127.とんでもねえおあずけだ
今回は間話です!
ゆったりとお楽しみください!
とまあ、そんなこんなで決闘は終幕して、転移門設置の件は明日再度行われることとなった。
レオナと別れた私たちは、酒場にてアウラたちと合流。
遅ればせながら再会を祝して杯を掲げた。
「ではでは!乾杯〜!」
「KP〜!」
「んぐッ、んぐッ…っは!うめェ〜!」
「タダ酒って最高〜!」
「なんでこっちが奢る話で進んでんのよ」
「硬いこと言いっこ無しですよドロシー様〜」
ぶ厚い骨付きステーキを豪快にがぶり。
ワイルドな旨味がたまんない。
鮮烈な肉の味が口いっぱいに広がったところへ、果物と香辛料の香りがするエールをぐいっ。
これが至福じゃないならいったい何だ。
「むしゃむしゃ…んで、なんでみんなはサヴァーラニアにいるの?」
「ああ。じつは」
「旅の途中で路銀が尽きちゃって。何か手頃な仕事でもないかと冒険者ギルドに寄ってたところだったんですよ。そしたらドロシー様たちにお会いしたわけです」
「そんなの連絡くれれば私が用立てたのに」
「我々の贖罪に迷惑をかけるわけにはいかない」
水くさいこと言うなぁ。
贖罪も何も、もう誰も気にしてないってのに。
「ガッガッガッ!お肉おいしー!」
「おかわりー!お肉山盛りでー!」
「そんなに急いで食べないの、もう。ほら口の周りが汚れてるじゃない」
「んーお姉拭いて〜」
「私も〜」
「しょうがないわね」
ん〜ママみが強い。
「幸せそうだな。ドロシー様も、みんなも」
「当たり前だろ?私の女なんだから」
「そーゆーこと。ねっ、ドロちぃのちっちゃいときの話聴かせてよ。何かあるっしょ?おもしろ恥ずかしい話とか」
「モナも聴きたーい♡」
「いいですよー。あれはドロシー様が10歳の頃、森に生えてたキノコを股に挟む謎の遊びにハマっていたときのこと」
「クルーエルぅぅぅ?!!待って何言おうとしてる?!!いやもうほとんど言ったけど!!そこから落ちる品位だってあるのよ?!!」
「少しでも皇族らしくあるためにとか言って、一人称がわたくしだった時期あったよな?」
「あぁ〜。アタイだったこともありますよ〜」
「そうなの?我ちゃんだったのは聞いたことあるけど」
「ぬぅああああ!!やめてやめてあどけない頃の記憶をほじくり返さないでぇ!!アウラあんたも止めてよ!!」
「ドロシー様は昔よく、おやすみのキスをせがんできましたね」
「あーありましたね。キスされないと眠れないの〜って」
「何それめっかわ」
「やぁめぇろぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
フッフッフ、かわちかわち♡
ドロシーは甘えんぼさんだな、もうっ♡
それから、エルフの同胞を見つける旅についても話を聴いた。
発見出来ているのはまだ全体の一割程度。
さすがに百年も経てば、皆いろいろなところに移り住んでいるらしい。
その中には今の生活に満足し説得に応じない者もいたとか。
百年の怨恨の根深さは、一朝一夕で解決するものじゃない。
しかしアウラたちは説き続けた。
それもまた自分たちの贖罪なのだと。
エルフたちが心を一つにあの森に集うのも、そう遠くはない未来なのかもしれない。
「すまない。すっかりご馳走になってしまった」
「気にすんなって。魂で繋がった仲だろ。あ、身体で繋がりたくなったら言ってね♡いつでもどこでもウェルカーム♡」
「クスッ、考えておこう」
「おっ、前向きな反応いいね〜♡全員纏めてエロフにしてやるぜ♡」
「ちゃんとおっさんじゃん姫」
うっせ。
私はそれでも可愛いからいいんだよ。
「これからどうするの?」
「しばらくはサヴァーラニアを回って、その後はラムールの方を訪れようと思います。気掛かりなこともありますし」
「気掛かり?」
「サヴァーラニアとラムールの国境辺りに、違法奴隷を取り扱う集団のねぐらがあるという情報を掴みました。我々の同胞が囚われている可能性も拭いきれないので、一度探ってみようかと」
「違法奴隷の…」
それって…
「どうかしたか、リコリス?」
「ん?ああ…一人ずつ抱こうかみんないっぺんに抱こうか迷ってた〜♡てへっ♡」
「前より女好きが加速してませんか?」
「何言ってんだクルーエル!私はいつだって全速力で女の子を愛してるとも!ねーみーんなっ♡」
「はやく帰ってお風呂〜」
