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111.聖女と移ろう世界の中心

 今日って"百合の日"らしいです!

 うちの作品がピッタリですね!

 まあ一年中百合してますけど!

「ただいまー」

「おー!連れてきたぞー!」

「これは…どういう状況だ」

「それを聴きたくて来てもらったんだよ」


 リルムとプランはヴィルたちを連れてくるなり、仕事は終わったとばかりに自分たちの部屋に戻っていった。

 場所は私の屋敷の応接室なんだけど、人が多くて少し手狭なのは否めない。

 とりあえず要人には座ってもらって、と。

 百合の楽園(リリーレガリア)に、ヴィルとリエラ、レオナちゃん、フェイさん、コルルシェールさん、それと私の腕にべったりとしがみついて離さないクロエちゃんに、不機嫌そうに眉根を寄せ続けてるどちゃクソ美人さん。

 メロシーさんはともかく、なんでミオさんたちがいるの?とか、いろんな疑問があるんだけど。


「えっと…どうしようか。とりあえずお茶かな?」

「結構。すぐにお暇します。…と言いたいところですが、どうやら各国の王を呼び寄せるだけの力を持った方のようです。名前程度は覚えておいてもらって損は無いでしょう。私はカティア=アークランベルジェ。聖王国リーテュエルの教皇です」

「ご丁寧にどうも。リコリス=ラプラスハート=クローバー、地位は伯爵…じゃなかった、侯爵です」

「侯爵?たかが一貴族が王たちと繋がりが?」

「まあ、いろいろあって」


 すっげぇ美人なのに圧あるなぁ。


「で…」

「クロエです!♡あなたのクロエ=ラスティングノーンです!♡」

「クロエちゃん」

「はぁはぁ!♡この卑しくも醜い豚の名前をもっと呼んでください〜!♡いいえいっそのこと豚と呼んでくださいませ〜!♡」


 助けを求めるようにカティアさんを見る。

 我関せずみたいに目背けるのやめて?


「あの、よろしいですか?」


 お、いいぞアルティ。

 その率先して手を挙げるスタンスいいよ。


「ドロシーたちの話によると聖女と名乗っていたそうですが、事実なのですか?」

「神様神様ぁ♡私はあなた様の永遠の下僕(しもべ)でございますぅ♡」

「聞いていますか?」

「あっ、私ったら神様の前で服なんか着てはしたない!私のような浅ましい者にはそんな価値ありませんよね!」

「うおおこんなとこで脱がないよおっぱいボロンってしたねぇ?!あとで二人っきりのときにおねがぁだっ?!!」

「欲望のままですか。それよりこちらの質問に」

「チッ」

「チッ?」

「ギャーギャーうるせえんだよクソビッ《ピー》が」


 …………空耳?


「今私が神様とお話中だろうがボケ。頭にマ《ピー》カス詰まってんのか。ケツから十字架突っ込んで供物にされたくなかったら臭え口で排泄物言語喋んのやめろや。ペッ」


 ちゃんと床にツバ吐いたんだが?!

 こんな可愛い子が天使みたいな声で、ええ?!口わっる!!


「ギャップすごいねクロエちゃん…」

「二面性がステキということですか?♡嬉しいですぅ♡」


 ポジティブ…じゃねえなこれ。

 余計な感情が通らないようにフィルタリングされてるわ。


「ふぅ…」

「アルティ」

「大丈夫ですよドロシー。これくらいで怒るような私じゃ」

「いつまでこっち見てんだよ気持ち悪いなこのブス。視線でレイ《ピー》しようとしてんの?異種交配は趣味じゃねえからその辺のドブ川でサカってろ《ピーーーー》が」

「人一人くらいなら揉み消せますよね、権力で!!」

「無理だよ?!!待て待てその魔力(マナ)の高め方はヤバい!!みんなアルティ止めてマジで!!」

「嫁!ステイ!ステイ!」

「ア、アルティ、ちゃん…!」

「うがぁぁ!!離しなさい離しなさい!!この無礼者は氷漬けにしないと気が済みませんー!!」


 こんな酷い悪口言われたことねえもんな普通。

 そりゃキレるよ。

 言った本人が私に夢中なのもまた、アルティの癇に障るんだろうな。


「これが今代の聖女か」

「風変わりではあるわね」

「あの、よくわかってないんだけどゴメンね?聖女ってなに?」


 全員すごいバカにした目してくるじゃん。


「どんな方かと思えば、学は欠けているようですね」


 そんで教皇さんも大概口悪いな。

 全員漏れなくウンウンって頷いてる方がムカつくけどな!


