仲良くなれるのか? 5
服装を千聖さんがおもうハワイな格好にさせられて呆然とする碧だった。
しかし、追い打ちをかけるように、眠っていたはずの鳴まで参加してきた。
焦りながらも、「鳴…、大丈夫か? そう声をかけるが何やら目が輝いている。
あぁ、やっぱり親子だからなのか……と思い黙る碧。
「お兄さん。アロハシャツ似合う!」
満面の笑みを浮かべる鳴に、俺がいなくても、こいつは大丈夫だったのでは…、という思いもよぎる。
「鳴さん? 気分は治ったのかな?」
碧が、顔を引きつらせたまま聞く。
「あんまし悩んでるの趣味じゃないし。しばらく泣いて寝たら落ち着いたかな…」
さいですか…、そう答えてしまいそうな碧だったが、いじめられる限り、完全には心の傷は癒えはしないだろう。
「そうか…。なら良かったな」とだけ答えた。
「で、確か文鳥のお兄さんだよね…。ウクレレ弾けるの?? 聴きたい!」
「弾けねぇよ。千聖さんが、面白半分に持たしただけで…」
そう答えると「お母さんが? やりそう……」
そう首を傾げ、笑みをこぼすと鳴はいった。
まだ少し目元が赤い気はするが、一生懸命に隠そうとして、明るく振る舞う鳴を見て、碧は何も言えなくなる。
「何が聴きたいのか、弾けるのかわからんが、練習はしてみる…」
碧がぶっきらぼうにそう言うと、鳴は嬉しそうに言う。
「どうせお母さんが、お洋服とかそういうの渡したなら、お兄さんずっとお家にいてくれるのよね! やった!」
先程見た泣き顔が嘘みたいに、鳴が笑うものだから、碧は軽く髪を掻くようにして言った。
「仕方ないな。ずっといてやるけど俺、妖なんだぞ。わかってんの?」
「うーん。口は悪そうだけど、優しいのなんかわかるから……。嬉しいな、これからもお兄さんって呼んでいい?」
「文鳥姿の時は、碧って呼べよ。それ守れるならいーや…」
「こっちの人のルールなんて知らねぇから。鳴、教えてくれな?」
「うん! わかった。ウクレレの弾き方の本、一緒に買いに行こうね!」
「話は纏まったみたいね。碧くん、宜しく」
近くで様子を見ていた千聖さんが、そう言って笑う。
この人達には敵わないなぁ。そんな事を感じながら、碧は渡された大量のシャツを見る。
「夏場にでも使って頂戴ね。あと、部屋は2階の鳴の隣がいいかしら。知ってるだろうけど、案内してあげて? 鳴ちゃん」
「はぁい。お母さん! お兄さんこっち! はやくはやく!」
ウクレレと大量のアロハシャツを手渡され、今後自室になるであろう部屋へと、案内されていく碧だった。