2-49.真選組
「あーくっそなんかモヤモヤすんなぁ!」
部屋は広くて景色も良い。
言う事なしに完ぺきなのに。
「なんだあの野郎共は!」
「憤りはわかるが落ち着け。とはいえ、あの場で暴れ出さなかっただけマシか。同じタイミングで宿泊することになったのはツキに恵まれなんだが、先に言っておく。あれらには関わるな。碌な目に合わぬのは明白じゃ」
「テルナ、あの人たちって何者?」
「あれは」
「真選組だよ〜♡」
「真選組?」
「悪即斬の?」
「ゴリラの?」
「そなたらのイメージどうなっとるんじゃ?」
どうもこうも、あんまり詳しくないんだよね。
それこそイメージがるろうに○心とか銀○とかの程度で。
幕府のために働く剣士集団?で合ってるかな。
「かつてこの国は一度滅んだ……そのきっかけは紛れもなくシキであるわけじゃが、今こうして国が現存しておるのは、国を立て直した者たちがいるからに他ならぬ。国の再建に努め、民を束ね、国の統治に尽力した、将軍家に仕えし十の大名の一族。その頭を隊長に掲げたヒノカミノ国の実働部隊。それが真選組じゃ」
「小難しいこと並べたけど、単純に偉い人たちってこと?」
「国のために忠義を尽くすと、志だけは立派なものじゃがな」
「実際はただのゴロツキですよ」
お、さっきの丸眼鏡さん。
「おおダンゴロウ」
「まともなお出迎えが出来ず失礼しました。私、当迷い屋の主をしております、倉ぼっこのダンゴロウ=イシモチと申します。遠路はるばるようこそおいでくださいました」
「リコリスです。一晩お世話になります。あの、ゴロツキって?」
「ええまあ、ヒノカミノ国の剣客警邏隊と大方はテルナの言ったとおりで間違いないのですが。どこで曲解したか、彼らは自分たちこそがヒノカミノ国を支えるに相応しい、真に選ばれた者を呼称するようになったのです。態度は横柄に、不遜に、見廻り料として各地で無銭飲食を働き、取り締まりとして一般人に喧嘩を吹っ掛けることも多い。楯突けば謀反の意思有りと投獄。凄惨たる仕打ちを受けると聞きます。額面通りのろくでもない連中です」
「ようするに権力を嵩取るチンピラってことでしょ。関わらないのが吉ね」
「たしかに。鉢合わせでもしたらイライラして殴っちゃいそう」
「面倒事は起こすでないぞ」
「わかってるわかってる」
「お騒がせしたお詫びと言ってはなんですが、食事は贅を尽くした卓袱料理をご用意させていただきます。お食事の用意が済む間、どうぞ湯屋自慢の温泉をお楽しみください」
「楽しみ〜♡」
触らぬ神に祟りなし。
お風呂でさっぱりして、このモヤモヤは洗い流すことにしよう。
「おー露天いいじゃーん!」
出鼻はくじかれた思いだけど、さすが師匠が太鼓判を押すだけある。
こりゃあいいお湯だ。
「モナ〜背中流して〜」
「いいよ〜♡ んーしょんーしょ♡」
「うひょおーこれこれぇい!! よきかなー!!」
「一応公共の場なんだけど」
「きしょすぎる」
ちょっとおっぱいで背中洗ってもらってるだけだが?
それが何か?
