116.クリスマスの奇跡(3)
クリスマス回3話目です!
聖王国リーテュエル。
そこの聖女であるクロエちゃんは、
「はぁはぁ神様ぁ♡神様ぁぁぁ♡」
クリスマスという聖なる日、ベッドの上で私に馬乗りになっていた。
「クロエちゃーん…あのー、なんで私は縛られてんのかなー」
ご丁寧に両手両足。しかも目隠し付き。
やろうと思えばこんなロープ引き千切れるし、透視も出来るけどね。
「神様、私は気付いたのです。おこがましくも神様の嫁を騙るあの糞女」
「正真正銘私の嫁だが」
「何が神様と愛し合ってる、何が神様と何度もまぐわっている…」
「実際そうだけど何言ってんだあいつ」
「神様が穢れるなんて耐えられない…。そこで思いつきました。ああ、私で全部上書きしてやればいいのです、と」
「上書きってあひィ?!!♡何今の?!♡何したの?!♡」
「フフフ、私の下で無抵抗に何も出来ず犯される神様……♡はぁはぁ、もう辛抱たまりません!!!♡」
「あ、ちょ待っ、んほぉぉぉ!!♡」
「聖女の聖域の奥の奥まで…侵略してみたくはありませんかぁ?♡」
「そこらめっ!♡変な声出りゅうっ!!♡」
「いいんですよ神様ぁ♡どれだけ惨めで下品に喘いでも、私は神様を愛して愛して愛し尽くしますから♡」
私のハーレムである百合の楽園の特色的に、みんなが私に対してSっ気を出すことはあんまり無い。あんまりね。
だから私がこんなに攻められるってのは、まあ新鮮で趣深いと申しますか。一興と申しますか。
まあ、ええ…モテ女に転生してよかったーーーーーーーー!!!
――――――――
朝っぱらから聖女に手篭めにされる一方。
「お手でござる、主殿♡」
「わん…」
「おりこうさんでござるな〜♡」
私はウルにわしゃわしゃされていた。
「シンプルに恥ずかしいんだけど…」
「ダメでござるよ主殿。犬は主に忠義を重んじる生き物なのでござる。拙者のように」
「お前狼だし私に犬のマネをさせて喜ぶお前にはたして忠義なんてものがあるのか?」
「それはそれでござる!」
一日みんなの好きなように過ごすってのが今日のコンセプトだから、何をしようとされようと問題は無いんだよ。
でもなぁ、威厳っていうかさ。
見目麗しいお姉さんが椅子に足組んでる前でちょこんとおすわりしてんのは、なんともむず痒い気持ちになる。
「あの主殿を御している気になるというのは、デュフッw獣の本能が刺激されるでござるなぁ」
「肉食め。後で覚えてろよ貴様」
「だからダメでござるよ。今の犬は主殿でござるから」
ごちそうを前にお預けを食らった犬とは違う。
優雅に食事を嗜む貴族さながらに、ウルは気品に満ちた表情で口を開けた。
傲慢こそが自らの本質だと言わんばかり。
貪り、飢えを満たしたのだった。
――――――――
「よかったの?私にまで時間を割いてもらって」
レオナは横を歩く私に水くさいことを言った。
「いいのいいの。私増えるし」
「聞いたことない返しやめてくれる?」
「だって増えるんだもん。あと生えるし、可愛くてキレイでカッコよくて優しくて思いやりがあってスケベで非の打ち所がないなんて私ってばほんと完ぺきなスーパー美少女」
「自己肯定感に取り憑かれてる…」
「知らねーの?自分を愛さなきゃ他人も愛せないんだよ?」
って秋○澪ちゃんが歌ってた。
「にしても限度ってあると思う」
「私には限度も限界も無い!!何それー!!何味ー?!!」
「うるッさ!」
「冗談はともかく、レオナは私を見習え見習え。周りの目を気にしてばっかじゃ楽しく生きられねーぞ」
「まあ、ね。自分を隠すのはたしかに億劫に思うこともある。けど」
「けど?」
「こうして素の自分を曝け出せる人と巡り逢えたんだから、それもあんまり苦じゃなくなったかも」
「初対面でいきなり顔面に騎乗位かましてくるくらいだもんな」
「あれはそっちから突っ込んできたんでしょ!!!もうっ忘れてー!!!」
