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117.クリスマスの奇跡(4)

 クリスマス回4話目です!

 まったくみんな可愛いから困る!

 聖夜祭。

 神聖な雰囲気の中で過ごす特別な時間は、恋人たちを幸福に包み込むこともあれば、特別であるが故に気を張り些細なことで争いを齎すこともある。


「もう!サリーナなんて知りません!」

「わ、私だって!」

「「フンッ!!」」


 この二人のように。

 事の起こりはとあるブティックにて起きた。


「こういう可愛い服はサリーナに似合うって言っているじゃありませんか!だから私がプレゼントします!」

「王女殿下の方が似合いますってば!いつも食事代を出してもらってるんですから、こういうときくらい私にプレゼントさせてください!」


 ムムムムと、リエラとサリーナは頬を膨らませて睨み合った。

 そして行く先々で二人は衝突した。

 何を食べるにしても。


「サリーナの食べたいものでいいって言ってるのに!」

「王女殿下のことを優先しないわけにはいかないでしょ!」


 どこで遊ぶにしても。


「前から劇が観たいとサリーナが言ってたのを忘れたんですか!」

「王女殿下がコンサートを聴きたいって!」


 見事に噛み合わない。


「だいたい今日は私がエスコートするって言ったじゃないですか!」

「それはそうですけど、やっぱり歳上として格好を付けたいんです!サリーナのわからずや!聞かん坊!」

「あー!あー!!そういうことを言うんですか?!はいはいどうせ私はわからずやですよーだ!王女殿下の意地っ張り!ロリコン!」

「ロリッ?!!い、言っちゃいけないことを言いましたね!この失恋魔法使い!」

「しーてーまーせーんー!!私が師匠に抱いてたのは憧れです!王女殿下みたいなガチ恋じゃないんです!」

「くっ!も、もういいです!そんなに言うなら私もう帰っちゃいますからね!」

「どうぞご自由に!王女殿下のことなんて知らないです!」

「いいんですね!本当に帰っちゃいますからね!」

「わ、私だって帰りますよ!あーあ、こんなことならリコリスさんたちと一緒に過ごせばよかったです!」

「――――ッ!!」

「あ…」

「〜〜〜〜ッ、サリーナのバカ!!!」

「あ、王女…殿下…」


 ――――――――

 ――――

 ――


「サリーナのバカ!バカ!バカバカバカ!せっかく…。あ、あれ?ここは…どこでしょう…。道に迷って…」

「ひゃあっはぁぁぁぁ!」

「?!」

「おれたちはチンピラだぜぇぇぇ!こーんなところでかわい子ちゃんちゃんが一人ぼっちなんて見過ごせないんだぜぇ!」

「なーんか悩んでる顔してるぜぇ!」

「お茶に誘いつつ悩みがあるんなら相談に乗ってやるんだぜぇ!ひゃっはぁぁぁ!」

「け、結構です!」

「そんなツレねえことを言われたら寂しいんだぜぇ!」


 男がリエラに手を伸ばす。

 恐怖に目を瞑った一瞬、男は苦悶の声を上げた。


「あビュッ!!」


 おそるおそる目を開けると、サリーナが男の股間に蹴りを見舞っている光景が映った。


「サ、サリーナ…」

「下がりなさい!リエラさんに触れることはこの私が許しません!」

「「「す、すみませんなんだぜぇぇぇぇぇ!!!」」」


 男たちはすたこらさっさと去っていった。


「サリーナ…なんで…」

「いなくなったら探しますよそれは。あなたは王女様で…私のお友だちなんですから」

「…………」

「さっきは言いすぎました…ゴメンなさい」

「こっちこそ…」

「あ」

「「あの」」


 言葉が被り二人は気まずそうに顔を背けた。


「なんですか…?」

「王女殿下から…」

「それ…」

「?」

「さっき…リエラって、名前…」

「あ、咄嗟に…。すみませんでした王女殿下」

「よ、呼んでください!リエラって…二人きりのときは…」

「私なんかが呼んでもいいんですか?そんな…特別な…」

「特別です!アルの代わりでなく…あなたは私の特別です…。特別に…したいです…」

「そんなの…私だって同じです!」


 少女は、或いは少女たちは不甲斐ない自分を恨んだ。

 赤髪の少女ほど垢抜けていない。

 彼女ほど軽妙でもない。

 ただそれでも、心に灯った火を燻らせるほど不器用ではない。


「今はまだ、あなたに相応しいとはとても言えません!なので…いつか私が大賢者(りっぱ)になったときに、この思いを言葉にしたいと思います!それまで…待っててください!私はあなたを……リエラさんを幸せに出来る魔法使いになります!なってみせます!」


 リエラは自分よりも若く、また小さな魔法使いの目に頬を赤く染めた。

 吐息は一層濃い白に。

 帯びた熱のままに思いの丈を綴る。


「待っています。私の魔法使いさん」


 その気持ちに、関係に、名前はあれどそれを口にすることはしない。

 身分違い。歳の差。抱いた思いを叶えられなかった者同士。

 今はまだ手を取り合うだけ。

 今はまだ――――――――




 ――――――――




「街を歩いてる人がみんな楽しそうで、クリスマスっていいわね」

「楽しみ方は人それぞれだからいいんだけど、なんで私たちはお風呂入ってんだ?」


 しかも屋敷のじゃなくて公衆浴場。


「寒いのはあんまり好きじゃないし、なんでも願いを叶えてくれるって言うから。一度来てみたかったのここ」

「にしても言ってくれれば貸し切りにしたのに。なんなら新しく建ててもよかったんだぞ?」

「あなたじゃなかったらお金持ちすぎて嫌いになるわ」

「よかったな私で」


 しかし、お風呂はむしろアリなんですよねぇ。

 だってシンプルに裸の美少女が一緒にいるんだもの!

