仲良くなれるのか? 2
「なんだか人は怖い。何考えてるかわからないし、疲れちゃうね」
鳴が、らしくもなく、そんなことを言った。
「きっかけはね、わかるんだ…。あの人達が投げた消しゴム…。なんかあたったなって思ったけど、寝ちゃったの…、それからなんだ…」
鳴は、ポツリと言った。
「なんか迷惑かけたかなぁ? なんか…、傷つけることしたかなぁ? やだよ。心痛いよぉ…。蹴られなきゃならない程、何をって思うけど、あの人達は遊びの一環なんじゃないかなぁ…」
大粒の涙が頬を伝う。
どれだけの言葉や、それ以外も暴力を受けたのだろう…。
「机を蹴りつけるから、痛いわけない? そんなわけないじゃない…。もうやだよ……、学校なんて行きたくない…」
そんな泣きじゃくる鳴は、初めて見た。
「本当はね、辛くて悲しい…。でも、笑ってそんな事する人達より…、痛い思いした私の方が…、人の痛みわかるんじゃないかって。痛い思いした分…、してない人よりは…って思おうとしたけど…。私に言い聞かせていたけど……、やっぱり…、痛いよ…、辛いよ……」
『チッ…』
舌打ちすると、人型になって鳴をギュッと、泣き止む様にと願う様に抱きしめる。
急に日焼けした肌の男性が現れて驚く鳴。
「大丈夫だ…。大丈夫…」
黒よりほんのりと淡い色合いの髪。
急に現れた男性は、青みがかったシャツに、ジーンズを身に着け、すごく高い体温の身体で、抱きしめてくる。
「文鳥さん……なの…? なんかお兄ちゃんが出来たみたい……、温かい…。夢でも嬉しいな……」
目から大粒の涙を零しつつ、鳴は言う。
そう経たない内に、出て行くつもりだとは、口に出来なかった。
「碧……、俺の名は碧っての。 普通の鳥じゃなくて悪かったな…」
気まずそうにそう口にする碧。
「今は泣きたいだけ、泣いて休めばいい…。ついててやるから…」
驚いた様子の鳴だったが、これが現実だとは思えていないようだった。
「夢なのだろうけど……。目醒めた時に……、碧お兄ちゃんにいて欲しいな…」
その言葉を聞きながら、頭を撫ぜつつ頷く碧。
安心したのか、まだ頬に涙は残っていたけれど、眠りについてしまった様子の鳴。
でも彼女の母親にも正体がバレたら、有無を言わさず追い出されるだろうと思った。
意を決して、彼女の母親にも正体を話そう。
そして、出来るのであれば、彼女の望みを叶えさせて貰えないだろうかと、願うつもりでいた。
そうしたら、彼女を元気づけられたら、心置きなくここから出て行こう。
買ってくれたのに、悪いとは思うが、元々ペットとして育てられたわけではない。
最初から、無理があったのだ。正体を明かすつもりはなかったのに…。碧は、きちんと事情を話して、ここから出ていくことを決めた…。