「聖女とは神の寵愛を受けし者、そして次代の教皇となる者を指す称号です」

「神の寵愛…」


 それで言うなら私も聖女なんじゃねーの?

 私神にべた惚れされてるよ? 

 ちょっと診させてねっと。




 名前:クロエ=ラスティングノーン

 種族:人間

 性別:女性

 年齢:19歳

 職業:天理教大司教

 所属:天理教

 称号:聖女、狂神者、半神の巫女

 加護:【恋の神の加護】【愛の神の加護】

 スキル

 【祈祷】【聖句】【聖歌】【口撃】

 エクストラスキル

 【神託】

 ユニークスキル

 【神聖魔法】




 おーさすが聖職者って感じ。

 神様二柱から加護をもらってるのも珍しい。

 狂()者も気になるけど、この半神の巫女って称号よ。

 もう認定されてんじゃん。

 

「ようはめちゃくちゃ高貴な人ってことね」

「とんでもありません!私など神様に比べれば腐敗した汚泥!御御足の下にすら似つかわしくない塵芥も同然です!」

「そんな卑下しなくても」


 目がハートすぎる。


「なんでそんな私に夢中なの?あ、やっぱり私が美少女だから?♡えへっ♡」

「ウザい」

「癪に障る」

「腹立たしい」

「もうっみんなツンデレさん!」

「あなた様に惹かれる理由…それは、あなた様が神様だからです!!♡」


 半分な。


「神ですって?この人が?」

「種族でしか判別出来ねえババアは黙ってろ。人でも魔でもない神聖なオーラ、人智を超えた美貌、この神々しさ…先日トリスティナ王国を覆ったものと同じです」


 あのときか。

 近くにいたのね。


「私は産まれたときよりリーテュエルの巫女として、仕えるべき神との出逢いを待ちわびておりました。これぞまさに運命。あなた様こそが私の神。ああ…どうかあなた様に生涯付き従うことをお許しください、神様ぁ♡」

「急にそんなこと言われても困っちゃうなぁデヘヘ」

「じゃあまず乳から目逸らせ姫」

「無理ぃ!!!」

「これ以上ない力強さ」


 だって、これ……これ!!

 すごいだろ?!


「クロエ、仮にこの方が神だとしても近付くのはおやめなさい。下賤な種族と関わりを持つなんて、高貴な身分の者がすることではありません」


 おお、言うね…

 これが天理教…人類至上主義を掲げる聖王国のトップか。

 理解は出来ないけど、そんな人がこの空間にいるのは耐えられないんだろうな。

 みんなもそこはかとなく、嫌悪してるっぽいし。

 今までほとんど意識してこなかっただけに、差別ってやつの根深さを思い知らされるね。


「うるせーなババア私が惹かれてる時点でこの方は神として世界に崇められるべき存在なんだよ。それくらい脳髄枯れた頭でも理解しろよ」


 クロエちゃん毒舌でジト目してもすげぇ美少女だから好きだわ私。

 裏表あるのも魅力だよね。

 教皇さんは不満そうにしてるけど。


「あ、あなたは聖女として、天理教の大司教として世界を導く自覚が」

「じゃあどっちも辞める」

「はい?!!」


 教皇さんエグい慌てた顔したよ?


「天理教は解散。いいよね元から興味無かったし。聖獣召喚(ホーリーコール)、じゃあ伝令お願いね聖獣さん。これでよし。はにゃーん♡私は神様だけのクロエになりますぅ♡」

「わ、私だけの?それはつまり…」

「私の全て…もらってください♡」

「すすっ、全て?!」

「す・べ・て♡」

「すぅ…ふぅぅぅ…よし、とりあえず先っちょだけふごっ!!」

「なんの先っちょですかなんの」


 頭蓋骨陥没したかと思ったよアルティさん…


「どうする獣帝。目の前で聖女が辞任して天理教が解散したんだが」

「教皇が白目を向いているな」

「……とりあえず飲んで落ち着くか」

「それがいい。教皇も誘ってやろう」


 いろんなことはさておきさ、とりあえずみんなで鍋しない?

