2-14.祭に向けて
今回は閑話です!
本番に向けて的な!
「久しいな」
「オー!ヴィルストロメリア!それにリエラも大きくなりマーシタ!」
「お元気そうで何よりです」
テスタロッサ=メーラアドルナート、雷帝の大賢者。
ドラグーン王国最初の大賢者だったっけ。
可愛い顔してる。人形みたいだ。
「会うのは十数年ぶりか。お前は変わらんな」
「いつまでも若くて可愛いデショウ」
「五十を過ぎた格好ではないな」
「ごじゅ…全然見えない」
アリソンさんみたいな魔力の活性か。
魔力が肉体に影響を及ぼすレベルの魔法使い。
なるほど、さすが大賢者。
「さてさて、まだ集まっていない方々もいるのデスが、まずは急な申し出にも関わらず、剣魔祭への参加を承諾してくれて感謝しマース」
「各国の実力者を招待したということだけど、実際にはどれくらいの規模でやるのかしら。こちらにはルールの一切が知らされてないんだけど」
「ロストアイのドロシー女皇陛下デースね。単純明快デース。ワタシが招待した皆さんと、ワタシを合わせた百名でやり合う。剣魔祭はその名のとおり、武器も魔法も何でもアリのバトルロイヤルなのデース」
「バトルロイヤル…それをサヴァーラニアでやるのですニャ?」
「この国を焦土と化すつもりなら、今からでも開催を拒否するが?」
「ノンノン!大丈夫デース!周りへの被害はちゃんと考えてマース!一切合切ノープロブレム!伊達に大賢者ではないのデース!」
仰々しいっていうか妙に演技めいてるなこの人。
なんていうかこう、トムの勝ちデースみたいな。
「リコリス?」
「んぁ?どしたドロシー?」
「……?いえ、なんでも?」
変な奴め。
私の魅力に当てられたか?
今さらだと思うけど、あとで抱いてやろ。
「詳しいルールは当日改めてになりマスが、万事ワタシに任せてオッケーなのデス」
そう言うと、テスタロッサさんは後ろ手を組んで私の顔を覗き込んだ。
「楽しみましょうネ」
「あ、ッス」
なんか、どうもねぇ…
開催は一週間後ってことらしいから、それまではゆっくり出来そうだ。
みんなと一緒にのんびりなんて久しぶりだし、思いっきり堪能させてもらおう。
「手始めにドロシー、今日私のとこ泊まるでしょ?スケベしようぜ」
「誘い方が言語覚えたての原始人」
「ほんと死ね」
「まあいいけど」
「いいの?」
「子ども欲しいしね。サクラ、あんたもぼちぼち慣れないと、反発してるだけじゃこいつの相手は疲れるわよ」
「揃いも揃って色ボケなのマジキモい」
「薬漬けにしてやろうかしらこのクソガキ。エルフの妊娠欲ナメんじゃないわよ」
「エルフとかじゃなくてドロシーがスケベなんじゃないのそれ」
まあまあ、ツンツンしてる二人も可愛いから好きだぞ♡
「てか私たぶん、この人が女じゃなくてもまあまあ嫌いだったと思う」
「何でも出来て、お金持ちで、そのうえ美人だもんな私」
「そういうところよ」
「さーて挨拶も済ませたし、ケモ耳お姉さんナンパしに行っちゃお〜♡」
「なんでそんなにクズなのあなたって」
「そういえば、さっきはどうしたの?」
「さっき?」
「城で雷帝、テスタロッサに会ったときよ。歳はあれだけど、いつものあんたなら、うっひょぉかわい子ちゃん!土踏まずペロペロ〜!ってお腹すいた野犬みたいに襲いかかるのに」
誰が野犬だコノヤロー襲いかかんぞ。
「たしかに、なんだか様子がおかしかったっけ」
「タイプじゃない女なんていないはずなのに」
「なに言ってんだお前ら」
「?」
「あの人男だぞ」
ていうか男の娘?
「おと、こ?」
「男…」
「「どぅええええええ?!!」」
――――――――
「〜♡」
「ゴキゲンねテスちゃん」
「アサヒさんっ。聞いてくだサーイ!ワタシ、リコリスさんに会っちゃいマシタ!」
「あら、どうだった?」
「すーっごくステキな人デシタ!」
と、テスタロッサは筋骨隆々のおネエさんの前で小躍りする。
「剣魔祭が待ちきれマセン!はやく闘いたくてうずうずデス!」
「せいぜい楽しませてもらうよ」
白い機体のロボが。
「吾輩も頑張ります」
「最強だなんだと興味はありやせんが、祭り事は歓迎でさぁ」
紫の髪の小柄な魔女が、番傘を差した妖怪がここに集う。
旭日の大賢者、アサヒ=シャイニングナックル。
屑鉄の大賢者、レガート=ニュートリノ。
時雨の大賢者、シズク=アメミヤ。
紫苑の大賢者、エマ=シトラスディース。
雷帝の大賢者、テスタロッサ=メーラアドルナート。
真の最強を決めたい。
ただそれだけの欲求のために。
そして――――――――
――――――――
「お母さんー、アリスもみんなと同じみたいに遊び行きたい〜」
「お母様〜」
「あなたたちは少し落ち着くということを知るべきです。一応は貴族なのですから」
あれが親で落ち着けという方が難しいのはわかりますが。
もう少し淑女らしく…とは、押し付けがましい親心でしょうか。
まだ子どもですし、今のうちから口うるさく言うのも…
いえ、ですが多少厳しくしておかないと、あれのようになる可能性は捨てきれないわけで…
「お母様変な顔してます」
「ブチャイク」
「誰がブチャイクですか。わかりました、ではその辺をぶらりと散歩しましょう」
「やった!」
「お散歩お散歩!」
「あのねあのね、あっちのお店にケーキのお店あったの!」
「ケーキ食べたいです!」
「はいはい。ケーキなら私がいつでも作ってあげるのに」
「お母さんのケーキはケーキじゃないからいい」
ケーキですが?
「お母様のケーキ、カチコチニチャニチャで好きです」
フワフワしっとりしてますが?
「何を言ってるんですかこの子たちはまったく」
行きましょうかと二人と手を繋いだときだ。
視界の端に燃えるような赤い髪が靡いたのが見えた。
「リコ?」
「?!」
「あ、なんでもありません…。失礼しました…」
人違いでしたか…
他人の空似というのはあるものですね。
よくよく見ればリコよりも品がある気もします。
私としたことが…
「はーびっくりした…。まさか出くわすとは…危ない危ない…。もっとこっそりしないと」
「何やってるのよ。だからわざわざ見に来る必要ないって言ったのに。しかも雰囲気を楽しみたいからって、わざわざ前乗りまでして」
「だーって、生で見たかったんだもん。剣魔祭は後世まで語り継がれる歴史的なイベントなんだよ?」
「だからこそ結果だってわかってるじゃないって言ってるんだけど」
「ニシシ。まあそう言わないでよ。ゼロだって興味あるから一緒に来てくれたんでしょ?」
「まーね」
「ツンツンしつつも私のこと一番に思ってくれてるゼロらいすち♡……にしても、相変わらず皆の付き合いの悪さよ。私ってそんなに人望無い…?」
「アタシだけでも付いてきただけありがたく思いなさいよ」
「うぃっす…」
後の歴史に生きる者たちもまた。
次話からは剣魔祭開催まで、何話か幕間的なダラダラした話を書けたらと思っとります!
どうか気長にお付き合いください!!
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