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92.死霊の招き

「みんなー!おーい誰かー!可愛い可愛いリコリスさんはここだぞー!」

「アリスもいっしょー!」


 反応無し。

 さてどうしようかなぁ。

 高さが数キロある上に、横の広さも途方もない巨大な城の中で迷子。

 しかもスキルも魔法も使えない。

 これ詰んでない?


「あの感じだとやっぱりみんなランダムに飛ばされてるよね。無事ならいいけど」


 問題なのはやっぱりスキルが使えないことだ。

 この城が特殊な結界の役割を果たしてるのか、はたまた城に着いたときから感じてる()()かの仕業なのか。

 侵入者だーとか敵認定されてないといいなぁ。


「身体の調子は変わんないし、フィジカル組はとりあえず大丈夫だろ。問題はそれ以外のメンバーだな」


 一応こういう場合を想定して、みんなには護身用に()()を渡しておいたけど。

 

「早いとこ合流しないとな。アリス、行こうか」

「うんっ!スケスケさんもいっしょにいこ!」


 今私たちがいるのは薄暗いワインセラー。

 ひんやりとした空気に、樽とぶどうの熟成された香りが混ざってる。

 窓も無いし、もしかしたら地下なのかもしれない。

 とにかく景色が見えるところに…って。ん?


「アリス?スケスケさんって?」

「スケスケさん!」

「スケスケさん…」


 幽☆霊☆


「うおおおおお!」

「ママー?なんでにげるのー?」

「なんでだろ?!絶妙に邪悪で絶妙に人を呪いそうな見た目して鎌持ってたからかな!!」


 レイスか?

 今の状態でゴースト系の魔物と鉢合わせするのは非常にマズい。

 だって物理攻撃効かねえんだもん。

 

「ママースケスケさんいっぱーい!」

「うおおおエレクトリカルパレードくらい来てるぅ!!」

「●□△■▲◇○●○■」

「◆△■▲△○□■●●」

「なんか言ってる!!呪詛?!!とにかく逃げろー!!」


 うおおおおー!

 ん?そういえば…誰かおばけとか死ぬほど苦手とか言ってた奴がいたような…

 誰だっけ?

 カチッ


「ん?!なんかスイッチ踏ん――――――――」

「またピカピカー!」

「あーもー!なんだってんだチクショー!!」


 私たちはまたどこかに飛ばされた。




 ――――――――




「ぉぼろろろろろ!!」

「ルウリ?!なんで吐い…あ゛ー(わらわ)のスカートがー!」

「ルー大丈夫ー?」

「はぁはぁ…もういない?あれもういない?!」

「○◆◇▲●●○□△◆」

「ちゃもす!!!」

「なんで自分の目にパンチしたんじゃ?!!」


 吐いて泣いて走って自傷して、行動が奇々怪々じゃ…


「うええん、おばけ…マヂ無理ぃ…」


 リルムの胸に顔を埋めておる。

 ここまで怯えるルウリもまあ珍しい。

 

「人並みに怖いものがあったんじゃなそなた」

「あるし!おばけは超ダメ…だってあいつらびっくりさせてくるんだもん…」

「言い分かわよっ。あんなレイスよりもっと凶悪な魔物だって見たことあるじゃろ」

「虫は有機ケイ素で死ぬけどおばけは死なないでしょ」

「たとえがわからん」


 なんなら虫の方が無理じゃろ。

 うねうねしとるし。


「しかもスキルとか使えないしめっちゃウザい…意味わかんないし、てかここ何マジで…。ホ○ワーツかよ…」

「神代の遺跡。今まで数多くの者がこの地に挑むも、その謎を解明出来たものはおらぬ。しかし一つだけハッキリしておることがある。この地には宝が眠っているということ。地上の国々に持ち帰られた金銀財宝の歴史的価値は計り知れぬ。まさに黄金郷。この地を求める者は多いと聞く」

