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2-25.カオスが極まって

満月災禍撃(フルムーンクラッシュ)!!」


 一体潰せばまた一体。

 次から次へと機械兵(マシンロイド)は襲い来る。

 自動拳銃フラスコに火を吹かせても、それ以上の銃撃で応戦されるし。


「数の力って偉大よね……」


 ジャンヌの傷は塞がった。

 血も増やしたし、時間が経てば目を覚ます。

 それまではアタシがジャンヌを守らなくちゃ。


月皇破邪顕正エクスターミネイトムーンフォース!!」

 

 ときに、一対一でもアタシの戦闘力なんてたかが知れてる。

 如何に神竜(ドラグニール)級といっても、所詮は百合の楽園(リリーレガリア)最弱。

 今も昔もそれは変わらない。

 たとえアタシが個人でドラゴンを倒せようと、得手不得手というものがある。

 スキルでゴリ押し出来ても、アタシ自身の戦闘センスなんて皆無に等しい。

 パンチはひょろひょろ。

 キックなんて足が攣る。

 その辺の小枝だってまともに折れない自信がある。

 つまり何が言いたいのかというと。


「ぜーぜー!」


 シンプルに運動能力が欠如してる。

 あとついでに体力もゴミ。

 対して向こうは疲れ知らず。

 これもしかして詰んでる?

 機械兵(マシンロイド)たちは無情に、腕を挙げて掌に光を集束させた。

 せめてジャンヌだけでも……!


絶空(エアロリープ)!」

蒼炎葬剣(ブルーイグナイト)!」


 アタシの視界に映っていた機械兵(マシンロイド)が斬られて燃える。


「アウラ! クルーエル!」

「危機一髪でしたねぇドロシー様」

「遅れて申し訳ありません」

「これでも広いフィールド中を探し回ったんですから大目に見てくださいね」

「ほんと良いタイミングで来てくれたわ。ジャンヌが目を覚ますまででいい。手を貸して」

「元より我々はドロシー様をお守りするために剣魔祭(カーニバル)に参加した身。如何様にもお使いください」

「私は本気で勝ちに行くつもりでしたけど」


 森羅騎士団(エルフセイダーズ)の隊長と副隊長。

 こんなに心強い味方はいない。


「対象を殲滅しドロシー様の道を切り拓く。行くぞクルーエル。【空霊の絶剣(パイモン)】!!」

「了解。【蒼炎霊の狂乱(イフリート)】!!」


 これで少しは時間が稼げ――――――――


「【極光王の拳(ギルガメッシュ)】!!」


 何が起きたのかわからない。

 気付いたときには骨が内臓を突き破る嫌な感触がして、自分の身体が宙を飛び地面を転がっていた。

 口の中が鉄臭い。

 息が出来ない。


「ドロシー様!! 貴様ァ!!」

「ヴォホホホホ!! 何を怒ってるの? 何でもアリのバトルロイヤルってこと忘れてるのかしら!! 極光百裂拳(シャイニングバースト)!!」


 意識があるだけで奇跡。

 【月皇竜の秘薬(ヒュドラ)】を…

 痛覚鈍化。

 骨折治癒。

 内臓損傷修復。

 造血。

 自分の身体だ、治癒には一瞬あればいい。

 けれどその一瞬の間に状況は一変した。


森羅絶空クルセイドエアロリープ!!」

灼火狂乱(ヒステリア)!!」

「効か!! なァい!!」


 アウラの斬撃もクルーエルの蒼炎も、肉体一つで真っ向から弾く。

 なんて存在感。

 まるで太陽。

 これが旭日(きょくじつ)の大賢者……アサヒ=シャイニングナックル。

 あの二人がまるで赤子の手をひねるようにあしらわれる。


昇耀爆竜波(サンブレイク)!!」


 鍛え抜かれた全身から発せられる光が二人を焼く。

 

「ぐッ!!」

「まずは一人!!」

「クルーエル!!」

「おっと、独り占めはよくねぇのでごぜぇやす」


 今度はなんだ。

 アサヒとクルーエルの間に誰かが割り込んだ。


時雨(しぐれ)の……!」

亜斬雨(あきさめ)


 シズク=アメミヤは広げた番傘を回し、水の波動を叩きつける。

 アウラとクルーエル、それにアサヒに機械兵(マシンロイド)が一気に薙ぎ払われた。


「ちょおっと!! 何を横入りしてるのよ!!」

「横入りたぁ人聞きが()りぃ。バトルロイヤルだ、先も後も、敵も味方もありゃしやせん。勝ちに行くのに形振(なりふ)り構ってられるほど器用でもねぇもんで」


 今の攻撃でアウラとクルーエルのダメージが大きい。

 回復を……


「おっと、そいつはいけねぇ」

「ぁぐっ?!!」


 スキルを使おうと翳した手が高下駄に踏み潰される。


「皇女様を足蹴にすんのは心が痛みやすが、戦場で回復役を真っ先に叩くのは定石も定石。どうか無礼を許しておくんなせぇ。そんで、このまま退場してくだせぇ」


 傘の先に水の(やじり)が揺らめいたのを見て、アタシはギュッと目を瞑った。

 そのときだ。


唯我の炎(ビーストワン)

