表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/304

1.私、転生

「あぅ……あー」

「あら、起きた? おはようリコリス」

「おお今日も可愛いぞ。さすがおれたちの娘だ」

「あー」


 ベッドから私を抱きかかえたこの優しそうな女性は、何を隠そうお母さんのソフィア。

 その横のイケメンがお父さんのユージーン。

 私は二人の娘、リコリス=ラプラスハートとしてこの世界に転生した……らしいことを先日教えられた。

 誰にって?

 神様。




「どうも神です♡ 転生させちゃった♡」


 軽ッ!

 てかなんで?


「顔がねすっごい好みだったのぉ♡」


 顔て。


「なんていうかね、もう本当どうしようもなくすっごく好み♡ 私が人間だったら一生養ってあげちゃうくらい好き♡」


 おぉ、ヒモ生活。

 じゃなくて、転生って?流行りすぎて溢れ返ってるやつ?


「流行りすぎて溢れ返ってるやつ♡ でもね、転生させたからって使命とか無いんだよ♡ リコリスちゃんは好きに生きていいからね♡ たまーに教会とか神殿でお祈りしてくれたら嬉しいかなーくらいだから♡」


 はぁ、そうですか……

 あの、なんで私を転生させたんですか?


「だってリコリスちゃんが願ったから♡」


 願った…気がする。

 いや、うん、願ったわ。


「あんまり時間は無いから、また今度会うときいっぱいお話しましょうね♡ 最後に私からの贈り物♡ 健康な身体と、世界の知識と、リコリスちゃんの人生に役立つスキルだよ♡ リコリスちゃんの人生が、幸せいっぱいでありますように♡」


 って言って消えちゃったんだよなあの神様。

 めっちゃキレイな人だったなぁ。




 というわけで、不肖このリコリス。

 このタルト村で、絶賛赤ちゃんライフの真っ最中であります。


「はーいリコリス。ご飯よ」

「あー!」


 ひゅーうミルクの時間だぜー!

 ちゅーちゅー。

 ぷはーたまんねー!


「いいなぁリコリス。おれも味見させてもらおうかな」

「あら、大きな赤ちゃんね」

「だーだーだー!!」

「フフ、私のご飯だーって言ってるみたい」


 ええい寄るな寄るな無礼者!これ我のぞ!

 合法的に飲める赤ちゃんサイコー!




 転生してから一週間。

 赤ちゃんライフ暇がすぎる。

 こそこそベッドを脱出してお母さんに叱られる生活は飽きた。

 この世界はスキルとかモンスターとか、そういうゲームみたいなファンタジーな世界らしく、魔法によって栄えているみたいなんだけど……マジで何ッッッにも娯楽が無い。

 ここが田舎だからか? あーん?

 タルト村は、ドラグーン王国という国の最西端、クローバー領に位置し、不毛の大地と呼ばれる荒野を境にした、所謂辺境と呼ばれるど田舎のようで。

 人口は百人くらい。

 男性は狩猟と木こりに精を出し、女性は農作物と家畜を育て、たまに来る行商人と交易しつつ、慎ましやかに日々を暮らしている。

 絵に描いたようなスローライフ生活だ。

 に・し・て・も!


「あーぅあー」


 現代日本で育った女子大生には退屈が拷問すぎて死ぬ。

 やることないからベッド脱出とハイハイだけが上手くなる。

 掴まり立ちの足がプルプルすることよ。

 はやく大きくなりたい。

 大きくなったら女の子といっぱいイチャイチャするんだ!

 今から楽しみー夢広がるー。


「へへへへへへへ」

「リコリスってたまに変な笑い方するよな」

「きっと楽しいことがあったのよ」


 変とはなんだ変とは。

 可愛いと言ってくれ。


「こんにちはー」

「邪魔するよ」


 誰か来た?


「いらっしゃいマージョリー、ヨシュア」

「お招きいただいてありがとう」


 おー、うちの両親にも負けない美男美女。

 家の中の顔面偏差値()っか。

 どうやら夫婦っぽい。赤ちゃん抱いてるし。

 身なりはいいし、知り合いの農夫婦というわけではなさそうだけど。


「赤ん坊に馬車は堪えただろう。大丈夫だったか?」

「街道の整備がやっと終わったからね。以前ほどじゃないさ。揺れの少ないとびきり良い馬車も用意したしね」

「そうか。悪いなヨシュア、こんな田舎までわざわざ顔を見せに来てもらって」

「その田舎はいちおう僕の領地なんだけど? まあいいさ。僕もマージョリーもみんなに会いたかったことだしね」


 おお、なんかスマートなイケメンだなぁ。


「マージョリー、その子が?」

「ええ。私たちの愛しい授かりものよ」

「あ、あー」

「まあ可愛い。挨拶してくれてるのね。こんにちはお嬢様。お名前は?」

「アルティよ」


 アルティ……うーんいいお名前。

 ていうか可愛い!

 目パッチリ! お手手ちっちゃい!

 マジ天使じゃん!

 赤ちゃんて可愛い〜。

 絶賛赤ちゃんの身で言うのもアレだけど。


「あーぅ」

「フフ、リコリスも挨拶したいのね。はいどうぞ」


 私とアルティがソファーに置かれたけど、いやどうしろと?

 言葉通じんよ?あぅあぅ言っとけばいい?

 大人たちのほんわかした視線気になる〜。

 私も正直撫でたり抱きしめたい気持ちは山々なので、とりあえず堪能させてもらおう。

 フヘヘ、赤ちゃんのミルクっぽい匂い好きだぁ。

 って、あれ?


「あー」

「ぅ?」


 何故近寄って――――――――

 チュウ

 ほへぇ?


「あらあら」

「まあまあ」


 うっはぁーなになにあらやだちょっとおっほぉーなんかほっぺにチューされたんですけどー?♡

 お母さんたちが目をキラキラさせてるけど天然タラシか貴様?

 私が赤ちゃんで感謝しろよ?

 まったくえっち娘がよぉ。

 性が目覚めたらどうすん――――――――

 チュウウウウウウ


「あ゛ーーーーーーーー!!」


 めっちゃ吸ってくるぅ!!

 とろけるお餅ほっぺが飲み込まれるぅ!!

 吸引力がブラックホールの如し!!

 うおお何至福の表情で人のほっぺ吸ってんだこの乳飲み子めがぁ!!

 おやめくださいおやめくださいていうか助けてぇぇぇ!!


「赤ちゃんって本当可愛いわぁ」

「そうね。リコリスちゃん、アルティと仲良くしてあげてね」


 うんっ☆

 リコリスに任せて!

 マジズッ友!

 だから今だけは助けてお願いぃぃぃぃぃ!!


「あ゛ぁーーーーーーーー!!!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
面白いです✨
[良い点] リコリスのほっぺを、アルテイの絶大な吸引力で困惑と誘惑の二つの描写が見事に表現されていて、てぇてぇでした☆彡 これからも、いっぱいトキめかせて下さい( *´艸`) [気になる点] 神様、…
2023/11/18 12:37 退会済み
管理
[良い点] このノリとテンション最高です笑笑スイスイ読み進められるし、いいぞもっとやれをやってくれる&超えてくる主人公が好きすぎる。続きも読みます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