仲良くなれるのか? 6
部屋へと案内される碧。その両手には大量のシャツとウクレレがあり、落とさない様にと、気をつけながら階段を登り、歩を進める。
鳴が「じゃじゃ~ん」とばかりに開けた部屋は、客間だったのか、ベッドがあった。すぐに人が住める状態のようだ。
空の箪笥があり、「ここにシャツをしまって? お兄さん畳み方わかる? 手伝うよ!」
そう言うと、テキパキと碧に畳み方をわかりやすく教えながら畳んでいく。
「手慣れてんだな。意外…」
失礼な感想を漏らす碧に、鳴は笑って答える。
「なんかお兄さん失礼! でもなんでかよく言われる。なんでかなぁ…」
少し考えた風な鳴だったが、「まぁいいか…」と小さくこぼすと、衣類をまた畳み始める。
「千聖さんには言わねぇの?」
何をとは口に出していないけれど、多分彼女の中で、多くを占めている出来事だろう。
「なんかさ…。心配かけたくない。ただ…、それだけじゃなくて…。なんか格好悪いじゃない。クラスメイトに認められないからなんて、メソメソしてるのって…」
また少し泣き笑いに、近い様子でそういう鳴。
「なんかお前格好良いな…。すげぇと思うぞ!」
「本当は……。文鳥さんだと思ってたから、言えたんだよ? 責任とってたまにはお話聞いてくれる? お兄さん……?」
不安げに目を揺らしながら、聞いてくる鳴。
「当たり前だろ! なんの為にお前にも千聖さんにも、正体明かしたと思ってんだよ、ばぁか!」
碧はそう言うと、泣きそうな鳴をグリグリと撫でる。
『口は悪そうにしてるけど、お兄さんは、すごく優しいな……。あたたかいな……』
鳴はあえて、口には出さないけれどそう感じた。
「一通りお洋服、片付いたかな。ウクレレも黒いケースついてるんだねぇ、お母さんらしい…」
「俺は鳥だからさ、よくわかんねぇけど。どこから持ってきたんだ。普通、こういうの手に入れるのに、金いるんじゃねえの?」
「あはは。お母さんの知り合いの白い長髪で着物着てるイケメンなお兄さん? おじさん? なんかそういうデザイナーさんの、知り合いがいるみたいだから、その人にもらったんじゃないかな。ウクレレは、わかんないけど……」
「らしいっちゃらしいか。でも底知れねぇな……。千聖さんって…」
ちょっと呆れたみたいに言う碧。
『でも、お母さんらしいと言ってくれて、なんか嬉しいな…。周りには、お母さんは変わっていると、言われる事が多いし…』
そのままの鳴も認めてくれて、肯定してくれそうだ。
クラスメイトや周りに合わせないと…、自分はいらない存在なのだろうか…。そんな思いが、鳴にはあった。
納得はいっていなくても、それは鳴にとっての現実だった。
けれど、ありのままの自分達を見て、受け入れてくれる、そんな碧の存在に救われた気がした鳴だった。