118.クリスマスの奇跡(5)
そろそろクリスマス回も終盤!
まだまだイチャイチャしていきます!
デートしたり、ご飯したり、とても健全とは言えないようなことをしたり。
十人十色なクリスマスを過ごす中。
「てぇりゃあ!」
マリアは猛々しく迷宮に吼えていた。
謹慎明けで張り切ってるのもあるんだろうか、強いこと速いこと。
低階層じゃ錆落としにもなってない。
「どう?楽しい?」
「お姉ちゃんと一緒なのは楽しいけど、迷宮はあんまり…」
「だろうね」
物足りなそうな顔してる。
それもマリアが強すぎるんだよね。
冒険者ランクこそ低いけど、マリアの実力は妥当に見積もれば魔狼級…いや、鳳凰級の下位には相当するんじゃないかな。
ミオさんと同じ救世一刀流に、私の剣のニュアンスを咥えた剣。
アルティを師に仰いだ魔法のセンス。
それらは到底妖精級に収まる器じゃなかった。
「冒険者ランクなんてさっさと上げちゃえばいいのに。そしたらこの先にも挑戦出来るよ」
迷宮は冒険者の腕試しの場だ。
ランクに応じて挑戦可能な階層も変化する。
マリアが迷宮を楽しもうと思ったら、それが良いと思うんだけどなぁ。
「うーん、必要になったらでいいかなぁ」
「なんで?」
「お姉ちゃんたちより上のランクになったら、お姉ちゃんたちが泣いちゃうでしょ?」
「こ、こいつ〜〜〜〜!」
「キャハハハ♡」
このっ!小悪魔!メスガキ!
頭わしゃわしゃしてやる!
「いつから生意気なこと言うようになったんだこの〜!でも好き〜!生意気な妹好き〜!性癖に刺さる〜!」
「キャー♡」
「あーこうやって妹は成長するんだよなぁ〜。お姉ちゃん寂しいよぉ〜」
「お姉ちゃんは私たちが大人になるの嫌?」
「嫌じゃないよ〜すくすく育ってくれ〜。でもお姉ちゃんのことはずっと好きでいて〜!」
「うんっ、お姉ちゃ……お姉っ」
「お、おねッ、お姉?!!」
へっ?!
お母さんからおかんに変わる的なあれか?!!
「な、なな、なんで?!なんで急になの?マリア?!」
「ニシシ、ちょっとだけ大人になってみたよ」
っはぁぁぁ〜…
そんなに駆け足で大人にならなくてもいいんだよぉ〜…
でもお姉か…アリよりのアリ〜!!
「ずっとずーっと大好きだよ、お姉」
――――――――
「リコリスさん、この服はいかがですか?」
「うん、すっげー可愛いよ」
「ではこっちの服は!」
「これもいいね」
「ステキですリコリスさん!」
「おぉ…」
たぶん、全員とデートしてる中でシャーリーとの時間が一番疲れてる。
楽しくないのかって?いや、そんなわけないだろ。
けどね…朝からずーーーーっと着せ替え人形みたいになってるもんでね。
「どんな服を着せても似合ってしまうリコリスさん…ああ、至福のひとときです」
「ハハハ…」
遠慮しがちだったんだと、今になってわかった。
先日の件でそれが解消されたシャーリーは、これまでに自分が作った服をこれでもかと私にあてがった。
普段着からフォーマルなもの、ロリ系の甘めなドレス、延いてはメイド服だの騎士服だののコスプレ。
それらを一枚一枚ルウリ作のカメラで収めていく。
かれこれ百着は着たんじゃないか。
「にしても、やっぱどれも出来がいいね。さすがシャーリー。この着心地を考えると、もうシャーリーが作ってくれた服以外は着れないなぁ」
「常にリコリスさんは私に包まれているといっても過言ではないということですね。恐悦至極です」
「まあ実際そのとおりなんだけど途端にIQが低くなったな」
「改めて知っただけです。花を彩る悦びを」
シャーリーは頬に手を添えると、いきなり唇を重ねてきた。
「なに発情してんだよ」
「酷いですね。あなたがそれを言うんですか?」
「言わせてえんだよ。その口に。我慢出来ませんってさ」
「あなたが望むなら裸で跪くことも、犬のようにはしたなく息を荒げることもしますよ」
「品性の無いシャーリーも可愛いだろうな」
「では、じっくりと堪能してください。じっくりと…」
堪能するとも。じっくりと。
ああ、でも程々にしないとな。
せっかくシャーリーが作ってくれた服を汚しちゃ忍びないから。
――――――――
「つくづく人間を辞めたのう、そなた」
お酒を酌み交わしながら、ふと師匠が吐いた台詞がそれだ。
「私は私のつもりなんだけどね」
自覚があるから可笑しくなって、ブランデーを煽り酒気が混じった息をつく。
「ほぼ無限の魔力に既存の概念を超越した魔法…地位を高め財を築き…数多の女を侍らせ……クハハ、この一年足らずは見物じゃったよ。そなたはどこまで行くのか、と」
「どこまででも行くよ。だって私だもん。師匠だってそんな私が好きだろ?」
「否定はせぬ。じゃが…」
「どうかした師匠?」
「それじゃ」
どれじゃ?
「はっきりと言ってしまうが、そなたは……ああいや、今になっての話でもないのじゃがな。元々は無理やり関係に名称を与えたに過ぎぬのじゃから」
「なんだなんだ?」
「その、妾とそなたの師匠と弟子という間柄なんじゃが…そなたはとっくに妾と同格…いや、はっきりと妾よりも上の存在じゃ。半神半人という前代未聞にして、史上唯一の無二じゃ。そんなそなたに、いつまでも師匠と呼ばせるのはどうかと、最近思うところがあってのう」
師匠曰く、いつか私が師匠より強くなることは予感していたらしい。
意外だった。
師匠がそんなことを言うなんて。
「らしくねえな師匠」
「むぅ」
高貴だからこそ尊大で、強いからこそ自由で。
私はそんな師匠に憧れた。
そんな師匠に惚れた。
だから私が師匠を反故にするなんてことは絶対にありえない。
「たとえ私が神じゃなくても、師匠がよわよわのザコザコでも、私は一生師匠を師匠って呼ぶよ」
「リコリス…。そうじゃったな、そなたはそういう奴じゃ。だから妾はそなたを…」
「ああ、それとも…」
「?」
「テルナって呼んでほしいってことだったり?♡」
「な、あ…っ、そなた!!それは…!!」
「ニッシッシ、えーめっちゃかーわいー♡甘えたかよー♡んーよしよし♡チューしてあげよっかー?♡んー?♡」
「うざ…うざい…!!うっざいのじゃーーーー!!!」
残るメンバーもあと僅か。
いよいよクリスマスデートも最終回。
次回、ドロシー、モナ、アリス、アルティ!
あなたは奇跡を目撃する…かも。
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