121.世界は白い雪に包まれて
新章、獣逢梦人編開幕です!
百合の楽園の新しい物語をお楽しみください!
わちゃわちゃとクリスマスが終わったかと思えば、しんしんと降り積もった雪に世界は白く染まり、あっという間に年が明けた。
おせち料理にお雑煮に舌鼓を打ちつつ、お年玉という文化を子どもたちに教えたり、新年の挨拶回りに駆け回ったり。
そんなことをしているうち、レオナやクロエちゃん、ミオさんにメロシーさんたちも帰路に着いた。
百合の楽園……というか私は、これからしばらくは公務としてサヴァーラニアとリーテュエルを訪問しなくちゃいけない。
緋色の花園の転移門の開通を目的にだ。
降り続けた雪が止み、さてそろそろ出発するかという矢先のこと。
「私も!!!行きます!!!」
「家で!!!寝てろぉ!!!」
今から殴り合うんか?って剣幕の私とアルティから、今回の物語は始まる。
「アルティが?!!」
「嫁が?!!」
「「「妊娠〜〜〜〜?!!!!!」」」
さすがにみんな驚いた。
いや、私の方が驚いたよ。
「そりゃ毎日毎日ヤることヤってたら孕むわよ」
ドロシーのエグい角度の突っ込みが刺さる刺さる。
ともあれみんな喜んでくれて、シャーリーなんか急いで服を作らなくてはなんて早くに浮かれてた。
私としてはね、やっぱり妊婦さんには安静にしててほしいわけですよ。
過保護がよろしくないにしても。
あったかい家でクラシックでも聞きながら、まったりゆったりとしててほしいんです。
それをこの妻は。
「あなたを放っておいたら何をしでかすかわかったものでないので私もついて行きます」
とか言うんだもん。
ハッハッハ。
「家にいろ!!!」
「絶対ついて行きます!!!」
「つわりがつらいだろうから休んでろっつってんの!!!」
「「ぐぬぬぬぬぬ!!!」」
「なんでケンカするのよおめでたいのに」
「だってアルティが!」
「リコが!」
「「あぁ?!!」」
もうこの調子。ずっと。
こっちは何ならクローバーに引っ込んでてほしいまであるのに。
向こうなら面倒を見てくれる人たちがいるし。
「二人とも落ち着くのじゃ。腹の子に響く」
「そ、そうですよ…」
「お互いがお互いを思い合ってるというだけのことですからね。実のところ」
「冬の旅路だからって、リコリスがいれば快適なことは請け合いだし。逆にアルティが家にいても、何かあればリコリスは一瞬で帰ってこられるし」
「めんどくさ。拗らせ夫婦じゃん」
「誰が拗らせ夫婦じゃ」
「とにかく、私はついて行きますよ。特に今回は場所が場所です。共にするメンバーが多い分には、あの二人も心強いでしょう」
「それは、まあ…」
それを言われるとつらいと、私は頬を搔いた。
今回の訪問の目的は二つある。
サヴァーラニア帝都に転移門を設置すること。
それともう一つ。
――――――――
「マリア、ジャンヌ。私はサヴァーラニアに行く」
「サヴァーラニアに…」
「…………」
「二人はどうする?」
二人はかつて親に捨てられ奴隷になった。
間違いなく二人の心に深い傷を負わせた原因だ。
だからこそ私はサヴァーラニアを訪れようとしなかったし、極力二人の前でそれを話題に出すこともしなかった。
けど私がサヴァーラニアを訪問するってなるとそうもいかない。
二人にとっても、私にとっても避けられない問題だ。
「もちろん無理強いはしない。ついて来たくないなら王都で待っててくれればいい。でも二人がお父さんやお母さんに会いたいっていうなら、私はそれを後押しするつもり」
「会いたい…でも…」
「怖いです…」
物語は、あくまで主観でしか紡がれない。
だから何が本当なのかは自分で確かめないとわからない。
知ることが勇気なら、知らないことも勇気だって私は思う。
「どうしたいかは自分たちで決めるんだよ。出発まではまだあるから、ゆっくりと――――――――」
「い、行きたい!」
「私たちも一緒に!」
「マリア、ジャンヌ…」
「怖い、けど…でも、やっぱりお父さんとお母さんに会いたい!会って…ちゃんと話したい!」
「お願いしますお姉ちゃん!」
「……わかった。一緒に行こう」
こうして、二人もサヴァーラニアの訪問に同行することとなった。
――――――――
「あの子たちは私たちみんなの妹です。それを妊娠したからと放任するような薄情者に成り下がるのは御免です」
「そりゃそうかもだけどさ…」
「あー♡モナいいこと思いついたー♡じゃんけんで行く人決めたらいいんだよー♡」
公務だっつってんだろ。
それをじゃんけんで決めるのは…いやでも、このままじゃ埒が明かないしな。
「わかったよ。じゃあスキル無しの一発勝負な。みんなで私とじゃんけんして、私に勝った奴だけ同行。それでいいだろ」
「些か乱暴な決め方ではありますが。わかりました」
「そんじゃ行くぞー。じゃーんけーん――――――――」
――――――――
――――
――
「ぬぐぐぐぐ!」
「やったーモナ勝ち〜♡」
厳正なるじゃんけんの結果、サヴァーラニアに訪問するのは私、マリア、ジャンヌの他、ドロシー、ルウリ、モナとなった。
「アリスはおかーさんとおるすばんするの」
「うう、アリス。可愛い私の娘。ママ無しでもたくましく生きていきましょうね」
「うんー!」
「私死んだんか?」
「花婿さん花婿さん、私も行くよ!」
「私も」
「トト、ゲイル。まあお前たちはドロシーのお仕えだしな」
契約者が私ってだけで。
「それに比べて…お前たちは…」
「リルム寒いのいやー」
「寒いときは家に籠もるに限る」
「出たくないのでございます」
「犬は丸くなるのでござる」
「オイラ雪苦手だ」
「この従魔どもめ」
私と一緒にいたいからってルール捻じ曲げてやったんだろうがよぉ。
なのに誰一人ついて来ないの何?