 お腹すいたし。 




 さすがに人数が二十も超えると、食堂だって狭く感じる。

 魔法で空間を拡張してもよかったんだけど、どうせならってことで庭で鍋パすることに。

 寒くないように周りに気温調整の幕を張るよ。


「相変わらずとんでもない魔法を使いますね」

「ウヘヘ、そう言うミオさんも美しさは相変わらずで♡あとで飲み比べしましょーね♡」

「リコリスさんのお誘いとあれば♡」


 くーたまんねーなぁこの空間。

 美女と美少女揃い踏みでマジ楽園〜♡


「リコリスちゃーんモナお腹すいたよぉー」

「アリスもー」

「なんか懐いてんな…。一応言っとくけどうちのアリスに変な影響及ぼすなよ」

「アリスちゃんって言うんだね♡可愛い〜♡モナお母さんだよ〜♡」

「モナおかーさん!」

「お母さんは私です!」

「やーんアルティちゃんのケチ〜」


 賑やかしいっ。


「すぐ出来るから遊んで待ってて」


 魔法ででっかい竈作って、これまた魔法ででっかい鍋も作る。

 醤油、みりん、酒を合わせて、ここにルウリと開発した顆粒出汁(近日発売予定)を投入。

 お手軽な鍋出汁に肉も魚も野菜も好きにぶち込んでひと煮立ちさせたら、超簡単寄せ鍋の出来上がり。

 

「よーし出来たぞー!食べろ食べろー!」

「わーい!」

「おいしそーです!」

「お肉いっぱいあるからね。お腹いっぱい食べな」

「「はーい!」」

「誰が獣が手を付けたものなど…」

「まーまーそう言わずに食べてみなってカティアちゃん」

「ちゃ、ちゃん?!無礼な!私を誰だとむぐっ?!」

「ほれ、手作りの肉団子じゃ」

「ほ、ほいひぃぃ〜……♡なにこれへぇ〜……♡」


 はい堕ち。


「くはァ!熱い鍋にキンと冷えたビールは最高じゃのう!」

「モナも飲むぅ♡」

「お鍋、出汁が利いておいしいですね」

「サイコー♡」

「ううぅ…肉など…酒など…我々天理教は清貧を尊んでぇ…」

「諦めろ教皇。少なくともこの場でその教えは無意味だ」


 ヴィルはそう言って、ビールがなみなみと注がれたジョッキをカティアちゃんに差し出した。


「彼女は我々が御せるような器でないことは、すでに承知しているのではないか?」


 レオナちゃんも同じくジョッキを片手に近付いた。


「そちらの来訪も迷宮(ダンジョン)に関することだろう。我々サヴァーラニアはすでに同盟という形で、王国ないし彼女リコリスと締結している。この宴席でなら、固い話も少しは砕けて話が出来るのではないだろうか」

「獣帝…あなたほどの方が絆されましたか」

「自分を曝け出せるという方が正しい。あれの隣は楽でいい」


 レオナちゃんの穏やかな表情を受け、カティアちゃんはそっとジョッキを受け取った。


「話とは有意義なものなのでしょうね」

「そうなるかどうかは私たち次第だ」


 三国のトップたちは、軽くジョッキをぶつけ合った。

 国の意識を変えることはそう簡単なことじゃない。

 けど個人の意識が変わるきっかけにはなるんじゃないだろうか。

 なーんてね。

 そんな壮大な思惑があったわけではけしてなくて、ただ普通にお腹すいたからみんなでご飯しよってことだったんだけど。


「とりあえず、今が楽しけりゃいいよね。エヴァ、サリーナちゃんも呼んでこいよ」

「はっはい」

「メロシーさーん飲んでるー?食べてるー?」

「はい。おいしくいただいてます」

「私もあとでメロシーさんのことおいしくいただきたいなぁ♡」

「あらあら」

「姉さんも満更でもないのなんかすごい嫌」


 嫉妬すんな嫉妬すんな♡

 ちゃんとドロシーも愛してるよ♡


「神様ぁ♡クロエのことも愛してくださぁ〜い♡」

「おっほでっけぇ!♡もちろんだよクロエちゃーん♡そんなにおっきいと肩こるっしょ?♡神様(わたし)が(ど健全な)マッサージして(深い意味の無い純然な意味合いで)気持ちよーくしてあげるよぉ〜♡」