「黄金郷ー?黄金っておいしい?」

「それは美味じゃろうとも。欲深き者どもが絶えず群がるほどにのう」

「てかこんなとこまで人来れるの?ドラゴンとかいたけど」

「手段はいくらでもあるからのう。それなりに力がある者なら、たどり着くのは容易じゃろうて。たどり着くのはの」

「うぅ…とりまはよみんな探そ…。じゃないと次は吐くだけじゃ済まない」

「とは言ってものう。今の(わらわ)は羽が生えるだけの女児と変わらぬし。リルムに至っては」

「お腹すいたー。んぁー」


 ガキン


「いひゃい…食べれにゃい…」

「石ころ一つ食べられぬ普通の人間じゃぞ」

「マジかよ~かわよさんじゃん〜」

 

 探すと言っても…ふむ、リコリスならばとにかく上を目指そうとするか。

 何とかと煙は〜の考えじゃ。


「いざというときは(わらわ)がなんとかしてやるのじゃ。安心してついて来るがよい」

「テルニャイケメてる〜!マジで頼りにしてるよ〜!よっのじゃロリ!大好きちゅっちゅ〜!もし粗相しても何食わぬ感じでよろ!」

「千年以上生きてきたがその対処法は知らん」


 そもそも今の(わらわ)がどれほど頼りになるかもわからぬが。

 しかしこのスキルの封印術…浮遊城の特性というわけでもない様子。

 どうやらおるのう。

 クハハ。観光のつもりでおったが俄然興味が湧いた。

 (わらわ)やリコリスの力ですら封印出来うる程の何者かに。


「あ゛ーーーーーーーー!!」

「きゃーーーーーーーー!!」

「ぐごごごごごぉ!!首ッ、首がぁぁぁぁ!!」

「今なんか聞こえた!今なんか聞こえたぁ!!ぶえぁぁぁぁ!!」

「おぶっ、首、しまっ…放し…ガクッ」

「今アーの声したー?」


 そやつに出逢う前に、(わらわ)…死んじゃうかもしれぬのじゃ…


「ふええーん!おばけ無理すんぎぃ!」


挿絵(By みてみん)




 ――――――――




「お姉ちゃんたちどこ行っちゃったのかな?」

「みんな、心配」

「ふあぁ…そうだな」

「みんなの心配よりも、自分たちのことを考えた方が良さそうですよ」


 なんせ死霊たちに囲まれてしまっているのですから。

 壁を背にする私たちの周りで揃いも揃って呪詛を吐き散らかし、首を刈ってやろうと鎌を高く掲げている。 

 正直あまり平常でいられる光景ではないです。

 窓から見える外観と太陽の方角。

 どうやら私たちがいるのは西の塔らしい。

 

「アルティお姉ちゃん、幽霊って斬れる?」

「おそらく」


 マリアの(ほむら)はリコが打った刀。

 リコのことだからきっと退魔の性能も付与しているだろう。

 けれどこの数を相手にするのはどうだろうか。

 素の身体能力でどれだけいけるのかという以前に、マリア一人に負担を掛けるのも忍びない。


「ここは撤退するのが良さそうですが、こうも周りを囲まれていては」

「すぅ…」

「こんな状況でも寝ようとする胆力。ゲイル、邪魔と判断したら下ろしていいですからね」

「ぬーボクは寝たいだけなのに」


 本当にリコの従魔は我が強い。


「下りる?」

「んー出来ることならこのままふがっ!」


 ゲイルの背中でグダグダと揺れていたシロンの頭が、壁に掛けられた有翼の獅子の絵にぶつかった。


「くぅぅ…みんなしてボクの眠りを妨げる…」

「何をしているんですか」


 呆れて肩を落とすと、ふと絵のタイトルに目が行った。


「カリオストロの番人…?」


 カリオストロというのはもしや…と顎に手を置いた途端、目の前が真っ暗になった。


「アルティお姉ちゃん?!」


 マリアが慌てて叫ぶ。

 後で聞いた話によれば、私は頭から丸呑みにされたらしい。

 絵から飛び出てきた有翼の獅子に。

 続けざまにマリアが。それにシロンとゲイルが食べられた。

 有翼の獅子はごちそうさまと言わんばかりに舌舐めずりし、また絵の中に戻っていった。

 



