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話をそらして誤魔化されていた、より重要な問題

「さて、教科書や文具を盗まれたらどうなるか?

 金銭の問題もあるが、もっと大きな問題がある。

 勉学を妨げるという事だ」

 言われて誰もが「あ!」と思った。



「教科書がなくて。

 鉛筆がなくて。

 ノートがなくて。

 それでまともに授業が出来るだろうか?

 その損失は金銭よりも大きい。

 金で解決出来ないからな」

 無くなったものは、新たに買い直す事も出来る。

 だが、過ぎ去った時間を取り戻す事は出来ない。

「授業をまともに受けられない。

 それによって成績を落とす。

 これほど酷い事は無い。

 特に、特待生にとってはな」



 成績優秀だから王侯貴族と共に学ぶ機会を得られる。

 そんな者達から勉学を奪ったらどうなるか?

 学院にいられる理由がなくなる。

 何せ、成績優秀だから取り立てられたのだ。

 その成績が落ちたら、特待生として扱う理由がなくなる。



「そんな状況に追い込んでるんだ。

 たんに窃盗だけの問題じゃない」

 むしろ、窃盗なぞ小さな問題である。



「それにだ。

 特待生達は将来を嘱望されている。

 そんな者達が落ちぶれたら、国家にとっても大きな損失だ」

 国や領地を背負う貴族の子弟。

 それに混じって統治について学ぶ。

 それが許される、それを求められる人材である。

 それらが成績を落としていくのは、政府にとって損失でしかない。



「それも能力の限界が理由なら仕方が無い。

 だが、他の者による妨害が原因なら許しがいた暴挙だ」

 どうしても勉強についていけないなら仕方が無い。

 そこは割り切って諦めるしかない。 

 だが、別の誰かによる妨害が原因なら話は変わってくる。

「それらは国家への反逆だ。

 相応の対処をとるしかない」



 もちろん、人として誰かに損失や損害を与える事も許されない。

 人間として間違っている。

 しかもそれが、国家の将来に傷をつける事にもなるのだ。

 政府としても放置は出来ない。

 まして、国の責任者である王族ならば。

「この件、学院の中だけで処理されるとは思わないように。

 既に国王陛下にまで話は伝わっているからな」

 そこまでの事態になっている。

 決して軽い問題ではなくなっている。



 教育は国の根幹である。

 将来の人材を育てるのだ。

 その結果の善し悪しが、国の今後に関わってくる。

 だから決しておろそかに出来ない。

 問題があれば、それを改善解消しなくてはならない。

 まして今回は国の中枢を担う人材育成の場での問題だ。

 国王が動くのも当然、何もおかしな事は無い。



「というわけでだ。

 盗む盗んでないって問題じゃない」

 むしろ、それは些細な事ですらある。

 無視してよいわけでもないが、事の重要性からすると、一段落ちる。

「盗みだなんだというのは、話をそらすためだろう。

 より大きな問題を隠すために、小さな問題をでっち上げる。

 よくある手段だ」



 裕福な貴族が安く買える文具などを盗むわけがない。

 確かにその通りだろう。

 だが、自分が使うから盗む、という考えがそもそも間違っている。

 相手の妨害をしたいというのが目的なら、とられて困るものを盗む。

 そこに不思議は何もない。



「まあ、何が理由かなんてどうでもいい。

 それによって損失が出ている。

 それだけで制裁と断罪には十分だ」

 なんであれ、迷惑を被った、損失が発生した。

 それだけで処断する理由になる。

「実行犯も首謀者も、その他の関係者も。

 全員まとめて処罰する。

 これは既に決定されている」

 話はそこまで進んでいる。

 それを知り、生徒達の中には愕然とした者も出てきた。

 教師や学校運営に携わる者はなおさらだ。



「首謀者は、そこの元婚約者。

 それと、実行犯はその係累の貴族子女。

 あと、その間にいる中間管理職と。

 よくもまあ、こんだけの組織を作り上げたもんだ」

 その才能には感心する。

 やってる事はともかく、そういったものを作り上げる才能と能力はあった。

 それはたいしたものだと評価出来る。

「そういう才能を、もっと有意義な事に使ってくれれば……」

 才能の悪用ほど残念な事はない。

 正しく使えば、多くの者が恩恵がもたらされる。

 しかし、それが悪用されれば、多くの者達に被害をもたらす。

 ままならないものである。



「手段も色々だね」

 調べ上げた証拠や犯行の手口。

 それもまた様々だった。

 稚拙なものから手のこんだものまで。

「こういう事を、本当に有益な事に活かしてもらいたいよ」

 そうしてくれれば、国の運営も楽になるのだが。



「友達のふりして接近したり。

 男子を誘惑して兵隊にしたり。

 教師に脅した女の子をあてがったり。

 家のつながりで文部省にまで圧力かけちゃったり」

 調べ上げた様々な情報を並べていく。

「家の取り潰しも含めて処分をするしかないよね、ここまでやってくれると。

 脅されてやったとかは聞かないから」



 その言葉と同時に、パーティ会場から悲鳴があがる。

 心当たりのある者達が、これから待ってる将来に絶望をして。

 そんな彼らに、パーティ会場に潜入していた国王直属の秘密部隊が飛びかかる。

「全員捕まえてね。

 抵抗するなら殺してもいいから」

 王子は非情な措置を言い渡す。

 秘密部隊の者達は、容赦なくその指示を遂行していった。

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