2-6.リリーストームグループ【オルタナティブ:美容健康部門】
リリーストームグループに美容健康部門として君臨するオルタナティブ。
魔王モナ=エクスヴァルヴァ=クトゥリスが総支配人を務めるこの部門は、アナザーワールドを越える人気を誇り、リリーストームグループではダントツの売上を叩き出している。
モナの経営手腕云々よりも、圧倒的に需要があるという点でそうなっている。
「そういえばさ、アルティ知ってる?オルタナティブの新作の香水がめっちゃいい感じなの。ほらほらこれこれ。ベリーみたいなリンゴみたいな香りでさー。私これ超好き」
「どれどれ…本当、良い香りですね。甘いのにどこか爽やかで。リコはフルーティー系のノートが好きですもんね」
「甘い感じがなぁ。アルティはあれでしょ。夏の蒸れた下乳のかほり゛っ!!」
図星だからお尻蹴ったんだろ貴様…
「香水もですが、今年はまた一段とコスメが人気ですね。たしかモナが試供品を送ってきてましたっけ」
「そうそう春色コスメな。口紅もチークもめっちゃいい色してんの」
こと美に関して、悪魔…特に淫魔の右に出るものはない。
自分の魅せ方、他人の興味の惹き方、化粧、香り、仕草、どれをとっても生まれついての天才だ。
そのトップもトップの魔王が考案した商品ともなると、ハズレ無しのお墨付きがあるようなもの。
世の女性方は放っておかなくて当たり前だ。
更にエステに脱毛などのサロンも同時に展開し、世界の美意識のランクを数段上げるという立役者も担っている。
尤も、それすらもオルタナティブのほんの一面なんだけど。
「リコって化粧に興味あったんですね」
「人並みには興味あるよ。いや、ていうか今までもしたことあったろーが」
「化粧をしててもしてなくてもリコの美しさは変わらないので気に留めていませんでした」
「お、おお…なんだこいつデレの振り幅エグいな」
そういうとこだぞ。
さて、オルタナティブは"美容健康"に特化した部門であることを改めて明言する。
それは何も身体の調子を整えるためだけのものではない。
美容健康とは、身体機能と精神の安寧の二つを指して表される言葉である。
すなわち表裏一体。
二面性が指し示すもう一つの事業。
それが、
「あーリコリスちゃんとアルティちゃんだー♡いらっしゃーい♡」
性風俗関連営業。
早い話がそういうことを提供するお店だ。
「気持ちよかったよー♡また遊ぼうね♡」
そそくさと出ていく女の子のお尻を眺めてたら、アルティにほっぺをつねられた。
「今日来ると連絡しておいたのに」
「だってそういう気分だったんだもん♡」
モナが欲望に忠実なのはいつものことだ。
一時期はナリを潜めていたものの、素行の悪さは百合の楽園随一。
しかしマジメに業績を上げてる分、アルティも叱りづらいらしい。
「二人もモナと気持ちいいことする?♡」
「するー!!♡」
「仕事が先です」
健全かどうかはともかく、オルタナティブは法とルール、倫理に基づいたクリーンな業態だ。
ユリホや魔石を媒体にしたセクシーな映像の販売は出演者の同意を得ているし、マッサージグッズ、お風呂屋さん、電話応対出張サービスなんかも、販売、営業に関しては各国からしっかりと許諾も得ている。
もちろん未成年者や各方面への配慮も欠かしてはいない。
極論にはなるけど、需要がある以上これも立派な営業の一つだ。
「そうだリコリスちゃん♡」
「なんだい?」
「劇場にねーとーっても可愛い子が入ったんだよ♡身体が柔らかくてポールダンスが得意なの♡今度見に行ってあげて♡」
「マジかよ行きてぇ〜♡きわっっっどい下着にチップ挟んであげた〜い♡ていうかもう私が踊っちゃうかぁ?♡」
「いいじゃないですか。見に行きますよ。生卵投げて罵声を浴びせればいいんですよね?」
「Mっ気があるだけでMではねぇんだわ」
どっちかっていうとMなのはお前だろ。
「リコリスちゃんは虐めてくれる方が得意だもんね〜♡アルティちゃん知ってる?♡リコリスちゃんって凄いんだよ♡モナすーぐ気絶させられちゃうの♡」
「私が一番気絶させられてますけど」
「あと腰使いも凄いの〜♡次の日使い物にならなくなっちゃうんだよ〜♡」
「私が一番使い物にならなくなっちゃってますけど!!!」
「何のどこに張り合ってんだ」
全員等しく抱いてるのに、私の女たちってばすぐマウント取り合うんだから。
最近じゃマリアとジャンヌまで参戦してくるし。
何歳になってもお姉ちゃん好き好き妹でいてくれるの感謝しかない。
しかし二人も今年16歳か…
おいしそうに実ってんだよなぁ。
でも成人してないのに手出しちゃうのはなぁ…
本当に偉いぞ私の理性。
まあ何が言いたいかっていうと。
「何歳になっても性欲って衰えねえよな」
ってことなんですよ。
「あなたやモナが特別な気もしますが」
「なんか私お婆ちゃんになっても同じ話してる気がする」
「想像に容易すぎてなんか嫌です」
「お婆ちゃんになっても一緒に寝ようね♡」
「寝るンゴ寝るンゴ〜♡」
お婆ちゃんになるまでの間もヤりまくるけどな!!!
