第88話 ヴェネト突破
正面のムーラーの本拠地は、強化ユニットを装備した４機のクリスの攻撃にかなり傷ついているが、前進をやめない。エミール艦長はSPA砲の発射準備を指示する。
「距離５０００で発射する、距離６０００でクリスの退避を指示。」「了解。」「バレルロック解除。」
「SPA砲発射後、最大船速で前進する。」了解、発射後、最大船速で前進。」
「バレル内の状況を報告。」「バレル内電子正常に加圧中。」
「距離６０００、クリスは射線から退避願います。」「バレル内圧力目標値に到達、撃てます。」
「距離５０００で発射する、カウントダウン始め。」「５、４、３、２、１、０」「撃て！」
ヴェネトの２門のSPA砲からエネルギーの激流が放たれる前方の本拠地は飲み込まれ消えていった。ヴェネトは、最大船速で前進を始める、すると残った４つの本拠地からムーラーが湧き出してくる。
ヴェネトは状況をベネディットに連絡する。
「ヴェネトからベネディット、本艦はムーラーの本拠地を１基撃破するも、４基の本拠地を発見、多量のムーラーと戦闘を続行中。」「ベネディット、了解。武運を祈る。」
状況を傍受している月の裏側の軍事施設では、ホワイトアースとレジナが現場へ発進する。休憩中のヴィットリオは乗員が招集され、ルーカス提督の艦隊と共にムーラーの本拠地が接近した時に備えて発進する。
地球近くの宙域ではジェームス提督の艦隊とスコーネが待機する。フレイムランドから各国に向けて、ムーラーの情報が伝達される。
情報はすぐに世界中を駆け巡る。各国からムーラーに関する問い合わせが殺到する。広報担当は随時戦況を連絡すると回答する。
ヴェネトは、本拠地の囲いも突破に成功する。船はムーラーに追いつかれることはなかったが、引き離すことも出来ないでいる。
エミール艦長は自分の運の良さに一息ついている。ベネディット級はフレイムランドの艦船の中で最速を誇っているのである。他の艦種ならムーラーの群れに飲み込まれていただろう。
ヴェネトは後方の艦砲とヴェネトに取りついたクリスによってムーラーに攻撃を続けているが数が多すぎた。残った４つの本拠地はヴェネトが離れると前進を始める。
ベネディットのエルマー艦長は、ホワイトアース、レジナとの合流を選んだ。４つの本拠地を相手にはできないのとムーラーをヴェネトが引き付けているためムーラーの数は減っていると踏んだのだ。
ベネディットと月から発進したホワイトアース、レジナの合流は時間がかかり、小惑星帯に入ってからだった。ムーラーの本拠地は小惑星帯にそのまま侵入する。