「はにゃーん♡クロエを天国へ連れてってくださーい♡(限りなく淫乱でドスケベな意味で)」

「私この人嫌いです」

「べつにお前に好かれたいと思ってねえよ身の程知れクソ雌。パイ○ン顔で私の神様に色目使うな」

「わ!た!し!の!妻!!です!!けど!!」


 あはァ〜♡

 美少女に取り合われる罪なスーパー美少女わ・た・し♡

 まあ、それはそれとしてだ。


「クロエちゃん、みんな私の女なんだから仲良くしなきゃダメだよ?」

「はーい♡仲良くします神様ぁ♡」

「おもっきし中指立ててくるわよこの聖女」

「同担拒否草ぁ」

「こ、怖い人、だ…」

「生意気じゃの」

「下の世界にはおもしろい子がいるのね」

「この方はまた特殊でしょう。しかし、ポッと出にリコリスさんを独り占めされるのはおもしろくありませんね」

「チッ、どいつもこいつもうっせーな。神様との時間を邪魔すんなつってんのわかんないの?悉く滅びて贄になれよ堆肥共」

「「「黙ってろブス!!!」」」 

「はぁぁぁ?!!聖女として奉れる私が、はぁぁぁぁ?!!もっかい言ってみなさいよモブ共!!」


 合わんね君たち。馬が。

 ゴメン!私が魅力的すぎて!

 けどやっぱ女の子には仲良くしてほしいのが私なので。


「はーいはいケンカすんなー。それよりみんな飲もう食べよう。ご飯をおいしく食べてくれる人が好きだぞ私は」

「上等です!なら飲み比べで勝負です!勝った人が今日リコとベッドを共にする!」

「なんで自分から火に薪を焚べるスタイルなの?」


 ケンカすんなって言ってるだろ。


「聖女だからって酒に弱いとか思ってんの?言っとくけどうちの僧侶みんな隠れて毎晩飲んでるから」


 生臭坊主集団じゃん天理教。


「楽しそうなことしてるー♡モナもやるー♡」

「飲み比べなら負けませんよー♡」


 モナにミオさんまで…

 ここは良識ある大人のメロシーさんになんとか止めてもらって…


「アリスおなかいっぱいでねむい」

「あらあら。ほら、おばさんがだっこしてあげますからね」

「んー。メロシーのおっぱいふわふわぁ」

「フフフ」


 あ、しゅごい幸せそう〜!

 メロシーさん私も私も。

 豊かなお胸でオギャらせてくれぇ。


「リーお肉もっとー」

「足りないぞー」


 そんで幻獣組(おまえたち)のひたすらに自由なことよ。

 みんな個性的でいいねぇ。

 ほんと好きだよ君たち。

 まだクリスマスも来てねえのにそんな盛り上がっちゃっていいの?


「ニッシッシ、まあ今が楽しいのが一番良いか!よーし朝まで騒ごーぜみんなー!美少女たちにー乾ッ杯だー!」


 私は満面の笑みで、空にジョッキを突き上げたのであった。




 ――――――――




「人間、獣人、エルフ、魔人、悪魔、妖怪、幻獣、そして神…多様な人種が入り混じり、一つの食卓を囲む…」

「聖王国の教皇としては、耐え難い光景か?」


 ヴィルストロメリアの言葉に、カティアはそうですねと目を伏せた。


「人こそが世界の基盤。未来の安寧を築ける者である。その考えは変わりません。ですが」


 目の前に広がる光景は紛れもない現実であることをカティアは突きつけられた。

 たった一日。

 たった数時間前に出逢ったばかりの少女に。

 彼女が自分に、世界に何を齎すのか、それは未だわからない。

 それでも。


「この場の空気とお酒の味は悪くありません」


 自分の中に芽生えた、或いは芽生えさせられた"何か"もまた、確かな真実であった。

 【百合の日のあとがき】


「アルティアルティ!今日って百合の日らしいよ!」


「はぁ」


「百合の日最ッ高〜♡女の子があっちでイチャイチャこっちでイチャイチャ♡眼福眼福〜♡健やかにかつ大胆にチュッチュしてくれぇ〜♡」


「私とは?」


「ほぇ?」


「私とは、しないんですか?」


「あ、はひ、するぅ……」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 聖女ちゃんいいキャラしてるぅw アルティに強い言葉使えるの強すぎ
2023/11/26 02:33 退会済み
管理
[良い点] はー腹いっぱいの百合最高なり クロエさんの口クソ悪なのめちゃくそ好き [気になる点] 無色さんはchatgptで小説を書くことについてはどう思われますか?
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