はかなり冒険者押しなのだが、何故だろうか。やはり同じ冒険者を増やしたいのだろうか。
「その…考えておきます」
「そ、そうよね。人生にかかわる大きな決断だものね。時間かけて考えてね」
なんだか少し気まずい雰囲気になってしまったので、焚火の火を見つめて他のことを考える。
私の名前…
どうしたものかと悩む。自分の名前であるエイリス・サンライトはとても気に入っている。だが、これからは別の名前が必要だ。
エイリスに近い響き… Aliceではなく、Aliceはどうだろうか。
「…アリス」
ぽつりと音の響きを確認するように名前を言ってみる。なかなかいい響きかもしれない。
「その、私の名前… アリスはどうでしょうか…」
「アリスちゃんっていうの?いい名前じゃない。でも、どうでしょうかって言われても名前なんだからどうもこうもないんじゃないの?」
「あっ、そうですよね。あはは」
早速不審な発言をしてしまいガインが不思議そうな顔をしていたが、彼はそのまま立ち上がって夜の見張りをするといって行ってしまった。
冒険者として生きていくかは迷っているが、名前に関しては満足している。
今日の夜は少し楽に寝られそうだ。