 ――――――――




「ここは…植物園かしら?」


 城の中なのに森にいるみたい。

 畑に水路もある。自給自足が出来るくらいには環境が整ってる。

 アタシとジャンヌ、トトにウルはガラスの天井から差し込む光の暖かさに、自分たちが置かれている状況を忘れるほどのどかな気分になっていた。


「お花のいい匂い…」

「ちょっとは具合良くなった?トト」

「うん…ありがとジャンヌ。もう少し休んだら治るかも…」

「どう、ウル?みんなの匂いする?」

「そうでござるなぁ。近いようなそうでもないような。この城自体に妙な気配を感じるせいか、拙者の鼻も当てにはならないのでござるよ」


 ジャンヌの耳と鼻も同じ理由であまり効果は無いみたい。

 頼りの二人がこうなら、やっぱり地道に歩いて探す他ないのかしらね。


「しかし何だったのかしら、あの転移トラップ」

「何って罠じゃないんですか?」

「だとしたらおかしいのよ。転移先が城の中なんて。あれじゃまるで、どうぞお入りくださいってことでしょ?」

「あ、そっか」


 一瞬見えた魔法陣も、だいぶ古めかしい術式で構成されてたみたいだし。

 この城を作った人は、或いはこの城に住まう誰かは、相当な変わり者かイタズラ好きなのかもしれない。


「何があるかわからないから慎重に進みましょう。むやみにその辺のものに触っちゃダメよ」

「おいしそうな木の実がなってます!」

「芳しい香りでござるな」

「言ったそばから」

「んしょんしょ、取れた!わっすごい!見てくださいドロシーお姉ちゃん!ほら!」

「ん?」

「木の実に人の顔が!」

「――――――――!!」

「嬢ちゃん、おれを食べたら痺れるぜ」

「フンッ!!」

「あふんっ♡!!」


 はぁはぁ…お、思わず壁に投げつけてしまったわ…

 ヤシの実くらいの木の実にダンディなおじさんの顔が…

 見間違いよね?

 見間違いであってお願い。


「ドロシーお姉ちゃん!木の実がいっぱいです!」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」

「おれを食べたら痺れるぜ」


 悉くキモい!!!


「なんなのよこの城はーーーーーーーー!!」


 アタシはジャンヌとウルの手を引っぱって、逃げるようにその場を後にした。

 



