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はじまり 1

 -異国の地 ハワイ某公園内-


 芝のようなものが覆い茂り、木々が整備された様に、距離をあけて生えている。


 草原と呼んだ方がふさわしいその公園らしき地面には、赤や黒灰や白といった色をした者達が蠢いている。


 我先にと地面に落ちている餌をついばむ。距離を空けた方が、もっと効率的に餌は見つかるのでは?そう道行く人に思わせる程、彼等は密集しているように見えた。


 この地で蠢く彼等は、一心不乱に餌を食べ満足したら木々の枝へと飛んでいく。そうして、平和な日々を過ごしていた。


 そう…、続くはずだったのだ…。



 ある日、見慣れない鉄の塊が置いてあった。その中には大量の粟等の穀物が、大量に入っていた。恐る恐る中に入ってみたものがいたが、餌を食べただけで何事もなく出られた。そんな日々が続き、文鳥(Java sparrow)たちの警戒は薄らいで行った。


 いつもの様に何事もなく、餌を食べその日が過ぎると思っていたのに、その日、出入り口が塞がれた。


 パニックになった彼等はギャーギャーと叫ぶけれど、出ることはかなわない。


 そばにいたものも、警戒して空へと飛び上がり距離を空けた。いくつかの鉄の塊に、彼等は囚われた。

 囚われた者たちのパニックは続くものの、外へと出れられる手段がない。


 気がつくと大きな影が近づいてくる。恐らく、仲間たちや自身を、捕まえた者たちに違いない。


「おお! 珍しい色のやつがいるじゃんか」


 人間の一人がそういった。


「お、本当だ。こいつはそこそこ高く売れそうだ!」


『言葉がわからないと思ってテキトー言いやがって!! 俺達はここで生きようとしていただけだ! 商品なんかじゃねぇよ!』


 人間にとっては、意味のなさない威嚇音にしか、聞こえなかった。



人間達は、囚われた小鳥達の檻を、物色し始めたようだった。


「なんかコイツ威勢いいな。可愛げはないけど、毛色が珍しいから、荒文鳥だけど売れるか?」


「普通の色味の文鳥が多いな。大した値段にならないけど売るか…」


「イエスズメの(つがい)とか珍しくねぇ?」


 雄と雌で色味か違うばかりか、日本という島国に住むスズメとはまた一味違う印象だ。頭の柄が違うのと、頬の斑点がないだけでまるで違う種族に見える。



 ただ平和に生きているだけの動物を捉えて、隠れて売りさばく。きっと奴らもその手の人間なのだろう。


『なんの権利があって勝手なこと言ってやがる! 他のやつらがいなけりゃこんな檻なんてぶっ壊してやるのにっ! クソッ!』


 そうして、数羽ずつ捕らえられたいくつもの檻は、車へと積まれていく。

囚われた文鳥達は海をこえ、日本と呼ばれる島国に降り立つ。


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