第327話 オーストラリア大陸防衛線
俺は収束砲を使ってムーラーの群れと本拠地を消して回っている。そこへ、ドニィーシャから通信が入る。
「幹部会は月の裏の門を破壊するつもりです。」「幹部会の判断は正しいと思うよ。」
「陛下、今戦っている者たちが帰れなくなります。」「地球がムーラーに占領されれば、浮島からの出入りも難しくなるな。」
「月基地に踏みとどまるしかないだろう。」「それでは、軍は全滅します。」
「ヴェルフは、まだオーストラリア大陸を諦めていない。」「はい、そうです。」
「なら、門の破壊は、今少し待ってもらおう。」「分かりました。」
今、オーストラリア大陸に布陣しているフレイムランドの軍が月に戻れる確率はどれほどあるだろうか。
門を通れる可能性のあるのは、軌道上にいる宙域防衛艦である。しかし、彼らは地球から宇宙に出てくる本拠地を撃ち落す仕事がある。
おそらく、門を使うことはないだろう。帰るには浮島を使うしかない。
俺とヘルヘイムは、ムーラーと本拠地の数を減らそうと攻撃を続けている。確かに威力があり、一度に数基の本拠地を消しているが数が多すぎる。
オーストラリア大陸の北岸では、戦闘が始まろうとしている。ヴェルフは、艦船を3つの班に分けてSPA砲で攻撃することにしている。バレルの冷却をするためである。
海岸線にはフレームシリーズとマグナが布陣している。ムーラーの上陸を阻止するのである。
ムーラーの本拠地が南下してくる。本拠地からはムーラーが吐き出されている。海に落ちたムーラーは泳いで南下してきている。
先頭の本拠地がSPA砲の射程に入る。しかし、ヴェルフは動かない。ひきつけてSPA砲を撃つつもりである。
本拠地は前線に距離1000メートルまで来るとヴェルフは射撃を指示する。
SPA砲は狙った本拠地だけでなくほかの本拠地まで貫きダメージを与える。SPA砲の2射目も距離1000メートルまでひきつけて撃つ。
戦線は機能して、本拠地の進行を止めている。オーストラリア大陸の北岸は優勢に戦っている。
だが、世界中はムーラーに覆われているのである。
ヴェルフの布陣は大陸北岸に戦力を集中しているため、その他のエリアは手薄である。彼は限られた戦力で最も効果的な方法を選んでいる。
現にムーラーは南下してくる勢力がほとんどである。俺は南米でムーラーと戦っている。
味方がいないため、ためらわずに収束砲を使うことが出来る。俺の役目はムーラーを西進させないこととなにかさせないことだ。
どちらにムーラーが向かってもオーストラリア大陸の北岸から周り込まれることになる。
ヘルヘイムはアフリカ大陸のムーラーにSPA砲の照準を合わせている。機動要塞のSPA砲はムーラーごと地面を焼いている。
ヘルヘイムは、ムーラーが東方と南方へ行かないように攻撃している。俺とヘルヘイムの攻撃の効果か、手薄なエリアは戦線を維持している。
しかし、時間が経つほど不利になる。こうしている間にもムーラーが生まれ、本拠地が作られているのである。
浮島の司令部は、引き際を考えている。ここでフレイムランドの軍をつぶすわけにはいかないのだ。
ヴェルフは、フレイムランドが軍を引き揚げるタイミングを計っていることを感じている。彼は、まだあきらめていない。
大陸北岸の戦いは、ムーラーの進行を完全に止めている。海岸はムーラーの死がいで埋め尽くされている。
しかし、ほかの防衛線は戦力が薄い。そちらを突かれると防衛線は崩れるだろう。
今のところムーラーは北岸に集中している。戦闘が始まって1週間この状態が続いている。
俺は、短い休憩を取り、近衛騎士団のサポートを受けながら戦闘を続けている。
そして、ムーラーはヴェルフの予想を超えて現れる。大陸北岸の防衛線の内側に現れたのだ。
地中から次々とムーラーが出てくる。ムーラーは地中を進んでいたのである。
休憩中だったフレームシリーズとマグナが対応する。報告を受けた浮島の司令部は、フレイムランドの軍を引き揚げることに決める。
ヴェルフは諦め、シャドーズの解散を宣言する。シャドーズの人員は輸送艇で浮島に行くことになる。
彼らがフレイムランドの軍に入るかは、各自の判断に任せることになる。ヴェルフには、ムーラー対策の軍を率いてもらうことになる。
近衛騎士団と近衛艦隊は浮島に戻ることになる。他の艦隊は月基地に集結する。
軌道上には14隻の宙域防衛艦がムーラーを見張り、攻撃している。
ヘルヘイムは、軌道上にとどまっている。そして、月の裏にある異世界の門が爆破される。