 ――――――――




「さて、この状況はいったい」


 どうやら私、エヴァさん、ルドナさん、プランさんはとある客間にいるようなのですが、目の前の光景に困惑しています。

 カップやポットたちが独りでに宙に浮かび、テーブルにはクロスが引かれ、私たちの前で紅茶が淹れられている。

 さながら熟練のメイドが如き手際で。


「どっどうしたら、いいんでしょう…」

「なんとも不可思議でございます」

「でもこのお茶うまいぞ?」

「もっもう、の、飲んでる…」


 プランさんの不用意さはさておき、どうやら毒は入っていないらしい。

 攻撃の意思が無いのか、そうやって油断させるつもりなのか。

 まだまだ情報が足りない。というより意図が読めない。

 そもそも意図なんて無いのかもしれませんが。 


「それにしてもカップから家具、調度品の一つまで見事なアンティークですね。持ち主のセンスが窺えます」


 何の気も無しに呟いたつもりだったけれど、途端に浮かんでいたカップたちの動きが止まり、カタカタと震えだした。

 まるで手元が狂ったように、紅茶の飛沫がこちらに飛ぶ。


「冷たいっ」

「紅茶は湯気が立っていたはずですが?」

「それより、なにか…琴線に触れたのでございましょうか?」

「怒ってるのかー?」

「い、嫌な予感が…」


 エヴァさんの言葉は当たり、ガコンと床が抜ける。

 私たちは揃って落とし穴に落ちていった。


「おー楽しいなーこれー♪」


 すべり台のように薄暗い通路を行き、光が見えたと思ったらあたたかいお湯が私たちを包んだ。


「けほけほっ…こ、ここは…?」

「どうやら大浴場のようですね…。ルドナさん、プランさん、大丈夫ですか?」

「んーいい気持ちなのでございます」

「あったかいぞ」

「大丈夫なようで何より」


 紅茶でもてなしからのトラップですか。

 なかなか意地が悪い。


「うぅ…あ、シャーリー、さん…。タオルが…ありました」

「服も乾かさないといけませんね。ん、しょ…」


 下着までぐっしょりです。

 せめて日の差す窓際で干しておきましょう。

 ルウリさんの作った乾燥機なる魔導具があればすぐなのに。

 すっかり楽な生活が身についてしまっていますね。


「服が乾くまで風邪を引いてもいけません。少しあたたまっていきましょう。幸いこれといった罠も無いようですし」

「了解でございます」

「お風呂ー!」

「じゃ、じゃあ…お背中、流します。シャーリーさん…ずっと気を張ってくれて、疲れてます…よね?」


 そんな素振りは見せなかったはずですが。

 よく気が付くこと。


「では、お言葉に甘えて。洗いっこでもしましょうか。まずはエヴァさんから」

「ヘヘ、エヘヘ…はい」


挿絵(By みてみん)




 ――――――――




「わあああああ!あだっ!」


 いって…尻もちついたぁ…

 転移させられたのは…城の入口か。

 ふりだしに戻っただけじゃん。


「なんなんだよもう…」

「ママおそとー!」

「そうだね…」


 いや、むしろ好都合か?

 素直に入口から入って上を目指せばいいんだし。

 位置情報がリセットされたと思えば。

 それでもこの巨大な城の中でみんなを探さないといけない苦労は変わんないんだけどさ。


「あれこれ考えててもしょうがないか。改めてお宅訪問ってことで。アリス、勝手に動き回っちゃダメだからね。ママとのお約束」

「はーい」


 正面扉に続く階段を上がろうと足をかけた。

 そのとき、空を巨大な鳥が舞った。


「?!」

「とりさんー!」

「あれは…嘘だろ?!なんで…この世界に、飛行船?!」


 翼の生えた帆船みたいな…飛空艇ってやつか ?

 魔力(マナ)が薄いのに普通に城の上を飛んでる。

 魔法じゃない。風力?眼が使えないから鑑定も出来ない。

 突然のことに混乱している私の頭上に飛空艇は停まり、怒りを噴水に引っ掛けてロープを垂らしてきた。

 それを掴んで滑り落ちてくる一人の背の高い男。


「なんだァ?一番乗りかと思ったが、同業者か?見ねえ顔だ。子連れとは珍しいな」


 粗野っぽい雰囲気。

 褐色の肌にアメジストの瞳。

 男は次々と降りてくる男たちを背に城を見上げた。


「会いたかったぜカリオストロ。筆舌に尽くしがてぇいい女だ」

「カリオストロ…?それがこの城の名前?」

「あぁ?お前何も知らずにここに来たってのか?カハハ、遊びのつもりならやめときな小娘。てめぇみてえなガキにゃ荷が重い。カリオストロはおれにこそ相応しい。千夜一夜盗賊団(アラビアンナイト)、世界の宝を傅かせる王。シンドバッド=シェヘラザードにこそな」


 シンドバッドと名乗った男は、宝石でゴチャゴチャと装飾した剣を私に向けた。


千夜一夜盗賊団(アラビアンナイト)?」

「怪我したくなきゃそこをどきな。てめぇがどこの誰だろうと、おれの仕事の邪魔をする奴は例外無く簒奪者だ」


 全部で五十人くらい。

 盗賊…よくわかんないけどトレジャーハンターみたいなもん?

 目当てはこの城の宝か。

 わかりやすくていい。

 ていうか、私たちに剣を向ける男なんてそれだけで敵だ。


「おい、その薄汚いもんを下ろせ日焼け野郎。私の娘が傷付こうもんなら容赦しないぞ」

「ハッ、いい目だ。ただモンじゃねえのはわかってたが、何者だ?」

「リコリス=ラプラスハート嬢だよ、シンドバッド君」


 誰だよマジで!

