2-4.リリーストームグループ【スレッド:服飾部門】
「しっかし、こうして出向かなきゃみんなに会えなくなるなんて。裕福になるってのも考えものだな」
「みんな気を遣ってくれているんですよ。アリスもリリアも大きくなりましたし」
今、私たちはそれぞれが家を買って自分たちで生活している。
前は前でワイワイ楽しかったんだけどな。
すぐに会えるし寂しいってことは無いけど、まあなんだ。
「物足りなさはあるよな」
「私一人じゃ不満だとでも?それは他の女性と同衾しますよね。フンッ」
「いててて。ほっぺつねらんといて。愛してる超愛してるよぉ。アルティしか勝たんて〜」
「わかればいいんです」
「いいのですけど、人の店の前でイチャつかないでもらえますか?」
なんとも呆れた顔で店の主人が応対する。
リリーストームグループ服飾部門、スレッドの総支配人。
シャルロット=リープことシャーリーその人だ。
「見て!シャーリー様よ!」
「きゃーシャーリー様ぁ!」
「今日もステキー!」
姿を見せるなり黄色い声を浴びるシャーリーは、沸き上がる女の子たちに向けて手を振った。
「相変わらずの人気だね」
「リコリスさんには負けますよ」
「そうだろうそうだろう」
私も女の子に向かって微笑んでみる。
すると覇王色か?ってくらい卒倒した。
「だから店の前で騒ぎは起こさないでくださいと」
「あとでシバいておきます」
「悪いね魅力がありすぎて」
色めき立つ人込みの中、私たちは応接室へと案内された。
稀代のファッションデザイナー。
世間で呼ばれるシャーリーの通り名がそれだ。
気鋭なデザインでありながら、けして奇抜でなく、万人に愛される服を作ることで知られ、シャーリーの手掛けた服を着ることは、今では一種のステータスにもなっている。
また普段着から寝間着、式服、礼服のフォーマル、あらゆる分野を取り揃えているため客層も厚い。
シャーリーの他、腕の良い職人たちが腕を振るっている。
「リコリスちゃん!アルティちゃん!」
「こんにちはアイファさん」
彼女、アイファさんもその一人。
以前ちょっと縁が合って、人手不足だからとリリーストームに勧誘した服飾師だ。
服飾の腕に関しては、シャーリーの次に評判が良いことで有名だ。
「今日も可愛いですねぇ、ヘヘヘ♡今度デートしましょうね♡」
「フフッ、私でよければ喜んで。そうだ、この前はありがとう。薬を送ってもらったってお爺ちゃんとお婆ちゃんから聞いたの」
「エラルドさん、前に畑仕事で腰痛めたって聞いたから。たまには里帰りして労ってあげなきゃダメですよ?」
「うん、ありがとう」
こと、スレッドの人気は服飾だけじゃない。
ここまで服の良さが強調されているのは、スレッドが抱えるモデルたちによる宣伝活動が大きく関わっている。
容姿端麗なモデルスタッフたちが服を着用し宣伝することで、商品としての価値が何倍にも高まっているのだ。
「ふぅ、今日の撮影もハードだったでござるなエルザ氏」
「仕事とあればこれくらいはなんてことありません」
「よぉウル、エルザ」
「主殿!しばらくでござる!」
「お久しぶりでございます」
スタイリッシュに決めて写真撮影から帰ってきたウルと、同じく幻獣のエルザことエルザドーラ。
リリーストームを大陸に展開したのはいいけど、どうにも人員不足は否めなくて、何人かの幻獣と契約して今こうなってる。
本来亜空でしか生きられない幻獣がこっちで活動出来てるのは、リルムたちと同じように神のルールをぶっちぎった結果だ。
もう一々めんどくさいから好きにしろ、とは最高神ゼウス並びに法の神テミスの言葉である。
「写真集見たよ。やっぱ美人だなお前たち」
「お褒めいただき光栄です」
「シャーリー殿には及ばぬでござるがな」
「恥ずかしい…」
ウルやエルザ、その他多くのモデルの頂点でに立ち、絶大な支持を得ているのが、何を隠そうシャーリーだ。
「本職は服飾なのですが…」
「可愛けりゃよし!てか、どちゃくそ美人だから当然じゃない?」
私だって写真集買ったもん。三冊。
「あ、写真集にサインちょーだい。愛するリコリスちゃんへって書いてね」
「リコリスさんへの愛を表現するにはサインでは足りなくなってしまいますよ」
「じゃあ、好きなとこに書いて♡」
おへそチラッ。
「いいのですか?こんなところで発情させても」
「どんと来――――――――」
「ン゛ン!!」
「なーんちゃって今仕事中だもんね!私ったらお仕事の邪魔してうっかりやさんっ♡てへペロ♡」
「公私は分けて然るべきです。シャーリー、先月の売上報告を」
「こちらに」
「ヴァネッサさんからテレサクロームへの出店を希望されていた件はどうなっていますか?」
「先日転移門で現地へ伺い打ち合わせを。上層、中層、下層とニーズに合わせた衣類を取り揃え、アナザーワールドと提携して宝飾品、貴金属類を卸していただく予定です。店舗はすでに確保、スタッフも向こうで選別していただけるとのことですので、再来月…いえ来月にはオープンが可能かと」
いや有能だねぇ。
シゴデキハイスペ美人しゅきンゴなぁ。
「把握しました。しかしシャーリー、あなたちゃんと休んでいますか?」
「それなりに」
「休日に店に籠もって服を仕立てることは休みとは言いませんよ」
「楽しんでやっているので、私にとっては休みです」
シャーリーってばちょっとワーカホリック気味なんだよな。
趣味と実益が両立されてるわけだから、こっちがとやかく言うことじゃ無いにしても、無理して倒れちゃ元も子もない。
ったく、しょーがねーな。
「シャーリー」
「はい?むぐっ…」
ハッハッハ、無理やりハグしてやったぜ。
私のおっぱいでも堪能してリラックスするがいい。
「頑張ってるお前が好きだけどさ、休めるときは休んどけ。リコリスさんの命令だぞ」
「は、い…」
「ん、いい子だ」
頭撫で撫で。
シャーリーは一瞬で眠りに落ちてしまった。
「こんな美人が寝顔可愛いの反則じゃない?…………寝てるときに手出すのって非人道的かな?」
「そうですね。恥が多すぎて今さら感があるので何とも言い難いですね」
「ハッハッハそりゃそうだ…って誰が恥晒しの人でなしじゃ!!」
「自覚はあるようで何よりです。ウル、エルザ、あとはお任せします」
「了解でござる」
「かしこまりました」
なんか解せんのだが…
シャーリーも寝ちゃったし次行くか。
「ぬうう…ぬううう!!ぬぁぁぁぁ!!なんでじゃ!!なんでじゃあぁぁぁ!!」
「クフフ、まいどあり」
百合の楽園が誇る問題児たちのとこへ。
ここまでで推しは登場しましたか?
次回の登場は彼女たち!
どうかお楽しみに!