表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合チート持ちで異世界に転生したとか百合ハーの姫になるしかない!!  作者: 無色
百妃夜后編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

252/311

2-80.老人の務め

観廻組(みまわりぐみ)に元鬼倭番衆(おにわばんしゅう)。古くせえ遺物が雁首揃えてきたと思えば大賢者じゃとは。なかなかどうして、豪勢な喧嘩じゃなぁおい!!」


 大剣を叩きつけると、地響きの後に地面が隆起した。


「どいつもこいつもぶち殺してやりてぇところじゃが、やっぱおまんはわしが殺さんと気が済まんわ狐ぇ!! 濤龍門(とうりゅうもん)!!」


 専用の舞台のつもりなんだろう。

 城の景観を破壊し競り上がる台地は、トウマとシキの二人を残しあとの面々をふるい落とした。はずだった。

 

「おっと〜その役はお姉さんに変わりな〜」


 シキを乱暴に蹴り落として、アグリは自らトウマの戦場に立った。


「おまん……!!」

「散々やられたからね〜。借りは返さないと気が済まないのさ〜」

「ああ、ええじゃろう!! まずはおんしからじゃ!! 肉片にしてやるけぇのう真選組(しんせんぐみ)!!」


 怒りを押し上げ空を穿つ台地を、私たちは見送ることしか出来なかった。


「大丈夫、心配無いよ」


 エトラはポーションを煽り、絶え絶えの息で肩を上下させた。


「はぁはぁ……っ、助太刀感謝するよ」

「威勢よく登場しておいてなんじゃがのう。腰がどうも言うことを聞かんでな。悪いが(てい)の良い護衛程度に思っとってくれい」

「使えないわねこの爺さん」

「斬られて臥せとったんじゃが?! 少しは労ってくれい!」

「だから治したじゃない。アタシの薬は効いたでしょ」

「効いたわギンギンじゃ! 全部終わったら遊郭へれっつらごーじゃ!」

「そんだけ元気ならいいじゃない」


 そう言うドロシーは精霊の翼を広げてミナモに向いた。


「あいつらはアタシたちで相手をしましょうシズク、オソノ」

「承知仕りやした」

「ヒィエッヒェッ、ああ」

「ぼくたち相手に一対一? ケヒヒヒッ、身の程知らずがいたもんだ」

「お館様より預かったこの力、大賢者であろうと噛み砕いてみせよう」

「来いよババア。今度こそ息の根を止めてやる」

「一応アタシ女皇なんだけど。不敬極まりないったら。シキ、あんたも少し休んでなさい。こいつら叩きのめして終わりってわけじゃないんだから」

「……ありがとね」


 シキは気が抜けたように膝から崩れ落ちた。

 体力が回復してないんだ。


「サクラ。シキのこと見てて」

「……うん」


 ドロシーのそこはかとないニヤついた顔が気になった。


「なに?」

「べつに。クスクス」


 他意とか無いんだけど。

 状況が状況だから頷いただけだから。


()く消えろ、有象無象!! 鵺離壊牙斬(ぬりえがき)!!」


 咆哮に乗せた斬撃がエトラを襲う。

 ヤクモはやれやれと羽織りをはためかせ、あろうことかそれを蹴りの一発で打ち消した。


「だからよぉ、老人は労らんか」

 

 ショタお爺ちゃん強……


「ごもっともでさぁ。いたいけなお年寄りに手出しはいけねぇ。喧嘩の相手なら目の前にいるってぇのに。手前じゃ役不足ですかい? (ぬえ)のお姉さん」

唐傘(からかさ)風情が……いいだろう。まずは貴様から殺してやる」

「恐悦至極。と言っちゃあ何ですが、助っ人に呼ばれてやられて終わりなんざ笑い種でごぜぇやす。手前も大賢者の端くれ。良いところを見せやしょう」


 番傘(ばんがさ)をくるり。

 柄の鯉が泳ぐ。


虎死弾弾(こしたんたん)!!」


 連射される砲撃を合図に、ドロシーとオソノも駆け出した。

 ミナモとシノがそれを追う。

 私は変わらず見ているだけなんだけど、目の前が静かになってガクッと力が抜けた。

 我ながら気を張ってたらしい。


「サクラ」

「なに?」

「ありがとう」


 エトラが何故か感謝の言葉を口にした。


「お礼言われることしてないけど」

「無力でも無能でもってやつ。響いたよ。かっこよかった」

「……あっそ」

「さすがリコリスの選んだ女だね」

「次それ言ったらぶん殴る」

「かんらかんら。っと、こうしちゃいられない」

「どこへ?」

「これだけの数、被害はきっと街にも及んでる。早く民の避難を促さないと」


 勢いよく立ち上がるけど、足はふらついて体勢を崩した。


「無茶しない方がいいですよ。まだ万全じゃない」

「市中は観廻組(みまわりぐみ)が動いとる。心配は要らんぞ」

()が動いて誰か一人でも助かるならそれがいい。無茶も無理もするよ。()は将軍だからね」


 この無鉄砲な感じ……あいつが重なってイライラする。

 けど、それがやりたいことなんだから仕方ない。


「私も行く」

「心強い」

「私も……お供します」

「セイカ! 傷はもういいの?」

「今立ち上がらなければ、もう二度と女性の(かわや)を覗けない。それは御免被りますから」


 この変態はなにを良い顔してるのか。


鬼倭番衆(おにわばんしゅう)


 どこからか傷だらけの忍者たちが現れた。


「将軍を、この国を守るために刃を振るえ。(さん)っ」


 御意と短く残し散っていく。

 私たちも走った。

 とにかく夢中で。

 誰かを助けるために。


「まったく、お転婆じゃのう」

「先代の将軍にそっくりです」

「それな、じゃ。ほれどうする九尾の」

「ウチは……」

「若者だけが前を向いておるぞ」


 唇を噛み、シキもまた立ち上がり駆けた。

 自分に出来ることを探すように。


「世話が焼ける」

「それが老人の務めですよ」

「あいつ誰よりも歳上なんじゃが」


 ヤクモは手の平に拳を打ち付けた衝撃で、彼らを囲む忌童衆(きどうしゅう)と滾る戦火を震わせた。


「野暮は無しか。すぅー……ふぅ。ぃよっしゃ行くかのう!! しかと目ン玉に焼き付けろや小僧共!! 酔侠(すいきょう)ヤクモ=ホウヅキ此処に在りじゃあ!!」

 4月に入ってあたたかくなりましたが、肌寒い日が続きます。

 風邪など引かぬようお気をつけください。


 当方は絶賛花粉で死んでおります。


 応援の高評価、ブックマーク、感想、レビューなどいただけましたら幸いですm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