第114話 グリゴリー・プラトノーフ
俺は東京の拠点に無理をしない範囲で、できる限りフロンの動向を調査するように依頼した。相手が悪いので、調査は難しいと予想する。
フロンについては5年近くたってもこれといった情報は無い。
サイーシャの子に会う機会がやっと訪れる。既に5歳になっているのだ。
俺はアピルとサイーシャの部屋へ行く。部屋にはサイーシャと同じ金髪の男の子がいる。
彼は膝をつき、俺に言う。
「お父様、お初にお目にかかります、グリゴリー・プラトノーフと申します。」「父親のほむらだよろしく。」
全然、親子の会話じゃないぞ。パパとまでは言わないが、それなりに親子らしいふるまいがあってもいいと思う。
俺はサイーシャの方を向き質問する。
「何をした。」
サイーシャは顔をそらす。
「全然、子供らしくないぞ。」「私の教育が行き届いているのです。」
「これからはアピル様に教育を頼もうか。」「ダメです、グリゴリーは優秀な魔術師になるのです。」
「しかし、これはなんだ。」「施術をしました。」
「どんなことをした。」「魔力の強化と脳の働きをちょこっといじりました。」
「・・・」
俺は言葉が出なかった。サイーシャの行いはマッドサイエンティストと変わりない。
アピルが俺の肩をたたいて首を振る、アピルもサイーシャにあきれているようだ。
「お父様、私が何かしたでしょうか。」「グリゴリー、君は何も悪くないよ、とにかく元気でいて欲しい。」
俺はグリゴリーに心配しないように言う、ドニィーシャの子も心配だ。10歳になると会えるというが、どんな子に育っているか気になる。
ドニィーシャの部族はアマゾネスのようなものである。立派な女戦士になっているのかもしれない。
イザベラの子ミアが普通に育っているのが唯一の救いだろうか。しかし、ミアにも父親として会うことはできない。
俺にはまともな父親になる資格がないのだろうか。