表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合チート持ちで異世界に転生したとか百合ハーの姫になるしかない!!  作者: 無色
百妃夜后編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

250/311

2-78.最強の魔王だもん♡

 魔王モナは語り部にはならない。






「〜♡」

「はぁはぁ、くっ!!」


 力の差は歴然だった。

 ひらりひらり。

 のらりくらり。

 フミコが何をしようと、何を繰り出そうと、モナは圧倒的な力で迎え撃った。

 格が違う以前に勝負にすらなっていない。

 子どもが大人にあしらわれるような、という表現さえも可愛く思えるほどに。


「人を、人を小馬鹿にするのも大概にしなんし!!」

「馬鹿になんてしてないよ?♡ ちゃんと相手をしてるつもりなんだけどなぁ♡」

「なら、なんで殺さないんでありんすか!! これだけ力の差があれば、わっちを消し炭にすることなんて容易いはず!! なのに!!」

「モナたちは誰も殺さないよ♡ リコリスちゃんはそういうの嫌いだからね♡ それにリコリスちゃんに負けないくらい、モナは可愛い子がだーい好きだしね♡」

「減らず口を……!! いいでありんすえ!! まともにやる気が無いなら、どうぞそのまま死になんし!! 空想詩篇(くうそうしへん)!! 七様式(しちようしき)!!」


 紐解かれた絵巻物が螺旋を描く。

 綴られた文字が浮かび上がり、七体の分身が出現した。

 戀會(れんあい)

 静舜(せいしゅん)

 戎疸(かいだん)

 轢梓(れきし)

 萌剣(ぼうけん)

 髄理(すいり)

 姦否(かんのう)

 魔力(マナ)の総量、技量をそのままに、それぞれが一つの属性に特化した分身体。

 文車妖妃(ふぐるまようび)、フミコ=スガハラの奥義である。

 

「紡がれ死になんし余所者(よそもの)――――――――」

夢幻の情慾(ナイトメアハート)♡」


 今一度、奥義であった。

 本来ならば紡がれる言葉で高天ヶ原(たかまがはら)が消え、生きとし生ける全ての命が潰えるはずであった。

 しかし、最強はそれを無かったことにする。

 ただ吐息を吹く所作で。


「こんな……こんな理不尽が、あってたまるか!!」

「仕方ないよ♡ モナは最強だから♡」

「ふざけなんし!! そんなことで……わっちらの悲願が潰されてたまるか!! わっちらがどんな仕打ちを受けてきたと思ってるでありんす!! どんな人生に耐えてきたと!! 何も知らないくせに、ただ強いというだけで!! わっちらの願いを否定する権利がいったいどこにありんすか!!」

「あるよ」


 権利があって意味もある。

 理屈もあれば理由だって。

 だがモナはそれを言語化しない。

 

「ならそれを語ってみなんし!! 語りもしない語り部が!!」


 如何にフミコが激昂しようとも、魔王モナは語り部にはならない。

 意図せずして世界の王。

 自らを中心に、否応無く周囲を巻き込む強い引力の持ち主であるモナ。

 同じ王たるリコリスとの違いは、ひとえにその性質。

 自らと他者とを同格、同率に扱うことで隔たりを作らないリコリスに対し、モナは真に気に入ったもの以外まるで興味を示さない。

 ある種の排他的思想にも似たその性格故に、自由奔放を極め、かつてはリコリスと対立したこともある。

 その経験を経て心を理解し、真なる愛を知った。

 そう、今の彼女は充分に語り部としての資格がある――――――――が、心を理解した今のモナだからこそ、語り部には()()()()

 好きなものだけ欲望のまま。

 それこそが本質で、それこそが自分の存在証明であると知ってしまったために。

 それが赦されると理解してしまったために。

 最愛がそれでいいのだと赦してしまったために。


「モナはモナがやりたいことだけをやるの♡ だってモナは最強の魔王だもん♡」

「ッ?!!」


 ひたすらに自由に。

 果てしなく気ままに何だってする。

 自分がそうしたいのだ。

 大切な仲間のために。

 濃厚な口付けを交わし、一時の快楽で魂を侵食する。

 

魔王の寵愛(ノブレスオブリージュ)♡」


 蕩けるほどに甘美な肉の快楽……モナの全てを一瞬のうちに体験させる、悪魔らしい悪魔の技。

 魂を侵され涙と唾液で顔を濡らしながら、フミコは震える足で踏ん張った。


「わっちが、この花魁(おいらん)が……こんな、ことで……!!」

「そうまでして頑張らなくちゃいけないこと? 復讐って」

「何が……何がわかるでありんすか!!」

「復讐なんて考えたことないから、あなたの気持ちは全然わからない。でも、気持ちいいことを我慢しなくちゃいけないのはつらくない?」


 後ろ手を組み、乙女さながらの可憐さでモナは言う。


「モナは楽しいことも気持ちいいこともだーい好き♡ みんな笑顔で明るく幸せハッピー♡ それが一番でいいんじゃないかな♡」

「お気楽……能天気の大馬鹿者……!! わっちは、わっちは!!」


 今にも倒れそうなフミコをそっと抱きしめて。


「よしよし」


 悪魔とは程遠い、聖母さながらの温もりで包み込む。

 慈しみを孕んだ声に、手の平のあたたかさに、フミコは不意に涙腺を緩ませた。

 ぶつけるのでなく受け止める。

 恨みも憎しみも、怒りも悲しみも。

 堰き止められていたものを取っ払われ、初めての感情にフミコはただ思い切り泣き喚いた。

 大粒の涙がモナの肩に落ちる。

 そこに余計な言葉は無い。

 魔王は全てを受け入れ、そして閉じる。

 底知れずあたたかな愛を以て。

 残酷なまでに悲哀に満ちた物語を。

 モナは存在がちゃんとチートです。

 強さも可愛さもえっちさも。

 そんなモナが、当方は好きなんだぁ。



 今回もお時間いただきありがとうございましたm(_ _)m

 僭越ながら応援の高評価、ブックマーク、感想、レビューなどいただけましたら幸いですm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