 今度は気球?!

 次から次へとなんだ?って眉根を寄せたら、二人の男が降りてきた。

 いやにフォーマルな格好をした青年二人。

 英国紳士って言葉がピッタリだ。


「若干18歳という異例の早さで魔狼(フェンリル)級に昇格した冒険者。かの英雄ユージーンと賢者ソフィアの愛娘であり、自身は伯爵位を叙爵したドラグーン王国の貴族。その美貌は国内外の御婦人御令嬢方を虜にしてやまないとか。いやいや、噂に違わぬ美しさだ」

「一応訊いとこうかな。誰?」

「チッ、相変わらずだなルパン。そのすかした態度にゃ毎度ながらイライラさせられるよ」

「優雅さが足りていないようだねシンドバッド君。たまには酒じゃなくて紅茶を嗜むといい。ハーブティーも心が安らいでグッドだ」


 私そっちのけで喋んな男ども。


「おっと失礼。私はルパン=モーリス。幻想怪盗(アルセーヌ)というしがない泥棒です。お見知り置きをリコリス嬢」


 千夜一夜盗賊団(アラビアンナイト)の次は幻想怪盗(アルセーヌ)か…

 いや、いいんだけどさ。


「宝探し回で泥棒被りすることある?」


 どっちかでいいなぁ…

 それかせめて女の子であれ…

 何が悲しくて男どもと三つ巴みたいな構図になんなきゃいけないんだ。


「カハハ、小娘の言うとおりだ。失せなルパン。カリオストロはおれのもんだ。宝探しがしてぇならトリスティナのゴミ溜めでも漁るんだな」

「宝を前にしてのこのこと引き下がるようじゃ泥棒は務まらない。君こそ大人しくラムールに帰って砂遊びでもするといい。砂場の城が君にはお似合いだ」

「んゅ…ママぁ、アリスねむい」

「そろそろお昼寝の時間だもんね」


 小競り合いなら他所でやってくんないかなぁ。

 ていうかもう行っていいよね?


「宝はおれのもんだ」

「手に入れた者が勝者。私たちに共通した絶対のルールだろう?」

「そうだな。金も」

「宝石も」

「「女も」」

「おい」


 返しかけた踵が止まる。

 宝に興味が無いといえば嘘になる。

 でも()()だけはダメだ。


「次は無い。私の女に手を出してみろ。後悔させてやるぞ」

「痺れるねぇこの殺気」

「彼女もまた宝を欲する者ということだ。避けられないものだね。奪い合いというのは」

「奪い合い?笑わせんなよこそ泥ども」


 片手には剣を。片手には娘を。

 私は男たちに向けて高らかに宣言した。

 自分こそが世界の中心だと微塵も疑わず。


「私の楽園で粋がんな。この世界の全部、余すことなく私のもんだ」

「カハッ、なら仕方ねえ。おいてめぇら!」


 シンドバッドの合図で後ろの男どもが武器を抜く。


「楽しい狩りの始まりだ!宝をおれに捧げろォ!」


 むさ苦しい歓声。

 対してルパンは隣の青年に上着を預けた。


「無益な争いは趣味ではないが、お宝争奪戦となれば話は別だ。いざ尋常に盗み合おう」


 どいつもこいつもうるせえな。

 宝探しなら勝手にやれ。

 けどそれで私の女が傷でも付こうものなら、私は自分を抑えられる自信が無い。

 なら…万が一が起こる前にこいつらを潰す。

 

「かかってきやがれ!!私は男には手加減しねぇぞ!!」




 ――――――――




「あ゛ーーーーーーーー!!」


 上下左右。

 重力も空間も無視したコースターに揺られること数分。

 私たちは最初と同じ、有翼の獅子の口から吐き出された。

 

「目が回った…」

「なんだったんですか…今の…」


 転移トラップの一種だったんだろうか。

 ここは…庭?

