1話 5歳の誕生日
不定期投稿。気軽に読めるようなものを目指して書いていきます。
物語が本格的に始まるまではさくっと書いていきます。たぶん、ずっと軽い文章かもしれません。
追記1 : ずっと軽い文章になりました。はい。
追記2 : 126話にてGL、微百合タグについての連絡を追加。 --2024/08/26
追記3 : 章を設定。 --2024/10/29
私の記憶が定かになってきたのは、5歳の誕生式の頃からである。
いや、記憶よりも自我の方が正しいのかもしれない。
「わたくし、エイリス・サンライトは、このくにに、つくすことを、ちかいます」
片言ではあるが、頑張って覚えた文章を沢山の偉そうにしている人の前で口にしていく。そして最後に片足を後ろに下げてペコリと頭を下げる。
拍手と歓声が起こる。今までに聞いたことのない音の大きさだ。ここで驚いてはいけないと、裾を持つ手に力がはいる。
「それでは皆様、私の娘とこの国の成長を願って。乾杯」
「「乾杯」」
お母様のよく通る声が玉座の間を駆け抜けていく。
それに続けて大人達の声も響いていく。
「よく頑張ったわねエイリス」
席に着くと同時に3つ上のセリスが頭を撫でながら褒めてくれた。
「こら、セリス。頭を撫でまわさないの。まだ皆さんの前でしょう?」
ピシッっとした声でセリスお姉さまを止めるのは、一番上のエリスお姉様である。
「いいじゃない。私がやった時なんて噛んで恥ずかしかったのよ!それに比べたらエイリスはすごいわよ」
「だからって、今、撫で回していい理由にはならないわよ」
セリスは撫でていた手を引っこめると、ムスーとした顔で前に向き直った。
私は乱れた髪を直して目の前にある飲み物に手を伸ばす。
「ん… おいしい!」
中身はリンゴのジュース。甘くてさらっと喉を通り抜けていく感覚がおいしさを引き立てている。
とは言っても、よく飲むので味は同じはずだが、よく分からないけど今日はおいしく感じる。
ふと顔を上げるとお母さまがこちらに歩いてくるのが見えた。
「エイリス、今日は頑張ったわね。お行儀よくしているのもあと少しの我慢よ」
「はい!」
「それと、エリス。しっかりと見ておくのよ。あなたには覚えてもらわないといけませんからね」
「わ、わかっております。お母さま」
いつも忙しそうにしているお母さまが、ニッコリと笑顔を向けてくれているをジーっと見つめていると、こちらも顔が自然と笑顔になっていく。
お姉さまたちに声をかけたかと思うと、くるりと振り返って偉そうな大人達の方へ堂々と歩いていく。
私は、後ろから太陽の陽が当たってキラキラと輝く長い髪を目で追いながら、いつかお母様みたいにかっこよくなりたいと思ったのであった。
それから、お母様と偉そうな人達との間で難しい言葉が交わされたかと思うと、あっと言う間に式が終わっていた。
「エイリスぅ。明日からは忙しくなるわよ」
セリスお姉さまはそう言うと、わしわしと私の頭を撫で始めたのであった。