Prologue
「美少女たちにチヤホヤされたい」
いったいどこの誰が、これが私の最期の言葉だなんて思っただろう。
人生は劇的だと誰かが言ったけれど、私の人生がそうだったのかと訊かれると答えに困る。
女の子のことがたまらなく好きで、百合の間に挟まりたく、むしろ百合したかった系で、尚且つ人よりは性への好奇心が旺盛な女子であったことは、劇的とはちょっと違うだろう。
二十歳の誕生日の前日、頭がイカれた通り魔に刺されたことを除くと、平凡ながらも楽しい人生だったと思う。
くっそあの通り魔めネットで晒されて炎上しろ。
死んだら呪いの王もドン引くレベルで呪ってやるからな。
ってまあたぶん死ぬんだけどネ☆
……おお、結構余裕あるな私。
このまま生きられ……るわけないか。
刺されたとこは熱いのに身体は冷たくなってく。
意識も痛みも遠のいてく。
あー死ぬんだなってわかる。
我が生涯に一片の悔いなし、なんて……私の人生は悔いだらけだ。
お父さんとお母さんを悲しませることとか、連載してるマンガの最終回が見られないこととか、予約してたケーキが食べられないこととか、海外旅行したかったこととか。
好きな子に好きって言わなかったこととか。
うわー、今からでも伝えたいなー。
スマホ……あ、もう手動かないや。
あーあ、もし生まれ変わることがあったら、次の人生では好きな子には好きって言うようにしよう。
自分の気持ちをハッキリ伝えて、欲望に忠実に際限も後悔もなく生きよう。
そんで誰もが羨むような楽しい毎日を過ごして、大切な人とめいっぱいの思い出を作ろう。
そしたら私は、きっと胸を張って言える。
私の人生は幸せでした――――と。