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百合チート持ちで異世界に転生したとか百合ハーの姫になるしかない!!  作者: 無色
奇騒天概編

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2-115.黒い炎が揺れる

「ふあ……」

「くぁ……」

「……眠たすぎる」

「はい……」


 夜中にあんなことをした代償は大きかった。

 被害こそ無かったものの騒ぎが騒ぎを呼び、フリューメルの虹の花が観測された近隣諸国からは、あれはなんだと矢継ぎ早に質問が来る始末。

 主に矢面に立たされたのはマリアちゃんだ。


「お、お姉たちのバカぁぁぁ!!」


 押し寄せるギルド職員や記者たちに呑まれていく断末魔は耳に新しい。

 けど、それも神竜(ドラグニール)級冒険者だからこそ。

 マリアちゃんの口から真実が語られれば、それがそのまま曲解せずに伝わる。

 もちろんドゥエンさんについては伏せて。

 それが楽でいいと判断を下したのはアルティちゃん。

 影響力を考えればアルティちゃんが説明に立つのが良かったのかもしれないけど……


「嫌ですよめんどくさい。休暇中ですし」


 そう言って一人さっさと休暇の続きに消えてしまった。

 そのせいで私とサクラさんも対応に回ることになったっていうのに。


「絶対リコリスに特別手当て請求する……」


 列車の座席に横たわりながらサクラさんが寝言を呟く。

 苦手な(女性)を前にスヤスヤ寝息を立ててくれるのは、それだけ安心してくれているということ……で、いいのかな。

 もしかしたら気に留められていないだけかも。

 ドゥエンさんのことはサクラさん伝いに聞いた。

 盛大に泣いたこと、惜しみない感謝を伝えられたこと。

 私にも直接お礼を、ってことだったんだけど……恥ずかしくてやめた。

 話なら奥さんとゆっくりしてあげてほしいのもあったから。

 あと、あんまり長居するとお見合いはどうするの?ってお母さんから詰め寄られるかもしれなかったし……


「お見合いか……」


 結局何の返事もせずに帰ってきちゃった。

 お母さんには悪いことしたな。

 相手の人には嫌な思いをさせたかも。

 でもリコリスちゃん以外を好きになるはずもないし、これでよかった……ということにしておこう。

 それにしても……今回は全部が全部その場の思いつきで、みんなを巻き込んで振り回しちゃった。

 だけどみんな嫌な顔一つしなくて、力を貸してくれて……リコリスちゃんが見てる景色って、もしかしたらこんな感じなのかもしれない。

 そう思うと少しだけ良い気分になった。

 自信がついたみたいで口角が上がった。

 車窓に映った顔がだらしなくて焦ったけれど、サクラさんが寝ててくれて安心した。

 きっとサクラさんは、べつに何もしてない、なんてぶっきらぼうに言うのだろうけど……それでも付き合ってくれたことに感謝を伝えた。

 

「あ、ありがとうございます……サクラ、ちゃん」


 次は起きている時にそう呼べるといいな、なんて微笑して。

 私も列車に揺られて眠りについた。


 

 ――――――――




 何故こうもゆく先々で事件に巡り合うのか、私は駅のホームで天井を見上げた。

 そういう星の下に生まれているのはリコだけだと思っていましたが、案外私もそうなのかもしれません。


「キュウ」

「どうしました? 眠たくなりましたか?」


 キュートは図々しくも私の膝に降りて身体を丸めた。


「猫ですか」


 背中を撫でてやると微かに冷たい。

 何故こうも私に懐いているのか。

 マリアがいればこの子の言葉がわかったのに。

 如何せん私以外の前では鳴かないのだから仕方ない。

 結構人見知りなのかも。

 

「さて、次はどこへ行きましょうか」


 私たちの足取りが向かう先は風だけが知っている……なんて、似合わずも詩的なことを言ってみる。

 とりあえずは、そうですね。

 これ以上奇想天外なことが無いように祈って。




 ――――――――




「あーあ、失敗しちゃった」

「失敗しちゃったねチェスティちゃん」

「失敗しちゃったんだチェスティちゃん」

「失敗も失敗。わざわざお見合いのセッティングまでかこつけたっていうのに。それを断るとかほんと頭悪い」


 少女は豪奢な椅子の上で片膝を立てた。


「チェスティ嬢の作戦が杜撰だっただけじゃねーの?」

「あの大賢者の家族に催眠かけてまで仕組んだのよ。外堀から埋めるつもりだったけど、存外上手くいかないわね。屠獅群(レオ・スレイ)だって、焚き付けてやったわりには大賢者一人相手に出来ないし。これだから無能は嫌いよ」

「だから最初っからおれが相手してやるって言ったろ。で、次はどうすんだ? まさかこれで終わりじゃないだろ?」


 当然じゃない、と口角を上げ、テーブルの上の写真に手を伸ばす。


「そろそろちゃんと挨拶してみましょうか。楽しみね、どんな人なのか。どんな風に壊れてくれるのか。クスクス……待っててね」


 写真に写る女性の顔に舌を這わせグシャリと握り潰す。

 そうして床に放ったそれに黒い炎を灯らせた。


「リコリスさん」


 炎は妖しく揺れる。

 新たな騒乱を予感させるかのように。

 久しぶりの更新です!

 こんな調子でも毎日読みに来てくださる方がいてありがたき幸せ!

 もうすぐ年末ですね、皆様年を越す準備は万端ですか?

 当方は変わらず社畜です。


 高評価、ブックマーク、感想、レビューにてこれからも応援いただければ幸いです!m(_ _)m

 

 当方が書く他作品も時間の許す限り読んでいただければm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
なんて不穏なんだ……!(迫真) そろそろサクラの過去が追いかけてきたりしたか?
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