2話 迷宮主トウ・カ・ムラーとスライム娘
村外れの小山のダンジョンでは、冒険者2名が、最期の時を迎えようとしていた。
2人は、双子の兄弟で、16歳の誕生日に冒険者登録をした、初級冒険者であった。
双子の冒険者は、薬草の採取やスライムの駆除など、初心者向けの依頼を数件を無事に達成する事が出来ていた。
今回の依頼は、魔法薬師ギルドの依頼により、『魔女のダンジョン』自生する毒茸の採取であった。
毒茸の毒は、少量なら治療ポーションや媚薬の材料になるので魔法薬師ギルドは、薬草の採取程では無いが、毒茸採取の依頼もしている。
『魔女のダンジョン』は、多種多様な毒茸の群生地として知られいた。
尚、『魔女のダンジョン』には、毒茸以外にも薬用茸や食用茸も多種多様な種類が自生しているが、毒茸と判明が付かない種類が多いので素人が『魔女のダンジョン』で茸採取する事は毒茸による中毒死を招く恐れがあるので危険である。
他のダンジョンと比べるとダンジョンに出没する魔物は、最弱の魔物として知られているスライムだけなので、初級冒険者には、人気のダンジョンであった。
安全なダンジョンである『魔女のダンジョン』であるが、魔女がダンジョンに住み着き、不幸に魔女と遭遇した冒険者は、2度と帰ってくる事は無いと噂されるダンジョンでもあった。
1年に数組の冒険者チームが、『魔女のダンジョン』で行方不明になったが、双子の冒険者も不幸にして行方不明の冒険者達の仲間入りする事になった。
双子の冒険者は、不幸にして『魔女のダンジョン』の迷宮主に遭遇したのだ。
黒髪と金色の瞳の魔女に。
照明水晶に煌々と照らされた地底迷宮に、巨大な銀狼に跨り姿を現した、魔女は幼い少女の姿をしていた。
双子の冒険者よりも年齢は2~3歳は年下であろうか?
迷宮主「あなた達が、あたしの新しいお友達なの? あたしは、迷宮主トウ・カ・ムラー」
兄「友達・・・」
弟「僕達はダンジョンに毒茸の採取に来たんだ」
兄「友達には、なる事は出来ないが、毒茸の採取が終わったら遊んであげるよ」
巨大な銀狼にヒビりながらも、迷宮主を名乗る少女トウ・カ・ムラーに、話しかける双子の冒険者であった。
彼らは知る術が無かった『魔女のダンジョン』迷宮主トウ・カ・ムラーに遭遇した時に自らの運命が詰んでいた事を・・・
迷宮主「あたしのお友達になる為には、脆弱で醜い男から、強靭で美しいスライム娘に生まれ変わる必要があるわ」
灰色のローブを身に纏い銀狼に跨る彼女の後ろには、何時の間に現れたのか、6人の美少女が全裸で控えていた。
彼女達の身体首から下は、半透明に透けて、赤、黄、緑、緑、藍、紫色の肌をしている。
彼女達は、スライムの上位種スライム娘であり、『魔女のダンジョン』で行方不明に成った冒険者の末路でもあった。
己の運命を悟った兄と弟は逃げ様としたが、既に手遅れであった。
魔女の魔眼により、融合変身魔法を掛けられた兄弟の身体は足元から溶け始めていた。
兄「体が溶けている助けてくれ」
弟「兄貴、俺も体が溶けているよ、助けてくれ」
兄弟の助けを求める声が、照明水晶に煌々と照らされた洞窟内に虚しく木霊する。
迷宮主「苦しいの最初の内だけだよ。直ぐに愚かで醜い男から彼女達の様に美しいスライム娘に生まれ変わる事が出来るので我慢しね」
黄「わたくしは我が主、トウ様のお力で強靭で美しいスライム娘に生まれ変わる事が出来ました。生まれ変わる前のわたくしが、粗暴で愚かな男であった事は今では、わたくしの黒歴史ですわ」
紫「アタイもトウ様により、醜く愚かな男からスライム娘に生まれ変わらせて事は感謝しているよ」
赤「彼らも愚かな男から、美しいスライム娘に生まれ変わった事に、感謝する事でしょう」
迷宮主とスライム娘達のお喋りが続く間に、兄弟の身体は半液状の物体に変化して混じり合い人外の存在へと変化していく。
身体と自意識が、スライムとして溶かされ一つに混じり合い、新しい身体と自意識を融合して再構築されていく。
半液体状の水溜まりから、オレンジ色の人型が立ちあがる。
新しいスライム娘が、誕生したのだ。
橙「ボ、ボク達の身体は、半透明で女になっている」
