第96話 ヴェルフ・オーマン
シャドウズの捕虜のうち2名が重傷だったが、俺がお世話になった医療ポッドで治療する。彼らは1日で回復する。捕虜5名には、フレイムランドへの帰属を勧める。戦闘を経験したパイロットは貴重なのである。
重傷だったパイロット2名が申し出を受け入れる。残りのパイロット3名は申し出を断る。3名の捕虜は、ヴェルフ・オーマンとの会見実現のために利用することにする。
先に発信したヴェルフ・オーマンとの会見希望には返答がないままでいる。
俺は、シャドウズに向け発信する。
「3名の捕虜を引き渡したいが、ヴェルフ・オーマンを直接面会することが条件である。返答を願う。」
連絡は国連の事務総長からくる。
「私が代表として会う、捕虜の返還を願う。」「私はヴェルフ・オーマンとの会見を願っています。良い返事を待ちます。」
俺は会話を打ち切る。ヴェルフ・オーマン以外と会うつもりはない。
2日後、再び連絡が来る。
「私はヴェルフ・オーマンです。どこで会見しますか。」「3日後、午後1時東京湾上に船を降ろします。そこでどうでしょう。」「了解しました。」
ヴェルフ・オーマンと会見を実現することになる。俺は勝ち続けた男がどんな人物か興味があるのだ。
ドニィーシャが俺に聞く
「やけにヴェルフ・オーマンに執着しますね。」「そりゃ、ホーネットの時には、完全に彼の手の上で踊らされたからね。」
「有能な人物ですね。」「欲しいだろ。」
「陛下がお望みでしたら、ぜひ来ていただきましょう。」「小細工は無しだよ。」
「分かりました。残念です」
ドニィーシャは何を考えたか分からないが、力で従う男ではないだろう。
3日後、スクルドを東京湾上に滞空させる。ヘリコプターが1機スクルドに近づき、後部甲板に着艦する、ヘリには2人しか載っていない。
つまり、ヘリのパイロットを除くとヴェルフ・オーマンは1人で来たのだ。彼は、後部デッキ近くのミーティングルームに案内されてはいってくる。
ヴェルフ・オーマンの外見は俺の予想と違っていた。俺は彼を中年で野心的な男だと思っていた。しかし、彼は30代に見え、中背で軍人らしくは見えない。茶色の髪に目は人の心を見通すような澄んだ青色である。
「ヴェルフ・オーマンです、お会いできて光栄です。」「こちらこそ、仙田ほむらです、ここへはお一人で来たのですか。」「はい、護衛は必要ないでしょう。」
俺とこの不思議な男との会見が始まる。