第76話 宙域防衛艦ベネディット
月の裏側に異世界の門がある。この門の内側に造船所が建設されてすでに稼働している。新しい造船所は、浮島のドックの3倍の規模を待っている。
この造船所では新型の艦種が建造されている。その理由は、宇宙軟体生物の捜索は艦隊で行っているが運用費用が掛かるのである。
そのため捜索用の船が建造することになる。船は強行偵察艦を2隻並べたような双胴船型で船の下にセカンドフレームの強化ユニットを装備する設備を加えることができるようになっている。
その1番艦が完成まじかである。この艦の完成でルーカス・ジャクソン提督の艦隊は捜索から戻って来れる。
宇宙軟体生物の研究は進んでおらず何も分かっていないのが現状である。アスカロの悲劇以降、木星から外への探索も中止になっている。
ドニィーシャは、映画制作のために船とフレームシリーズの取材をさせて欲しいとの依頼を受けていた。しかし、船もフレームシリーズも軍事機密である。
俺は断ると思っていた、しかし、意外にもドニィーシャは引き受けてしまった。俺はドニィーシャにどういうことか質問する。
「この前の会談で私たちのイメージが悪くなっています。そこで、遊んでいる連中を使って広報活動をしようと思います。」「遊んでいる連中なんていないぞ。」
「近衛を使えばよいかと思います。」「まさか俺も行くのか。」
「はい。」「スクルドを使うつもりか。」
「いいえ、宇宙軟体生物の捜索用の2番艦を使おうと思います。」「新造艦の運用も兼ねるのか。」
「はい、艦長はアーシャで良いかと思います、美少女ですし受けるでしょう。」「それじゃ、パイロットも美少女にするか。」
「いいえ、イザベラを使おうと思います、陛下となら喜んで引き受けますわ。」「残りのパイロットはどうする。」
「配属予定のパイロットを使うつもりです。」「パイロットの訓練を兼ねるのか。」
「配属のパイロットが全員新人なんです。」「大丈夫か。」
「陛下とイザベラがいます。」
俺はだんだん嫌な予感がしてくる。
宇宙軟体生物の捜索用の1番艦が完成する宙域防衛艦ベネディットと名付けられる。
ベネディットは、セカンドフレーム・クリスを12機搭載する。SPA砲も艦首に100メートルのバレルのものを2門装備している。強行偵察艦スクルドの倍のスペックを持っている。
それから2週間後、宇宙軟体生物の捜索用の2番艦が完成する。造りはベネディットと同じである。
しかし、名前はホワイトアースと名付けられた。アーシャは嫌がるだろう、俺も嫌だ。
ドニィーシャに聞くと映画に受けそうな名前で選んだそうだ。ホワイトアースは名前の通り白色で船底部分が赤色になっている。
搭載されるのは俺とイザベラのホワイトフラウ2機とクリスが6機である。そして、クルーはアーシャ艦長をはじめとしてスコーネのクルーが担当することとなる。
こうしてホワイトアースは映画製作のために運用されることになる。
ベネディットの艦長エルマー・ベルツはクルーと共に1番ドックにある宙域防衛艦ベネディットを受領する。ベネディットは、黒に近いグレーで船体を覆っている。
クルーたちはベネディットに乗り込むとチェックを始める。発進準備が整うとドックの空気が抜かれてゲートが開く。造船所の管制官から連絡が来る。
「1番ドック、ベネディット、発艦許可が出ました。」
エルマー艦長が指揮を執る。
「ベネディット、発進。」「了解、発進します。」「目標浮島。」「了解。」
ベネデットはドックを出るとすぐに門に到達する。
「ゲート、管制、こちらベネディット、通過の許可を願う。」「了解、進路クリア通過を許可します。」
ベネデットはこちらの世界に入って来る。エルマー艦長が指示する。
「ステルススクリーン展開。」「了解。」
ベネデットは地球に近づき大気圏に突入する。
「間もなく位相面に接触。」「位相面通過。」「ステルススクリーン解除。」「了解。」
目の前にフレイムランドの浮島が浮かんでいる。浮島の管制官から連絡が来る。
「こちら管制、3番ドックに入港してください。」「了解。」
ベネデットは、180°回頭して後進して入港する。
ここでクリス12機とパイロットを乗せる。積み込み作業が終わるとベネデットは小惑星帯で運用試験をすることになる。