迷宮主「改め自己紹介しますね。あたしは魔女のダンジョンの迷宮主トウ・カ・ムラー、後ろに居るのは銀狼のポチとスライム娘達よ」
青「新入りさん、仲良くしましょうね」
橙「ボク達、ボクもスライム娘だと?」
迷宮主「人格と身体の再構成が、終わった様ね。スライム娘全員集合ね」
迷宮主トウ・カ・ムラーの前に、スライム娘達が集められ新しく誕生した仲間に名前を授ける命名の儀が行われる。
迷宮主「あなたを橙スライム娘と名付けます」
橙「ボクの名前は橙スライム娘。見た目、其のままで何の捻りも無い名前ですね・・・」
緑「トウ様には、強い拘りがあり我々スライム娘には、肌の色を名前として授けておられるのだ。俺も最初は緑スライム娘の名を授かった時は、落胆したが今では誇らしい我が名だ。」
迷宮主「橙、あなたの役割はあたしの遊び相手と、野蛮で愚かな冒険者達から私を守る事。今夜は橙の誕生祝いに、沢山遊びましょ可愛がってあげる」
トウは、幼さが残る顔に妖艶な笑みを浮べ、双子の兄弟から細身で胸が豊かなスライム娘に変身した橙の躰を眺めながら嬉しそうに他のスライム娘に話しかける。
迷宮主「あなた達も橙を歓迎したいでしょうが、あたしの後でね」
スライム娘達。
「「「「「「主様の御心のままに」」」」」」
黒髪と金色の瞳の魔女は銀狼に跨ると7人のスライム娘を率いてダンジョンの奥へと姿を消したのである。
双子の初級冒険者が『魔女のダンジョン』で、消息を絶った後、人気の無いダンジョンで、女の嬌声が聴かれた事を、ダンジョンにキノコを採取をしていた、数人の冒険者が証言している。
後に、『魔女のダンジョン』では、迷宮主トウ・カ・ムラーの存在が、確認され魔女の討伐の為、腕利きの冒険者チーム数組が、『魔女のダンジョン』に派遣されたが、彼、彼女達が、ダンジョンから帰っている事は、無かった。
※ ※ ※
ダンジョン奥の玉座の間で、迷宮主と8人のスライム娘が集まっている。
迷宮主「あたしの遊び相手も増えたわね。昨日は幾人増えたの?橙」
新入りだった、橙も今では、古株で迷宮主の側近の1人だ。
橙「ボクが黒、白、桃、を率いて倒した相手は10人。ボクの後ろに並んでいる3人が新入りさん達だよ。新入りさん主様に挨拶しなさい」
金色、銀色、琥珀色のスライム娘は、『魔女のダンジョン』の攻略と魔女の討伐の為に、訪れた3組の冒険者チームが、返り討ちの上、スライム娘に変身させられた姿であった。
金「わたくしは、主様の忠実な僕、スライム娘の金です」
銀「俺は、ご主人様の忠実な僕、スライム娘の銀です」
琥珀「アタイは、迷宮主トウ様の遊び相手スライム娘の琥珀だよ」
迷宮主「琥珀、あなたでスライム娘も48人になりましたね。スライム娘が48人揃ったので、新たにチーム名を授けます。」
赤「チーム名ですか?」
迷宮主「此れからはスライム娘48。略してスー娘48。です」
迷宮主トウ・カ・ムラー命名のセンスは、壊滅的であるが、スライム娘達からは、異議申し立ての声が上がる事は、無かった。
スライム娘の主であり、創造者でもある迷宮主トウ・カ・ムラーに、逆らう事は無い。
スライム娘のチーム名は、『スライム娘48。』に決まった。
迷宮主トウ・カ・ムラーとスー娘48。の悪名は、国の内外に広がり魔女の討伐と『魔女のダンジョン』の攻略の為、冒険屋のチーム以外にも、傭兵団、騎士団、王国の近衛騎士師団の数名も『魔女のダンジョン』の攻略に挑んだが、誰一人帰って来る事は無かった。
彼、彼女達が、迷宮主トウ・カ・ムラーの遊び相手、ハーレム要員に変身させられて毎日の様に迷宮主トウ・カ・ムラーと先輩のスライム娘達と背徳の遊びを楽しんでいる事は、言うまでも無いだろう。
『魔女のダンジョン』の近くの村は、何時しか『魔女のダンジョン』の探索の拠点として冒険者の町になり、末永く繫栄した。
冒険者の町の発展は、迷宮主トウ・カ・ムラーの遊び手が増える事に繋がり、迷宮主トウ・カ・ムラーは、冒険者の町の発展を陰ながら応援し、『魔女のダンジョン』も更なる繁栄を迎え、迷宮主とスライム娘達は、末永く『魔女のダンジョン』で幸せに暮らした。