「この薬湯いい香りね」
「湯屋は道楽じゃが、ダンゴロウは元々薬師の家系の出じゃからな」
「へぇ、あとで話を聞かせてもらいたいわ。成分が身体の髄まで染み入る感じ」
「おーぅお肌とぅるっとぅる♡ リコリスさんの美貌が次のステージに突入しちゃう〜♡」
「バカさはカンストしてるけど」
「どれどれみんなのお肌は〜っと♡」
「やぁんリコリスちゃん変なとこ触った〜♡」
「ウヘヘヘへ♡」
「なんでそんなおっさんなのあんたって」
「あーマジさいこー♡ サクラサクラ、温泉の何がいいかわかる?」
「興味無い」
「誰にも気兼ねなく右手に乳を左手に尻をが出来るとこだろ!!」
「次回、リコリス死す」
ラ○の翼神竜に肩パンしてでも生きるわ。
「はー蕩けるー」
「みんなが働いてるのにこうして温泉に浸かって……背徳感に押し潰されて死ねばいいのに」
「それが一緒に温泉浸かってるやつの言葉か」
「温泉に罪は無いし」
「それはそう」
「しかしあんたもリコリスに慣れたわね」
「は?」
「女嫌いのあんたが一緒に湯に浸かってるだけでも随分な進歩だと思うけど。違った?」
タオルでがっつり肌は隠してるけどな。
けど、サクラも言われて気付いたんだろう。
途端に苦虫を噛み潰したような顔をして立ち上がった。
「部屋風呂入る」
「ゆっくりしとけって何もしないから。ドロシーもあんまからかうなよ」
「なんだかんだ言っても、アタシにしてみれば子どもだもの。子どもをからかえるのは大人の特権でしょ」
「死ね乳無し」
「ぶっはw おまw カ○ナシみたいに言うなよww」
「よし。よくわかんないけど二人まとめてケツの穴からヤク中にしてやる!!!」
怖すぎだろこの女皇。
「はー気持ちよかった♡」
「相変わらずいい湯じゃった」
湯上がりの浴衣かわえぇ〜♡
臙脂色の丹前も素敵だけど、ほんのり火照ったピンク色の肌がもう、ねぇ♡
「色っぽい通り越してぶち○してぇ……」
「お上がりですか皆様。如何でしたかお湯加減の方は」
「ダンゴロウさん。はい、堪能させていただきました」
「それは何よりです」
「切り替えの早さこわ」
「外ヅラの厚さで城が守れるわね」
黙りゃんせ貴様ら。
「お食事の用意が出来ましたので、後ほどお部屋にお持ちいたします。本当ならば宴会場を開けるのですが」
「団体の客ならば仕方あるまい。それに部屋の方が気兼ねせずに済む」
「そうだな」
「お心遣いありがとうございます。しかし、テルナから気兼ねなんて言葉を聞くとは。年を取りましたね、お互い」
「やかましいぞ。妾はいつまでも現役ピチピチじゃ」
「ハハハ」
「なんじゃその愛想笑い」
師匠が友だちと話してるときはこんな感じなんだ。
なんか新鮮。
ちょっとだけ見た目どおりの年齢に見えなくもない。
「ではまた後ほど」
ダンゴロウさんは一礼して消えた。
「あの人、一人でここを切り盛りしてるの?」
「倉ぼっことは家守りの妖怪じゃ。そのくらいわけはないのじゃろ。あれで五百年は生きておったはずじゃしの」
「かなり親しげにしてたけど、昔の男だったりする?」
「嘘だろ?!!! 師匠は私が初カノだよね?!!! 一目惚れだもんね?!!! 処女だって私がもらっむぐぐぐ!!」
「黙れ」
顔赤くした先生に口キュッてされた。
湯○婆がやったやつやめろ。
「サクラも邪推はやめよ。長寿故に必然飲みの友人も長寿の者が増える。それだけじゃ」
「むぐぐぐ……ぷは! そうだぞ! 師匠は私のことが世界で一番レロレロチュッチュに好きなんだからな!」
「実際そのとおりじゃが慎め不敬者!!」
慎んだらリコリスさんじゃなくない?
「さっさと部屋に戻るぞ。いつ真選組と出くわすとも限らん」
「そういうのフラグって言うのよ」
ドロシーが腕を組んで息をつく。
視線の先には、廊下の奥からこっちに向かって歩いてくる同じ羽織の男が三人。
「おうおう、中居も芸者もいねぇようなチンケな宿だと思ってたが、こりゃあ大層なタマがいるじゃねぇか」
モブ顔がしゃしゃってんじゃねーよ。
はいはい無視無視。
「待たれよ」
は?
嘘でしょ?
男がリコリスさんの腕を掴んでんの?
何様?
金○八つ裂きにされてぇの?
「我々は将軍家直轄剣客警邏隊真選組は本丸、一番隊。副隊長キリマル=ジンノである。伏して崇めよ」
誰にもの言ってんだこいつ。
「ふむ、見たところそれなりに見れる顔であるようだ。伏すことを不問とする。我々の宴席に同席し酌をする栄誉をやろう。ついて来るがいい」
…………よし、殴ろう☆
「リコリス」
鼻っ柱にかましてやろうとしたら、小声で師匠が袖を引いてきた。
「堪えよ。面倒事はごめんじゃ」
「わかってるわかってる。ちょっと首から上消し飛ばすだけだって」
「不殺の心得が消し飛んどるが?」
だってムカつくし。
まあ、腕掴まれたのが私でよかった。
私の女に触れでもしたら迷い屋が潰れてたよ。
「おうお前も来い。目つきは悪いが顔は好みだ」
「は?」
「へっへっへ。こっちの女はいい乳してやがる。助平がよぉ男を誘ってんのか?」
「〜♡」
あ、ダメだ手出ちゃう。
よし出そう。
「副隊長、こっちのガキ二人はどうしやす?」
「乳無しに生きる価値無し。捨て置けぶへあァ!!!」
「誰が!!!」
「乳無しじゃこのたわけがァ!!!」
いやお前らが殴んのかい。
和風が肌に合ってるみたいです。
書くのたのしーーーーー!!!!
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