120.クリスマスの奇跡(Extra Stage)
サンタクロース。
クリスマスの夜にやって来て、子どもの枕元にこっそりとプレゼントを置いて帰る赤服の老人のことを指すらしい。
異世界の文化は奇妙で奇天烈ですね。
ですが、リコがそんな文化を信仰しているなら乗ってあげましょう。
何故なら私はリコの妻だから。
「仕方のない人ですね、まったく」
赤服の衣装に身を包み、プレゼントを入れた袋を携え、煙突……いや、同じ屋敷なので普通に部屋の扉を開けます。
すやすやと可愛らしく眠るリコ…フフフ、こんなに近くにサンタが来ているとも知らず。
この靴下に入れればいいんですよね?
しかし大きいですね…大人五人は余裕で入るサイズです。
「どんなプレゼントをもらう想定なんですか…」
私髪飾りくらいしか用意していませんよ。
「さて、プレゼントを置いて…よし。あとはこのまま気付かれずに外へ…」
「ふにゃ…」
「?!!」
「むにゃむにゃ…」
え?!
リコ、起き…?!
なんでこのタイミングで?!!
「ほぇ?」
「あ、違…これはその、ですね…」
「ぽぇあ…」
「リ、リコ…?」
「…………サ」
「へ?」
「サンタさんだぁ!!!」
嘘でしょ私だって気付いてないんですか?!!
「あ、あの!ほ、本当にサンタさんですか?!」
ど、どうしましょう…
私だと露呈して夢を壊すわけには…
「そ、そうです…じゃよ…」
「わぁーーーー!」
すごい目がキラッキラしてますね!
可愛い!!
じゃなくて、ほんとなんで気付かないんですかこの人。
「あっ、あにょっ…!ううう、緊張で口回んにゃい…」
可愛いの化身?!!
あなたいつもそんなじゃないですよね?!!
「い、い、いつもプレゼントありがとうございます!サンタさんに会えて感激です!」
「ほ、ホッホッホ…そうです、かい。今年もリコは…じゃない!!リコリスちゃんはいい子にしていたからね。プレゼントを持ってきました、のじゃよ」
「わぁぁぁぁーーーー!」
どこまで純粋なんですか普段は欲望の権化のくせに。
しかし長い付き合いなのに私だとバレないのはなんとなく腹が立ちますね。
「夢だったんです!サンタさんとお話するの!ううう、みんなにも教えてあげなくちゃ!」
「そ、それはまた今度に。私…ワシもすぐに行かなくてはいけないからね」
「そうですよね…サンタさんは世界中の子どもにプレゼントを運ばなきゃいけないから…」
「そういうことじゃ」
世界中…え?一人でですか?
サンタクロースの移動速度光越えてませんか?
「お話出来て嬉しかったです!サンタさん、ありがとうございました!来年もいい子にしてます!だから、あの…」
「わかっておるとも。また来よう。来年も、その次の年もずっと」
「はいっ!」
「……リコリスちゃんは毎日幸せかな?」
「めっちゃ幸せです!たくさんの大好きがいっぱいだから!」
「そうかい」
消えるときくらいは魔法で。
リコの満面の笑みを焼き付け、私はその場から去った。
本当に可愛い人ですよ、あなたは。
翌朝。
「聴いて聴いて!!昨日サンタさんに会ったんだよ!!」
「あっそ。よかったわね」
「マジなんだって!ほら、プレゼントももらったし!」
「はいはい」
「もー本当だもん!本当にサンタさんいたもん!嘘じゃないもん!」
信じてもらおうとするリコがまた可愛くて、私は頬を綻ばせた。
「あーアルティニヤニヤしてる!さては信じてないな!」
「信じてますよ。いつもステキなあなたが、より一層可愛いんですから」
「お、おお…?」
「さあ、デートに出掛けましょう。今日はめいっぱい楽しみますよ」
王都の片隅の。
小さくてあたたかい聖なる話。
そして、これから起こる奇跡のちょっとだけ前の話だ。
これにてクリスマス回は終了!!
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