 周囲が空に覆われた、さながら天空庭園と言ったところ。


「一番乗りね」

「!」


 辺りを見渡していると空から少女が降ってきた。

 どこぞの令嬢や姫を思わせるような気品とあどけなさを兼ね備えた、なんとも可憐な美の付く少女だ。


「そう身構えなくていいわ。まずはようこそと言っておこうかしらお客人。お城の観光は楽しんでもらえた?」

「あなたは?」

「クックック、この私に名を訊ねるとは身の程知らずなこと。偉大なる我が名は!」


 教えてくれるんですね。


「闇より出でし影なる国を常夜に染めし漆黒の覇王!」


 徹頭徹尾真っ黒なんですが。

 黒に黒を上塗りしてるだけじゃないですか。


「聖魔混濁を司る白き天玲!」


 白いんですか。


「我が名は…あ、あれ?あああ!きゃんっ!」


 盛大に格好付けてポーズを執った瞬間のこと、少女は空中でバランスを崩して尻もちをついた。


()ったたた…お尻が割れる…」

「大丈夫お姉ちゃん?」

「うう…ありがと…。浮かぶの苦手…何百年経っても慣れないわ。くっ…このユウカ=モノクロリス一生の不覚…」

「サラッと名乗るじゃないですか」


 結局白黒(モノクロ)だし。


「ハッ!わ、我はユウカ=モノクロリス!天空の居城カリオストロの主よ!」

「ああどうも、よろしくお願いします」

「よろしく!あ、じゃなくて!平伏するがいいわ地上の者たち!」


 リコならきっと、こういうときにはこう言うんだろう。

 おもしれー女、と。


挿絵(By みてみん)

 《プロフィール》


 名前:リコリス=ラプラスハート=クローバー

 種族:半神半人(デミゴッド)

 性別:女性

 年齢:19歳

 職業:魔狼(フェンリル)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:ドラグーン王国伯爵、アイナモアナ公国名誉子爵、ディガーディアー名誉子爵、竜殺し(ドラゴンキラー)夜会の主(ワルプルギス)、神への叛逆者

 加護:【自由神の加護】【遊戯神の加護】【法神の加護】【精霊王の加護】【竜王の加護】

 アンリミテッドスキル

 【百合の王姫(イヴ)】【創造竜の魔法(ラプラス)



 名前:アルティ=ラプラスハート=クローバー

 種族:人間

 性別:女性

 年齢:18歳

 職業:魔狼(フェンリル)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:(しろがね)の大賢者

 加護:【魔術神の加護】【精霊王の加護】【竜王の加護】

 ユニークスキル

 【七竜魔法】

 アンリミテッドスキル

 【妃竜の剣(ラグナロク)



 名前:ドロシー(真名:ドゥ=ラ=メール=ロストアイ)

 種族:ハーフエルフ

 性別:女性

 年齢:130歳

 職業:精霊(エレメンタル)級冒険者、薬師

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:亡国の皇女、森羅の継承者

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スキル

 【調合】【採取】【交渉術】【商人】【金の恵み】【念話】

 エクストラスキル

 【精霊魔法】【月魔法】【眷属召喚】【状態異常無効】



 名前:マリア

 種族:獣人族

 性別:女性

 年齢:10歳

 職業:妖精(フェアリー)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:竜殺し(ドラゴンキラー)

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スキル

 【剣術】【直感】【言語理解】【念話】

 エクストラスキル

 【爆炎魔法】【電光石火】【天駆】【神速】【状態異常無効】



 名前:ジャンヌ

 種族:獣人族

 性別:女性

 年齢:10歳

 職業:妖精(フェアリー)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:竜殺し(ドラゴンキラー)

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スキル

 【執筆】【描写】【言語理解】【念話】

 エクストラスキル

 【大海魔法】【術理】【並列思考】【見えざる手】【状態異常無効】



 名前:テルナ=ローグ=ブラッドメアリー

 種族:吸血鬼(ヴァンパイア)

 性別:女性

 年齢:1999歳

 職業:神竜(ドラグニール)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:真紅の女王(ブラッディークイーン)、血の福音、意思ある災厄