「!!」


 荒々しい灼熱が天から降ってきた。

 瞼を閉じて尚も眩い、金色の炎を荒ぶらせながら。


「あぁらぁ、獣帝ともあろう者がバトルロイヤルで敵を助けるなんて。どうゆう風の吹き回しかしらぁ?」

「助けたとは結果論だ。百合の楽園(リリーレガリア)とは浅からぬ仲ではあるのは否まぬがな」

「なら、この横槍はどう説明つけるつもりでさぁ」

「強き者を自らの手で。この理念がわからぬ貴様らではあるまい。強さを持つからこそ暴れられず加減を覚えるもどかしさも。いや、回りくどいのはやめよう。捻り潰してやるからかかってこい」

「【極光王の拳(ギルガメッシュ)】!」

「【時雨王の祈祷(すさのお)】!」


 才能に溢れた実力者が、何百、何千年という時を経て絶え間ない錬磨の先に辿り着ける領域――――アンリミテッドスキル。

 それがある時を境に、まるでそれまで閉じられていた鍵が開いたかのように、世界各地で覚醒の連鎖(シンクロニシティ)を引き起こした。

 その契機とは、リコリスの半神半人(デミゴッド)への昇華。

 特に【百合の王姫(イヴ)】で繋がったアタシたちは、リコリスへの愛が強ければ強いほど、強大なスキルへと進化する傾向がある。

 断言出来る。

 百合の楽園(リリーレガリア)に身を置かない立場でありながら最もリコリスへの愛が深いのは、レオナであると。


「【竜屠殺の獣帝(ジークフリート)】」


 その権能はスキル殺し。

 あらゆるスキルを封殺するスキル。

 

「――――――――!!」

「――――――――!!」

「ああ、言いたいことがあったのを忘れていた」


 最強の王は、地に伏せる大賢者に言い放つ。


()が高いぞ」




 ――――――――




『各地で戦闘がデッドヒート!! 数多の実力者たちが脱落する様に会場は騒然となっております!! 特に最強の一角が続々と堕ちる!! そしてなんと、なんと!! 混沌とする戦況に、ついにあのお方が満を持して参戦!! 史上最年少でサヴァーラニアの帝位に就き、その強さを以て最強に君臨する若き英傑!! レオナ=ゴールドフレア選手が堂々降臨!! 大賢者を優に圧倒する!!』




『この場にあなたが出張ってくるとは、少々予想外だったよ』


 周囲を取り囲む機械兵(マシンロイド)の一体から、レガートの無機質な声が届いた。

 どうやらこの兵隊はスキルに依存しない作りをしているらしい。


『大賢者を同時に圧倒するとはさすがだ。獣帝の名は伊達ではないね』

「称賛なら直接顔を見せたらどうだ、屑鉄(くずてつ)。私の国でいつまでも好き放題出来ると思うなよ」

『怖い怖い。直接対峙していたらオイル漏れを起こしていたよ。けれど粋がるのは少々早い』


 機械兵(マシンロイド)が手を挙げると、次いで倒れた機械兵(マシンロイド)が浮かび上がり、破損したパーツが繋ぎ合わされていった。

 より巨大に。強靭に。

 加えて数も増えた。

 いったいどれだけの数をストックしている。

 

「合体か。人形遊びが好きなんだな」

『技術の進化さ』


 【竜屠殺の獣帝(ジークフリート)】が反応しない。

 これも機械兵(マシンロイド)に搭載された機能か。


「っ、レオナ……」

「敵にこう言うのはおかしいが、ここは任せろドロシー」

「なんで……」

「同じ女を愛する縁だ。今くらいは手を貸す」

『たった一人でこの数を相手取る気か』

「それはこっちのセリフだ。たったこれだけの軍勢でこの獣帝の首を獲るつもりか」

「おっと、まだ手前共が居るのも忘れてもらっちゃあ困りやす」

「ヴォホホホホ!! いいわね!! 盛り上がってきたじゃない!!」


 タフなことだ。

 一撃で沈めたつもりだったが、さすがは大賢者。

 けれども不利は無い。

 最強の事実は揺るがないのだから。

 敵味方入り混じったこの混沌を制した者が勝つのではない。

 

「我の勝利は確定事項だ」


 懸念があるとすれば、これ以上の混沌が生まれないこと。

 だから、()()は私にとっての予想外だった。


「強そうな人! いっぱい!!」


 これ以上無いくらい爛漫に。

 太陽でも降ってきたのかと思うほど激しく。

 彼女はこの場の誰よりも楽しそうに笑った。


「みんな倒して、アリスが優勝だー!!」

 更新おまたせして申し訳なく!

 どうか気長にお待ちください!!m(__)m


 R-18版百合チートとか読みながらボソッ


 しかし、なんて混沌としてんだ……さすがバトルロイヤルだな。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 貴様あああああああああああああああああぁぁぁ!!!!!!!! 美しいドロシー様になんてことを!!!!!!!! 許せねええ!!!! レオナ様かっこすぎて漏らす カッコよすぎ ジークの親誰なん…
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