ってな感じで視察終了っと。
「く、あぁ。疲れたなぁ」
「リコは雑談以外することが無かったように見えましたが」
「バッカおめー私はみんなの仕事っぷりを見てたんだよ」
「見た感想は?」
「みんな可愛い!!しゅき!!」
「何よりです」
「視察ってこれで終わりだっけ。なんか小腹すいたな。ユウカのとこで食べてかない?」
「この後はシャルラハロート王立料理専門学校へ、特別顧問としての訪問があります」
「うへぇ…」
シャルラハロート王立料理専門学校。
ヴィルの意向で数年前に新設され、アンドレアさんを校長に据えた専門機関だ。
意欲があるならば、年齢、出身、種族を問わず、料理に関しての基礎知識と技術を学べる場所。
何かの料理がヴィルを感動させたきっかけで設立が決定したらしいけど、あの人は何食べて感動したんだろ。
「シャルラハロートからまた依頼が来ていましたよ。リコに講師を頼みたいと」
「アンドレアさんからだろ?講師ならリルムで充分事足りてるんじゃないの?」
「リルムはリルムで特異なことは、リコもわかってるでしょう?」
リルムは私が講師にと推薦した。
元々家事能力が高かったし、料理の腕は百合の楽園では私と同レベルの腕を持っているためだ。
可憐な見た目と子どもっぽくのほほんとした性格が生徒たちにウケ、人気はすこぶる高いらしい。
ただ本人の性格上、作るよりも食べるが専門なので、講師役というより味見役という立ち位置が正しいらしいけど。
「にしてもだ。だいたい、あの人は私を持ち上げすぎなんだよな」
「正当かつ妥当な評価をされているということです。スケジュールは私がねじ込んでおいたので安心してください」
「有能秘書かよ」
「ふふん」
「有能ついでに疲れた私を癒やすためにリコちゃん大好ち♡って言ってくんない?」
「リコ、チャン、ダイス、チ」
「急に感情死ぬの何?」
「いつも言ってるんだからいいじゃないですか」
「いつだって欲しいのー。好き好き愛してるめっちゃ言ってくんないとリコリスさんヘラっちゃうよーいいのー?」
「フッ」
鼻で笑ったんだがこいつ。
それからアルティは、自然に指を絡めてきた。
「ちゃんと仕事を終わらせたら、何回だってあなたへ愛を囁いてあげますよ」
「……チューは?」
「リコが蕩けるまで」
はーぁ。
私の嫁がいい女すぎてつらい。
…………仕事、頑張ろ。
あいつも向こうで頑張ってるだろうしな。
――――――――
何のために産まれたのか。
何のために生きたのか。
私の中には何の答えも在りはしない。
このまま死ねたらどれだけいいか。
なのに…
「ったく。シキのバカじゃあるまいし。人間が死にたがってんじゃないわよ」
深い森の中で私を見つけたその人は、望まない手を私に差し伸べた。
「何も、しないで…お願い…」
「残念ね。野垂れ死にたいなら場所を選ぶべきだったわ。ここはアタシの国。アタシの世界で簡単に死ねると思わないことね」
最悪だ。
最低だ。
私はまだ、地獄から抜け出せない。
祝!!!
1周年!!!
応援され、支持され、愛され続け、皆様方のおかげで百合チートはここまでやってきました!!!
まだまだ先の最終回に向け、百合チートはこれからも駆け上がって行きます!!!
なのでどうか、末永くお付き合いくださいませ!!!
Twitterにて1周年特別イラスト(AI作成)を掲載しておりますので、どうぞご覧ください!
次回は王都を飛び出て愛しい仲間のもとへ!
そして待ち受ける新たな出逢いとは…
お楽しみに!!
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