 お湯で火照ったほんのりピンクの肌が…ヘヘヘ。

 テーマパークに来たみたいだぜテンション上がるなぁ〜!


「同性でも憚れるくらい見てくるじゃない」

「そりゃ見るだろ隣にこんないい女いたら!このいい女誰の?はいはーい私のでーす!皆さんこのいい女私のですよー!」

「うるッさい!!迷惑だからやめて!!」

「そしてそんないい女を侍らせるスーパーいい女が私♡ドヤッ♡」

「ほんと、いい性格してるわ。退屈しない」

「ほぇ?」


 なに言ってんだこいつ?


「そりゃさせないよ。私を好きになってついて来てくれてんだもん。おもしろくない時間なんて要らねえだろ」

「……そういうところ」

「あぴゃっ!」


 心霊現象(ポルターガイスト)でお湯かけられたんだけど…

 なんで?


「解せぬ…」

「いいから、ほら来なさい。背中くらい流してあげるから」

「おっほほー♡じゃあ全身くまなく満遍なくおーなしゃーす♡」

「そういうところ!!」




 ――――――――




 リルムは暴食の化身。純然な捕喰者だ。

 スライムという性質故に食欲に際限が無く、一度捕喰(たべ)始めればそれこそ貯蔵している食糧なんて一瞬で尽きてしまう。

 未だ()()なっていないのは、リルムに高度な理性と、食事を楽しむという高度な感性が備わっているためだ。

 リルムの限界は私たちの誰も、もしくはリルム本人でさえ知らない。

 何が言いたいかっていうと、それくらいリルムは食欲に特化してるってことだ。

 だから、


「リー、あのお店見てみたい」

「おー」


 飲食店に立ち寄らずにデートしてる今は、自然で不自然な光景だった。


「リルム、お腹すかないの?いいんだよ好きなの食べて」

「んーとねー食べるのはいつでも出来るでしょ?でもリーと二人っきりはあんまり無いからね、だからリルムはリーと一緒なのー」


 マリアやジャンヌ、アリス、プランやトトとは別ジャンルの子どもっぽさがありながら、リルムははっきりと私への好きを露わにする傾向がある。

 それがどうにも甘酸っぱい。

 腕を組んでくる所作一つでさえドキドキさせられるくらいには。


「可愛いねリルムは」

「リー、リルム好き?」

「好きだよー。めっちゃ好き好き」

「リルムはねー、それよりもーっとリーのことが好きだよ」


 重ねて、リルムは純然な捕喰者だ。

 ()()の幻獣で、もしかするなら私に匹敵するほどの欲張りだ。

 だからこそ、誰よりも自分に正直だ。


「アーと結婚しても、みんなといっぱい好きになっても。リーと一番最初にチューしたのはリルムだもん。だからリルムが一番」


 リーのことが好きなの。

 そう笑うリルムの愛しいこと。

 往来にも関わらず、私はリルムの頭に手を回してキスをした。

 ずっと好きでいろよって笑って。




 ――――――――




「むげーんだーいなーゆーめのーあとのー!!♪」

「フゥフゥフゥフゥー!!♪」

「なにもなーいよのなかじゃあー!!♪」

「あいあいあいあい!!♪」

「そーぉさいーとしいーおもいもまけそーにーなるーけどー!!♪」

「負けないでー!!♪」


 ――――――――

 ――――

 ――


「っはーマッジで最高だな!マジ天才だわ!ラジアータ号にカラオケ作っちゃうとか神〜!さすが天才錬金術師!」


 テーブルにはメロンソーダ。

 フライドチキンにポテト。

 ロシアンたこ焼きに、カラオケのド定番ハニトー♡

 やっぱクリパっつったらこれっしょ♡


「カラオケとか一回も行ったことないからどんなもんか知らないんだけどね。友だちいなかったし」

「急にぼっち感出してくんのやめて」

「ゆーて音源は姫の魔法頼りだし、まだまだ詰められるとこあったなーって感じするわ。魔石でちょっとガワだけ作っただけで」

「いやいや充分天才だろ。こりゃカラオケ店設立もワンチャン…あーいや、それより先に歌の方流行らせなきゃいけないのか。でも偉人たちの曲そのまま使うのは著作権的なあれがなー」


 ジャスのラックさんが黙ってねーわ。


「まーいんじゃん?今はあたしらだけで楽しんでれば」

「それもそうか。よーし次ルウリな!何歌う何歌う?国家でも軍歌でもリコリスさん幅は広いぞ!」

「バカかよ姫。アニソン縛りに決まってるんだが!」

「ありー!!なんなんせーをめざしてーパーティーをつっづけよー!!」

「せかいじゅーをーおっどろかーせーてしーまうよるになーる!!アイッフィール!!」

「「じょーじょーれーんさになってリーフレクション!ゴーゾン!いっきょー!さっていーちなんさってまーたいっきょー!!フゥーーーー!!」」


 好きぴとカラオケたーのしー♡

 今回もイチャイチャしてましたね、フフ。

 突発的に考えたサリーナ×リエラがすーごい書きやすいの困る…

 次回もクリスマス回!

 マリア、シャーリー、テルナを予定!

 お楽しみに!


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 よろしくお願いいたしますm(__)m

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[良い点] リエラとサリーナ尊いさいこー・・・ リルムもルウリもみんなかわいいよー
2023/12/10 10:14 退会済み
管理
[良い点]  また一つキマシの塔が完成しましたタワー!!
[良い点] いええあ!!!!!百合大好き いっぱい嬉しい!!!
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