無理に決まってんだろ性欲枯れ果てたお爺ちゃんでも竜の如く蘇るわ。
「うぅ…お嫁に行けなくなったらどうするの…」
「そのときは私が獣帝のお妃様だな。ニッシッシ♡」
「だからそういうとこ…はぁ、本当…」
「なーあーに?♡」
「何でもないっ!今日はとことん付き合ってもらうからね!覚悟してよ!」
「お望みのままに♡可愛い獣帝様♡」
――――――――
王都のとある裏路地にある階段。
目立たないそこを降りると、古ぼけた木の扉がある。
かつてはどこかの誰かが食堂を営んでいたらしいその店を見つけたのは、本当にただの偶然だ。
立地も悪くて買い手もつかないとのことだったので、誰にも内緒で私が購入した。
「で、魔法でパパッとキレイにして内装だけいじったのが、このお店ってわけ。営業も何もしてないからお店ってわけでもないんだけど」
要約するとここは隠れ家的なバーだ。
ただしお酒の知識は無いから、棚にはよくわからない、おいしいらしいお酒を並べてある。
なんていうか静かに飲める場所が欲しかったっていうか。
みんなとワイワイももちろん楽しいけど、こういう落ち着いた雰囲気も悪くないなってことを思ったんだよね。
「あっ相変わらず…すごいこと、しますね…」
「フッフッフ、これが財力ってやつよ」
指で輪っかを作ると、エヴァはどう返せばいいのかわからないと苦笑いした。
「なにはともあれエヴァが初めてのお客さんだな。何飲む?ノンアルもあるよ」
「じゃ、じゃあ、リコリスちゃんの…オススメで」
「あい喜んでーぃ!」
「い、威勢がいい…」
グラスに氷。
コーラを注いで手を翳す。
ここに性質を変化させた魔力を加えてやれば、微かに赤く輝くリコリスさんオリジナルカクテルの出来上がりだ。
「キレイ…」
「じつはちょいちょい食べる魔力の練習してるんだ。今じゃ魔力でステーキ作れるくらい上達したぜ」
「ス、ステーキ入りの、コーラ…ですか?」
「んなわけあるか。これはね、飲みながらどんどん味が変わってくの。めっちゃ弱くだけどアルコール利かせてあるから、苦手だったら別のに変えるね」
「だっ大丈夫、です…。リコリスちゃんが、作ってくれた…ので。いただきます…」
「召し上がれ」
「コク……おいしい。魔力の清涼感が、絶妙で…。コーラの、甘みと…果物…炭酸が落ち着いた後に、バニラみたいな香りも…。私、これ好きです…」
カウンターを挟んで、私はエヴァの顔をじっと見つめた。
「ど、どうかしました、か?」
「んーん。エヴァってやっぱ可愛いなって」
「ふェ?!そそそそ、そんな、そんなこと…」
エヴァをここに連れてきたのは、きっとエヴァは騒がしくするのは苦手だろうと思ったからだ。
静かな場所で二人きりの方が良いよね って。
けど、それだけじゃなかったんだな。
私がエヴァを独り占めしたいって思いもあったんだろう。
それに気付いてしまった私は、笑いをこぼして口の端を吊り上げた。
「エヴァ」
「は、ん…。リコリス、ちゃん…?」
「私にもちょうだい。甘いやつ」
「ん…」
「シシ、カウンターを挟みながらってなんかいいね」
「なんか、いい、です……」
身を乗り出せないもどかしさもちょっとしたスパイス。
私たちは静かな一時に酔いしれた。
そんな色気に溺れている一方で。
「もう!サリーナなんて知りません!」
「わ、私だって!」
「「フンッ!!」」
クリスマスに似合わないケンカをしてる人たちも。
今回は色気たっぷりでしたね、へへ。
夏真っ盛りですが、まだまだクリスマスは続きます!
次回はサリーナ&リエラ、ユウカ、リルム、ルウリを予定しております!
どうぞお楽しみに!
そして本日は我らがシャーリーのお誕生日!!!
Twitterにて限定イラストを公開しております!!!
シャーリーおめでとーーーーーーーーー!!!!!
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