「寒いものね。あんたたちも今日は宿を取りなさいよ。出発は明日でもいいでしょ」
「ご厚意に甘えまーす!」
「寒いって気温の話だよね?!私がスベったわけじゃないよね?!ねぇ?!なんでみんな置いてくの?!おーい!」
え〜…ほんとにスルーするじゃん…
けど悔しいかな、おざなりに扱われておいしいと思ってる私がいる。
私って結構Mっ気あるよなぁ。
ま、それはそれとしてだ。
「行くか」
人が多く行き交う通りの真ん中で音も無く消え、私はとある場所へと向かった。
「ふぅ」
「夜分に失礼お嬢さんむぐっ」
「きゃあああ?!!」
「ふぎぬ!!」
そりゃいきなり部屋に転移してきた私が言えたことじゃないけど…
「いきなり顔面パンチはさすがに酷いと思うんだ…」
「人の股ぐらに転移してきたことに対する当然の報いでしょ…。それよりどうしたの?こんな時間に」
「相変わらず処理してないんだからエッチだよねレオナって」
「本!!題!!」
「訊きたいことあってさ。国内で違法奴隷を取り扱ってる集団の居場所、知ってるやつ全部教えて」
レオナは途端に真面目な顔をした。
「訊いてどうするの?」
「潰す。って言いたいところだけど、ここはレオナの国だからね。とりあえずは暴力沙汰はしないよ。ただ教えてくれるだけでいい。当然知ってるでしょ?あの暗殺者ギルドの根城を知ってたくらいだもんね」
サヴァーラニアの、延いては獣帝の情報網は尋常じゃない。
それはすでに証明されている。
違法奴隷を扱う組織のねぐらなんて、とっくに把握しているだろう。
「……リコリスさんは、とことん厄介だよね」
けどレオナにはそれを検挙しない理由がある。
そもそもこの世界に於いて、奴隷という概念そのものは一般的だ。
奴隷制度を嫌厭し認可していない国はあっても、制度自体は悪ではないためだ。
金銭的な理由で堕ちざるを得ないパターンの借金奴隷に、何かしらの罪を犯したパターンの犯罪奴隷。
それらは労力や奉仕活動に充てがわれることで、借金の返済や罪を雪ぐことになるわけだけど、違法奴隷はその限りじゃない。
「わざわざ言葉にしないだけ優しいと思ってよ」
違法奴隷とは、不当な人身売買によって身分を奴隷に堕とされた人たちのことを指す。
当然行為自体が犯罪だ。売ることも、買うことも。
そんな不埒な行為をレオナやヴィルが見逃すわけないし、その気ならとっくに撲滅してる。
けど、そうしない。
その理由が、人身売買による経済の循環だ。
"人は売れる"
需要と供給と言えばいいのか、何を目的にしてもそこら中で必要とされる。
そうなると、如何に違法な売買でも国は手を出しづらくなる。
経済を回すこと自体は、国を潤すことに直結するためだ。
ことサヴァーラニアにの国柄に基づいて言えば、弱者に価値は無く、金に変わるだけマシという考えも無くはないだろう。
それを是とするわけでないにせよ、まともな言い方をするなら必要悪と言えなくもない。
「私たちの仲だろ?お互い腹の探り合いは無しにしよう。私は人身売買を嫌悪してるから、それを潰そうとしてるわけじゃない。ただ用があるんだ」
「用?」
「探してる人たちがいる。その人たちがそこにいるのか、無事なのか何もわからない。でも知りたい。知らなきゃいけない。だからお願い、レオナ」
「それはリコリスさんの女のため?」
「いや、愛する女のためだ」
「敵わないな、リコリスさんには」
当然だろ、って私は笑った。
「私は最強で最高の女だからな」
レオナはテーブルの引き出しからスクロールを取り出した。
「ここには現在把握している奴隷商が記載されてる。けど、くれぐれも」
「わかってる。迷惑かけることはしないよ。ありがとレオナ」
「ん…ダメ」
お礼にキスしようとしたら止められた。
「ダメなの?」
「夜に押しかけられて、その上キスなんかされたら…発情しちゃう」
「さ、させてェ〜…」
「クスクス、また今度ね。次はめいっぱい愛して」
寝間着を脱がしてやりたい衝動に打ち勝って。
私は後ろ髪を引かれつつ夜の闇へと飛んだ。
まったく、とんでもねえおあずけだ。
レオナはまったく処理してないしノーパン派です。
なんやかんやトップレベルにエッチです。
僭越ながら応援していただければ幸いですm(__)m
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