第64話 動く死体
その後もカイルは任務をこなしている。俺は犠牲者が出るのではと心配していたが、3人は剣の腕前、魔術の行使ともに卓越しているようである。
そして、我々が神族や魔族を狩っていることが一般人に知れ渡ってくる、また、自衛隊が死体を回収しているのを見られてしまっているのである。
防衛大臣がフレイムランドに神族や魔族の討伐を依頼したことを明かす。突然のことで、対応を急がされる。前もって、こちらに連絡が欲しかった。
俺はフレイムランドで発表をする。
皆さん、ご存じのことと思いますが、我が国から東京に部隊を派遣して神族や魔族の掃討をしています。
他国に干渉しないことに触れると思いますが、日本からの依頼により動いています。
神族や魔族は人間と相いれることはありません。私は日本の判断を支持します。
俺にとっては世界の反応はどうでもよかったがフレイムランドの国民の反応が気になった。国民は王を支持してくれる。
これまで、多くの犠牲を積み重ねて神族や魔族と戦ってきたのである。それがフレイムランド防衛戦、東京での掃討作戦と成果を上げてきたのが大きい。
東京では行方不明者が増えてきていた。しかし話題にはなっていない。カイルたちが気配を探って街を移動していると突然、人に囲まれる。彼らからは気配はなかったというより生気が感じられない。死体が動いているのである。
体を切るが動きはとまらない。ライルたちは、炎の魔術を使って焼き払う。状況の連絡は指令室に来る。俺はつぶやく。
「死体を操って似るのか、まるでネクロマンサーだな。」
サイーシヤが俺に言う。
「フェネクスかもね、だとしたら厄介よ。」「ネクロマンサーなのか。」
「中位の魔族よ。死体を魔力で操るわ。戦場では死んだ仲間が襲って来るのよ。フェネクス自身も強力が力を持っているわ。」「嫌な相手だな。」
フェネクスに対応するために俺とドニィーシャ、サイーシヤはカイルたちに合流する。カイルたちが死体を引き付け、俺たちはフェネクスをさがす。
サイーシヤが中位の魔族と遭遇するが、フェネクスではなかった。彼女はアクセルを使い、魔族に迫ると魔力の剣で横に払い切る。魔族は彼女のスピードに対応できなかった。
「スター3、中位の魔族と接触、死体の回収願う。」「了解」
カイルたちが、死体に襲われる。俺は死体から微弱な魔力の流れを感じ取る。
そしてたどって行く。かなり離れている。なかなかたどり着けない。そして、集中力が切れそうになった時、発見する。魔力が途切れた先に気配を殺して何者かが潜むのを・・・
相手が先に動く。強力な魔弾が撃ち込まれる。技の発動が早い。かろうじて魔剣マノーブルの多重シールドでこらえる。俺は相手に声をかける。
「お前がフェネクスか。」
相手は殺意を込めてニヤつく。俺は応援を求める。
「スター1、フェネクスと接触。」「了解、スター2、スター3を向かわせる。」
二人が到着するまで、戦いながら持ちこたえられるのか自信はない。これまであった魔族や神族の中で最も強いと感じたからだ。