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百合チート持ちで異世界に転生したとか百合ハーの姫になるしかない!!  作者: 無色
白黒円卓編:白

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2-229.円卓に花は咲く

 何はともあれ着席。

 私の席はドロシーとレオナの間だ。

 後ろには一人、護衛の意味も兼ねて誰かを侍らせることが出来る。

 例年通りアルティに傍に居てもらうことに。

 残りのメンバーは二階の観覧席へと移動した。


「では改めて」


 手を挙げたのを合図に、リルムを筆頭にラムールの給仕がワゴンを運んできた。

 ユウカもその中に混じって手伝ってる。

 各国の代表の前に、フルーツを盛った冷やされた青透明の器が置かれた。

 横には透明な液体が入った小さなデキャンタが添えられる。


「ん〜涼し気でおいしそう♡ ユウカ、皆さんに説明をお願い」

「ベリーや桃、柑橘などの果物に、白玉とあんこを添え、ヒノカミノ国の伝統菓子あんみつ風に、本日はフルーツポンチとして提供させていただきました。横のデキャンタには、この度リリーストームグループ特製の米のジュースを用意しております。都度お好みでかけてお召し上がりください」


 この料理を考えたのはリルムだ。

 だけどリルムは性格的に目上の人と話すのが得意じゃない。

 だからこうしてユウカを代理に立ててるわけだ。


「ではでは。あーむっ」

「ほぉ」

「まぁ」


 あちらこちらから漏れる感嘆のため息。

 ひやりと心地いい冷気が口の中でほどけるのと同時に広がる、フルーツの爽やかで芳醇な香気と甘み。


「こらええなあ。火照った身体にちょうどええわ」


 もちもちの白玉と、濃厚なあんこもよく合ってる。


「果物に混じっている緑色のものは……」

「ふむ、これはサボテンだな」

「サボテン?」

「はい。ラムール原産のアクアサボテンを下処理し、砂糖と香辛料で煮詰めました」


 アロエに似たサクリとした歯応えと、中から溢れ出る潤沢な果汁。

 渋みと苦味を含んだ一瞬の青みがいいアクセントになってる。


「我が国では家庭で供される定番の甘味だが、それとは一線を画しているな。下拵えでこうも違うのか。さすがだ」


 リルムは無言で頭を下げた。


「この米のジュースもいい。清酒に似た旨口の味わいが、じつに具材の甘みを引き立てている」

「こればかりは役得だな。世の誰も味わったことのない美味を味わえるとは」


 みんなの評価は上々。

 そんな中、デザートに手をつけないでふんぞり返ってたバルトゥラ陛下が口を開いた。


「どいつもこいつも品性に欠けるな。誰一人毒見を立てぬとは」


 全員が失念してたわけじゃない。

 毒見役を立てないこと自体が、この場においての信頼の証明となることを理解してるからだ。

 バルトゥラ陛下も当然それをわかってるはず。

 なのにそれを口にするのは、難癖以外の何物でもない。


「矮小が透けるぞルブレアンの王」


 匙を口に運びながらヴィルが冷笑する。


「毒如きに怯えるか。かの名君も老いたものだ。そろそろ次代にその席を譲り渡したらどうだ? 貴様では到底荷が重い」

「愚弄するつもりか片田舎の小さき国の女王風情が」

「先に唾を吐いたのはどちらだ」


 なんでおいしいものを前にギスっちゃうかね。


「二人とも落ち着かれては?」

「せやせや。喧々諤々するんは、円卓会議(ラウンズ)が始まってからでも遅ないやろ。まだ見えてへんところもあるんやし。悠然と構えてられんのは短命種の悪いとこや」


 ヴァネッサさんとヴォルタクシア老の大人なこと。

 長く生きてるだけあって落ち着きが違う。

 けど、バルトゥラ陛下はそれさえ癪だと言わんばかりふんぞり返った。


「王でもない者が口を挟むな。我らと肩を並べているつもりか? 片腹痛い。慎むことを覚えるべきだ」

「あら、失礼しました。見習いたいものです。その狭量さが王たる振る舞いであるなら」

「他者に媚びることでしか生きられぬ寄生虫が」

「口だけは達者なようで。ぜひ知りたいですわ。あなたのような王を、いったいどれだけの国民が慕っているのか。そろそろ次代に席を譲り渡したらどうですか? 高慢なだけの裸の王様には似合いませんよ。玉座も、この円卓も」


 ヴァネッサさんが細い指で円卓を叩くと、逆上したバルトゥラ陛下は拳を思い切り叩きつけた。


「商売女が頭に乗るな」

「どの口が言うのかしら」

「ジジイもババアも、神様の前でしゃしゃんな。口に十字架でも詰めとけよ老害が」


 なんでお前まで喧嘩腰なんだクロエよ。

 デザートの味がどこかへ行っちゃうくらいの張り詰めた空気。

 そろそろ何とかしないとと思った矢先。


「なーんか辛気臭いなぁ」


 カランと下駄の音が鳴った。


「楽しいお茶会って聞いて遥々海を越えてやって来たっていうのに。()は来るところを間違えちゃったかな?」


 私は肩を落として笑った。


「間違ってないよ。待ってた」

「待たせた」


 バッと扇子を広げると、どこからか拍子木の音が鳴り、桜吹雪が舞いだした。


「やぁやぁお待たせ、お初にお目にかかります各国の王殿様方! 手前生国と発しまするは四季豊かなヒノカミノ国! ()こそが日(いず)る国の大将軍にして、真選組(しんせんぐみ)は花の局長! 天上天下に並ぶ者無き唯一人のォ〜()っ! 大天狗(おおてんぐ)、エトラ=クラマガハラ! あ、ここに参上〜!!」


 歌舞伎めいた大仰な登場で、エトラは静まり返った円卓でポーズをとった。

 今月も暑いですね。


 当方はというと、恋愛ものの短編が日間トップ10に入ったり、それが百合チートの総合ptを一瞬で上回ったりしてました。

 4000文字ほどの短編にです……


 やるせなくも、嬉しく、複雑な思いです……


 興味がある方は『笑う令嬢は毒の杯を傾ける』をお読みください。


 おもしろいと思っていただけましたら、リアクション、ブックマーク、感想、☆☆☆☆☆評価にて応援いただけたら幸いですm(_ _)m

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