 加護:【最高神の加護】【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スキル

 【鑑定】【鑑定阻害】【隠蔽】他、現存する全てのスキル

 エクストラスキル

 【召喚魔法】

 ユニークスキル

 【全知全能】【無限】【紅蓮魔法】



 名前:シャーリー(シャルロット=リープ)

 種族:人間

 性別:女性

 年齢:25歳

 職業:子鬼(ゴブリン)級冒険者、裁縫師

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:(うつ)ろの影

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スキル

 【暗殺術】【短刀術】【調合】【器用】【蹴撃】【投擲】【針使い】【操糸】【暗視】【詐欺】【窃盗】【姦淫】【礼儀作法】【苦痛耐性】【鑑定阻害】【念話】

 エクストラスキル

 【影魔法】【状態異常無効】



 名前:エヴァ=ベリーディース

 種族:半魔人

 性別:女性

 年齢:18歳

 職業:悪魔(デーモン)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:奈落(ならく)の大賢者

 加護:【混沌神の加護】【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スキル

 【念話】他、取り込んだ魔物のスキル

 エクストラスキル

 【状態異常無効】

 ユニークスキル

 【混沌】【重力魔法】【混沌付与魔術(カオスエンチャント)



 名前:ルウリ=クラウチ=ディガーディアー

 種族:自動人形(オートマタ)

 性別:女性

 年齢:18歳

 職業:悪魔(デーモン)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:錬金術師

 加護:【機械神の加護】【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スキル

 【射撃】【精密動作】【解析】【念話】

 エクストラスキル

 【錬金術】【人形師(ドールクリエイター)】【魔力装填(マナチャージ)】【魔力変質(マナアルター)】【状態異常無効】



 名前:アリス=ラプラスハート=クローバー

 種族:精霊竜王

 性別:女性

 年齢:0歳

 職業:無し

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 称号:精霊王、竜王

 加護:【精霊王の庇護】【竜王の庇護】

 アンリミテッドスキル

 【精霊王の輝冠(ノア)】【竜王の黒逆鱗(ノワール)




 《従魔》


 名前:リルム

 種族:幻獣種・粘魔竜姫(ねんまりゅうき)ベルゼビュートスライムロード

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 職業:粘体(スライム)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スペリオルスキル

 【魔竜の暴食(ベルゼビュート)

 


 名前:シロン

 種族:幻獣種・眠兎竜姫(みんとりゅうき)ベルフェゴールラビットロード

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 職業:粘体(スライム)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スペリオルスキル

 【兎竜の怠惰(ベルフェゴール)



 名前:ルドナ

 種族:幻獣種・空鷹竜姫(くうようりゅうき)マモンホークロード

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 職業:粘体(スライム)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スペリオルスキル

 【鷹竜の強欲(マモン)



 名前:ウル

 種族:幻獣種・黒狼竜姫(こくろうりゅうき)ルシファーウルフロード

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 職業:粘体(スライム)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スペリオルスキル

 【狼竜の傲慢(ルシファー)



 名前:ゲイル

 種族:幻獣種・翠甲竜姫(すいこうりゅうき)アバドンビートルロード

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 職業:粘体(スライム)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スペリオルスキル

 【甲竜の破滅(アバドン)



 名前:トト

 種族:幻獣種・月霊竜姫(げつれいりゅうき)レヴィアムーンエレメンタルロード

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 職業:粘体(スライム)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スペリオルスキル

 【霊竜の嫉妬(レヴィアタン)



 名前:プラン

 種族:幻獣種・冀聖竜姫(きせいりゅうき)サタナエルドラゴンロード

 契約者:リコリス=ラプラスハート

 職業:粘体(スライム)級冒険者

 所属:百合の楽園(リリーレガリア)

 加護:【精霊王の加護】【竜王の加護】

 スペリオルスキル

 【聖竜の憤怒(サタン)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ユウカちゃん美少女すぎて鳥肌 中二っぽいのいい!
2023/11/06 00:05 退会済み
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[気になる点] うーん。シンフォギアに錬金術師の話があってだね? なんか似たようなキャラがいたような居なかったような、別のシリーズのキャラだったようなギザ歯娘だったような
2023/07/23 06:55 退会済み
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