「くそっ、私の人望が薄すぎる…。美貌はカンストしてるのに」
「そういうとこだと思うわよ」
「まあそんなわけで留守は頼んだ」
「何気初くない?全員で旅しないって」
「居残り組は寂しいだろ私がいなくて。今のうちにチューしとくか?ん?♡ほらおいで♡」
「されたらされたで照れるザコのくせに」
それは言っちゃダメ!
「心配させたら怒りますからね」
「おう。たまに様子を見に帰ってくるから」
「待っています。マリア、ジャンヌ」
「うん!」
「はい!」
「離れていても、あなたたちを思っていますからね」
頭を撫でられ二人は頬を赤くした。
「シャーリー。アタシがいない間、アンドレアとの打ち合わせを頼みたいんだけどいいかしら」
「お任せを」
「姫〜わざわざ雪酷い中行かなくても、瞬間移動でパッパ行かん〜?」
「何のためにお前にラジアータ号を雪道仕様に改造してもらったと思ってんだ。旅は道中も楽しむ派なんだよ私は」
道中どんな出逢いがあるかわかったもんじゃないですしねぇ、へへへ♡
「もしかしたら水着の美女が一個小隊でコサックしながら求愛してくるかもしれないし〜♡」
「無いわよ」
「ねぇよ」
「無い…ですよ」
「○ね」
「誰だ最後に辛辣な物言いした奴!!」
ま、なにはともあれ。
出発出発〜。
「じゃーな。浮気すんなよお前ら」
「自分に言い聞かせてください。気を付けて。行ってらっしゃい」
「行ってきます!」
みんなに見送られながら、私はラジアータ号を発進させた。
広大にして雄大な獣人の国。
サヴァーラニア獣帝国へと。
《プロフィール》
名前:リコリス=ラプラスハート=クローバー
種族:半神半人
性別:女性
年齢:19歳
職業:鳳凰級冒険者
所属:百合の楽園
称号:ドラグーン王国侯爵、アイナモアナ公国名誉子爵、ディガーディアー名誉子爵、竜殺し、夜会の主、神への叛逆者
加護:【自由神の加護】【遊戯神の加護】【法神の加護】【精霊王の加護】【竜王の加護】
アンリミテッドスキル
【百合の王姫】【創造竜の魔法】
名前:アルティ=ラプラスハート=クローバー
種族:人間
性別:女性
年齢:18歳
職業:魔狼級冒険者
所属:百合の楽園
称号:銀の大賢者
加護:【魔術神の加護】【精霊王の加護】【竜王の加護】
ユニークスキル
【七竜魔法】
アンリミテッドスキル
【妃竜の剣】
名前:ドロシー(真名:ドゥ=ラ=メール=ロストアイ)
種族:ハーフエルフ
性別:女性
年齢:130歳
職業:精霊級冒険者、薬師
所属:百合の楽園
称号:亡国の皇女、森羅の継承者
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スキル
【調合】【採取】【交渉術】【商人】【金の恵み】【念話】
エクストラスキル
【精霊魔法】【月魔法】【眷属召喚】【状態異常無効】
名前:マリア
種族:獣人族
性別:女性
年齢:10歳
職業:妖精級冒険者
所属:百合の楽園
称号:竜殺し
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スキル
【剣術】【直感】【言語理解】【念話】
エクストラスキル
【爆炎魔法】【電光石火】【天駆】【神速】【状態異常無効】
名前:ジャンヌ
種族:獣人族
性別:女性
年齢:10歳
職業:妖精級冒険者
所属:百合の楽園
称号:竜殺し
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スキル
【執筆】【描写】【言語理解】【念話】
エクストラスキル
【大海魔法】【術理】【並列思考】【見えざる手】【状態異常無効】
名前:テルナ=ローグ=ブラッドメアリー
種族:吸血鬼
性別:女性
年齢:2000歳
職業:神竜級冒険者
所属:百合の楽園
称号:真紅の女王、血の福音、意思ある災厄
加護:【最高神の加護】【精霊王の加護】【竜王の加護】
スキル
【鑑定】【鑑定阻害】【隠蔽】他、現存する全てのスキル
エクストラスキル
【召喚魔法】
ユニークスキル
【全知全能】【無限】【紅蓮魔法】
名前:シャーリー(シャルロット=リープ)
種族:人間
性別:女性
年齢:25歳
職業:子鬼級冒険者、裁縫師
所属:百合の楽園
称号:虚ろの影
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スキル
