115.クリスマスの奇跡(2)
クリスマス回2話目です。
「ジャンヌはどこへ行きたいのかな?」
「エヘヘ、リコリスお姉ちゃんと二人っきりなだけで嬉しいです!」
はー可愛い〜。
なーんでそんな可愛いの〜腕なんか組んじゃってこの子は〜。
おませさんめっ。
よーし甘やかしちゃうぞ。
「なんてことだ!公演当日に主役とヒロイン役が駆け落ちだなんて!これでは劇が…劇団が!あぁいったいどうしたらいいん……はっ!そこの美しいお嬢さん!劇の主役に興味は無いか?!」
「無いからおっさんは喋りかけてくんなこちとら妹とデート中ぞ!!」
「あぁこのままでは団員共々首を吊って詫びなければならない!!顔が良くてスタイルも良くて劇の才能に満ち溢れた美女がいればなんとかなるのに!!」
知らん!!
いきなりしゃしゃんなモブおっさんが!!
妹とのデートの一分一秒を邪魔してくんな!!
「お姉ちゃん、可哀想です。助けてあげてください」
「えー…でも」
「すまない全国各地の選りすぐりの美女団員たち!私が不甲斐ないばっかりに!」
「ほ、ほぉ…美女団員、とな…ほぉ〜」
「お姉ちゃん?」
「はっ!こ、こほん。まあ、ジャンヌがそう言うなら吝かではない、かな?」
「ありがとう名も知らぬ美少女よ!!」
「男が手握んな頭蓋ひしゃげられてぇのか!!!いいけどその代わりこの子をヒロインにしろ!!!」
で、こうなってるってわけ。
「薄汚い手でジャンヌ様に触れるとは!その罪、我が剣にて雪いでくれよう!」
「危険ですリコリス様!私の…私なんかのために、あなたが危険を冒す必要はありません!」
熱演ジャンヌしゅきぃ…カッコいい〜。
【術理】のスキルは魅せ方まで理解させるのか。
おっと、セリフセリフ。
「悲しいことを言わないでください。あなたを守るためなら、私はどうなろうと構わない。私はこの愛にてあなたに命を捧げましょう!うおおおおお!」
「リコリス様ー!」
悪漢倒しーの。
歌いーの。
踊りーの。
はいハッピーエンド。
「全て、終わったのですねリコリス様」
「ええ。愛の力です」
「その愛が偽りだと疑うことはしません。ですがもしもあなたが愛を証明してくれるのなら、口付けを以て応えなさい」
「……ジャンヌ様の命令ならば」
キス!シーン!
合法的にチュー出来るのさいこー♡
とはいえね、公衆の面前でジャンヌの可愛いキス顔を晒すのは独占欲が刺激されるので。
なんかいい感じに衣装で隠してやり過ご――――
「ん」
こ、こいつぅ!
自分からっ!
「愛しています」
私にだけ聞こえるように、お姉ちゃんと付け加えて。
ジャンヌめ…いけない子なんだからっ!
――――――――
ところは変わって王都の外。
「なんでクリスマスに私はミオさんと剣を構えてるんでしょうか…」
「せっかくお相手してくれるなら、と」
「どうせならベッドの上でお酒なんて、ねぇ?」
「私に勝てたら望みを聞きましょう」
「マジですか!うっしゃー!テンション上がってきたぜー!」
あ、でも女の人に暴力振るえないのが私の良いところだしな。
なんとか無力化する方向で。
「やれるものならですけどね。十拳剣、霊刀解放」
「ニッシッシ、ヤッてヤれないことはねぇのが私ですよ。それにそろそろ見たいと思ってましたしね」
「なにを、でしょうか」
「その能面の下のご尊顔をね」
「フフッ、行きますよ。救世六刀流、慚愧之鼎・蓮花鬼!」
「星の剣!」
クリスマスに全力でバトるってのも、まあアリっちゃアリかもしれない。
それが麗しいお姉様なら尚の事。
「受け止めてくださいね、私の本気」
「っしゃこーい!!」
――――――――
うちの従魔たちは、それぞれ比較的欲求の特色がはっきりしている。
リルムが食欲、シロンが睡眠欲に極振りしてきるように。
ことプランに関しては、リルムくらい食欲が旺盛でありながらシロンほどに怠惰でもあるけれど、それ以上に好奇心の塊だ。
ドラゴンとして野生に暮らしていたんだから当然なんだけど、興味があれば何にでも食いつく。
たとえば本。
「これおもしろいなー。続きは無いのか?」
識字はもちろん、物語に対しての理解力があり、ドラゴンとしての自頭の良さを遺憾なく発揮する。
次に裁縫。
「なあなあシャーリー、オイラにもそれやらせてくれ」
一度教わっただけで刺繍を覚えるくらいには手先も器用で、じつに家庭的な一面もある。
けどまあ、なんというか。
性格が子どもっぽいというか、飽きっぽいというか。
どれも長続きはしていない。
そんなプランだけど。
「オイラ、食べるのも遊ぶのも大好きだけど、リコリスと一緒にいるときが一番嬉しくなるから好きだ」
不意にそんなことを言われると、さしもの私でも照れる。
「出逢ってくれてありがと。プラン」
「おー!」
私だって嬉しいんだぞと、言葉にはしないけれど。
そっと手を繋いで街を行った。
――――――――
「んっ♡ああっ♡くふん…マスター、そこ、んはぁっ♡」
「ドスケベな声出してんじゃねえ羽づくろいしてるだけだろ」
「だって気持ちいいのでございます」
クリスマスに何を願ったかと思えばこのルドナ。
私にお世話してほしいんだと。
「見た目はお姉さんなのに、甘えん坊な奴め」
「それもこれもマスターを独り占め出来る特権というやつなのでございます」
「ま、ルドナが嬉しいならいいんだけどさ。それにしてもキレイな翼だな」
「フフフ、これでもマスターのために身なりは整えているのでございますよ。一目見たあのときから、名前を与えられたあのときからずっと、私の心はマスターに惹かれ続けているのでございますから」
可愛いこと言うんだこいつが。
「こうしてマスターに触れられることがどれだけ幸せか。胸がいっぱいなのでございます」
「そっか。ウッヘッヘ、いいね愛されるって。心があったかくなる」
「愛しい愛しい私のマスター」
ルドナは己が強欲のまま、翼で私を包み込んだ。
「大好きなのでございます」
その後どうなったかって?
まあ…ご想像にお任せってことで一つ。
ニシシ♡
以上2話目のクリスマス回でした。
引き続き残っているカップリングも書いていきます!
次回はクロエ、ウル、レオナ、エヴァを予定!
よろしくお願いいたします!
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