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百合チート持ちで異世界に転生したとか百合ハーの姫になるしかない!!  作者: 無色
無職透名編

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2-102.甘えたな妹しか勝たん

「冒険者になりたい?」

「うん」


 だから鍛えてたってか。

 健全な精神は健全な肉体に宿る。

 立派な心掛けだけどさ。


「そのことお母さんとお父さんには?」

「言ってない」

「なんで?」

「言っても止められると思ったんだもん」


 べつに止めやしないと思うけどね。

 私だって冒険者になるつもりであれこれやってたし。


「ちゃんと話せばわかってくれるよ。なんなら私から言ってあげようか」

「いい。お姉ちゃん頼りにならなそうだし」

「それはそう」

「おいこらナメすぎじゃないお前ら」

「けど、言わない方が怒られると思うよ。私はもう放任されてるけど、ノエルはまだちっちゃいんだから。それにお前、自分の魔法のこともまだよくわかってないだろ」


 ノエルはまた唇を尖らせた。

 【時の神の加護】。

 原初神クロノスから加護を与えられたノエルに発現したユニークスキル、【時魔法】。

 これは対象の時間を進めたり戻したり、または止めたりすることが出来るというチート。

 字面だけでその性能の計り知れなさ、異端さが窺えるっていうのに。

 子どもだけで鍛錬っていうのはいただけない。


「何かあってからじゃ遅いんだぞ。私でさえ魔法の」

「……ふんっ」

「おい、聞いてんのかノエル」

「うるさいお姉ちゃん嫌い。知らない。あっち行っちゃえバーカ」

「あっ、おい!」


 行っちゃった……


「誰からも人徳無いの生きづらそう」

「まったく以てそのとおりだよ」

「追いかけるんだ?」

「当たり前だろ。私はお姉ちゃんだぞ」

「またいつものカッコつけ?」

「それもあるけどな」


 非日常を日常にする怖さは知っておかなくちゃいけないってことで。



 

 ――――――――




『あなたのお姉ちゃんは、とてもすごい人よ』


 親から、友から、隣人から。

 幾度となく聞かされてきた言葉だ。

 リコリス=ラプラスハート。

 平民の出自でありながら類稀なる才能を多方面に発揮し、クローバー家の長女と籍を結ぶまでに至った女性。

 多くの才媛を傍に寄せ、この国の……世界の文明をたった数年で高めたその功績、名声は辺境の更に果てまで届いている。

 偉大。それ故に現実味が無い。

 そんな人が、自らの姉であるということが。

 しかしノエルは比べてしまう。

 それもまた偉大であるが故に。


 "自分には何も無い"


 誰に言われたわけでもない。

 他の誰かが比べたわけでも。

 偉大。強大。巨大。絶大。

 謂わば姉は天上人なのだと、幼いながらに理解し、同時に悲観した。

 

 "自分は普通だ"


 と。




 冒険者を目指したのは、何者かになりたかったというノエルの心の表れだったのかもしれない。

 きっかけが欲しかったのかもしれない。

 きっと何だってよかった。

 姉のようになれるのなら。


「お姉ちゃんに出来るなら、私だって」


 だがノエルは知らない。

 リコリスが成したことは才能と運だけでなく、それに裏打ちされた努力があったからということ。

 魔法という非日常な日常は、些細なことで崩れてしまう柔いものだということを。

 

逆行(クロックダウン)


 一本の木に魔力(マナ)を通す。

 対象の時間を巻き戻す魔法だ。

 スキルが才能である以上、スキルの使い方は魂に刻まれている。

 しかし精度に関してはその限りではない。


「あ、あれ……? 魔法が止まらない……」


 木は見る見る間に細く、小さく、やがて若芽に戻った。

 が、魔法はそこで止まらない。

 魔法はどんどんと広がり、周囲の木々を芽に変えていく。

 生い茂る緑が剥き出しの土に変わっていく様に、ノエルは慌てふためいた。


「止まって……止まって……!!」


 涙目になって魔法を止めようとするが、逆行(クロックダウン)の効果は更に拡大した。


「どうしよう……どうしよう……」


 このままでは森が枯れる。

 そんな矢先、ノエルの頭に手が置かれた。


「だから言ったろ。何かあってからじゃ遅いって」

「お姉ちゃん……」

「時間を操る魔法か。ま、これくらいなら。【創造竜の魔法(ラプラス)】」


 リコリスの魔法が時間の侵食を食い止める。

 森の消失は、全体の百分の一にも満たない程度で収束した。




 ――――――――




「私は女の子には暴力を振るわない主義だから、デコピンもビンタもしねーけど。何か言うことあるだろ?」

「……ゴメン、なさい」


 妹の泣き顔は心が痛い。

 怒るべきなんだろうけど、どうにも難しいのでそれは親に任せよう。

 この世界じゃ魔法は日常だ。

 当たり前に慣れ親しんだ非日常だ。

 だからこそ基礎が大事になってくるし、怖いものであることを忘れちゃいけない。

 私でさえ魔法はお母さんに師事してもらったわけだしな。

 

「何をそんなに急いで大人になろうとしてるのかは知らないけど、魔法の使い方なら私がいつでも教えてあげるよ。私はノエルのお姉ちゃんだからな。ニシシ」

「……うん!」


 土に還った森も魔法で戻して、と。

 よし証拠隠滅。


「幸い誰に被害が出たわけでもないし、このことは私たちだけの秘密な。それ抜きにしても森の奥は危ないからあんまり一人で出歩くんじゃねーぞ。この辺に魔物は出ないけど、野生の動物は普通に危険なんだから」

「うん。わかった」


 反抗的な妹もいいけど、素直な妹の可愛いことよ。


「んじゃ帰るか。村まで送るよ」

「お姉ちゃんは?」

「お姉ちゃんはお母さんに勘当された」

「されてねーよ適当言ってんじゃねぇ。お姉ちゃんはほら、お仕事が忙しいから」

「無職が忙しい? 妙だな」


 黙れサクラ。


「ん?」


 あらあら?

 ノエルがお姉ちゃんのことギュッてしてきたよ?


「お姉ちゃんと一緒に帰る」

「……ふぅ」


 ドヤァァァァァ


「妹の前だからとやかく言わないけど、顔がウザすぎて嫌」

 

 お姉ちゃんの株爆上がり!

 甘えた妹サイコー!




「というわけで今日泊まるね」

「言いたいことがありすぎて何から叱ればいいのかわからないわ」

「まあまあ、いいじゃねぇかソフィア。騒がしいのは歓迎だ。サクラも泊まっていくだろ?」

「すみません、お邪魔します。乗り合いの馬車も無くなったので」

「ひゅーお泊まりイベントきちゃー♡ 一緒のベッドで寝ようねサクラ♡」

「床でいい」

「ダメダメお客様なんだからー♡」

「いや、リコリスが」

「鬼畜かよ」

「私お姉ちゃんと一緒に寝る」

「いいともー♡ お姉ちゃんのぼいんぼいんに抱かれてお眠りー♡」

「あなたノエルに悪影響を及ぼしたら本当に処すわよ」

「ぁい……」


 私の身の回りの女、揃いも揃って処したがりなの何?

 一回り以上離れた妹に手出すわけ……………………ハハハ、ねぇ?


「ま、とにかく飯にするか」

「そうね。先にお風呂入ってきなさい」

「うい」


 そんな感じで、私は実家での滞在を許されたわけだ。

 ……実家なのに。


 雨がひどいですが、皆様のお住いの地域は大丈夫でしょうか。

 雨にも負けない熱い百合で何とかお凌ぎください。


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