【暗殺術】【短刀術】【調合】【器用】【蹴撃】【投擲】【針使い】【操糸】【暗視】【詐欺】【窃盗】【姦淫】【礼儀作法】【苦痛耐性】【鑑定阻害】【念話】
エクストラスキル
【影魔法】【状態異常無効】
名前:エヴァ=ベリーディース
種族:半魔人
性別:女性
年齢:18歳
職業:悪魔級冒険者
所属:百合の楽園
称号:奈落の大賢者
加護:【混沌神の加護】【精霊王の加護】【竜王の加護】
スキル
【念話】他、取り込んだ魔物のスキル
エクストラスキル
【状態異常無効】
ユニークスキル
【混沌】【重力魔法】【混沌付与魔術】
名前:ルウリ=クラウチ=ディガーディアー
種族:自動人形
性別:女性
年齢:19歳
職業:悪魔級冒険者、錬金術師
所属:百合の楽園
称号:錬金術師
加護:【機械神の加護】【精霊王の加護】【竜王の加護】
スキル
【射撃】【精密動作】【解析】【念話】
エクストラスキル
【錬金術】【人形師】【魔力装填】【魔力変質】【状態異常無効】
名前:アリス=ラプラスハート=クローバー
種族:精霊竜王
性別:女性
年齢:0歳
職業:無し
所属:百合の楽園
称号:精霊王、竜王
加護:【精霊王の庇護】【竜王の庇護】
アンリミテッドスキル
【精霊王の輝冠】【竜王の黒逆鱗】
名前:ユウカ=モノクロリス
種族:幽霊
性別:女性
年齢:500歳
職業:粘体級冒険者、死霊術師
所属:百合の楽園
称号:時の迷い子
加護:無し
スキル
【念話】
エクストラスキル
【状態異常無効】
ユニークスキル
【死霊魔法】【反転】
名前:モナ=エクスヴァルヴァ=クトゥリス
種族:悪魔
性別:女性
年齢:2000歳
職業:粘体級冒険者
所属:百合の楽園
称号:夢幻の欲望王、性喰者、処女殺し
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
エクストラスキル
【眷属召喚】【状態異常無効】
ユニークスキル
【邪淫】【運命操作】【夢幻世界】
《従魔》
名前:リルム
種族:幻獣種・粘魔竜姫ベルゼビュートスライムロード
契約者:リコリス=ラプラスハート
職業:粘体級冒険者
所属:百合の楽園
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スペリオルスキル
【魔竜の暴食】
名前:シロン
種族:幻獣種・眠兎竜姫ベルフェゴールラビットロード
契約者:リコリス=ラプラスハート
職業:粘体級冒険者
所属:百合の楽園
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スペリオルスキル
【兎竜の怠惰】
名前:ルドナ
種族:幻獣種・空鷹竜姫マモンホークロード
契約者:リコリス=ラプラスハート
職業:粘体級冒険者
所属:百合の楽園
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スペリオルスキル
【鷹竜の強欲】
名前:ウル
種族:幻獣種・黒狼竜姫ルシファーウルフロード
契約者:リコリス=ラプラスハート
職業:粘体級冒険者
所属:百合の楽園
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スペリオルスキル
【狼竜の傲慢】
名前:ゲイル
種族:幻獣種・翠甲竜姫アバドンビートルロード
契約者:リコリス=ラプラスハート
職業:粘体級冒険者
所属:百合の楽園
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スペリオルスキル
【甲竜の破滅】
名前:トト
種族:幻獣種・月霊竜姫レヴィアムーンエレメンタルロード
契約者:リコリス=ラプラスハート
職業:粘体級冒険者
所属:百合の楽園
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スペリオルスキル
【霊竜の嫉妬】
名前:プラン
種族:幻獣種・冀聖竜姫サタナエルドラゴンロード
契約者:リコリス=ラプラスハート
職業:粘体級冒険者
所属:百合の楽園
加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】
スペリオルスキル
【聖竜の憤怒】