個人だけにとどまらない問題
「問題はそれだけじゃない」
まだあるのか、とパーティ会場の者達は思った。
「特待生だったら文具などは支給される。
だから、金銭的な損失を生徒とその家が被る事はほとんどない」
それを聞いて内心、「え?」と思ったものは多い。
今まで散々金銭的な損失について語っていたのに。
それが実は違う…………というような事を言ってるのだ。
いったい何なんだと誰もが思った。
「そういった文具などの支給品は、政府が出している。
言ってみれば官給品だ。
だから、生徒が負担を受け持つわけではない」
なら問題ないじゃないか、と思った者もいる。
だが、すぐに別の問題点に気づく者の方が多かった。
「それらの損失は生徒ではない。
生徒の家でもない。
国の損失になる」
当たり前だが、官給品は政府が調達している。
それが無くなれば、政府が負担をしなくてはならない。
たとえ小さな金額でも、つもりつもった場合の損失は大きい。
「それを無くしたとなれば、責任追及にもなる。
大げさに言えばな」
小なりとはいえ官給品である。
それが消えていけば、国家予算への負担になる。
もちろん、予算全体から言えば、文具の費用など小さい。
だが、割り当てられる予算はその中の一部だ。
その一部が無駄になるのだ。
全体からすれば小さくても、割り当てられた中でのやりくりを考えると小さな無駄も無視出来ない。
「そこで責任の追求になるんだが。
こういう場合、なぜか盗まれた者が悪者になる。
『なんで管理をしないのだ』と」
おかしな話である。
本当になくしてるのならともかくだ。
だいたいにおいて、そうそう無くすものではない。
「官給品だろうがなかろうが、自分のものを好き好んで無くすものはいない。
それなのに無くなった原因を探る事もなく、被害者に責任を負わせる」
そんな馬鹿げた事が実際に起こってる。
本当に盗まれた者からしたらたまったものではない。
無くしたくて無くしたわけではない。
勝手に消えるのだ。
自分の管理云々ではなく。
それでいて管理責任がなぜか問われる。
盗まれたとは考えもせず。
そう言おうものなら、
「そんな事あるか」
で終わらせられる。
勝手になくなるなんて事は無いのにだ。
無くなるのは、誰かが奪ったり盗んでいるから。
そう考えたりはしない。
いるかもしれない加害者の事は、なぜか無視される。
「まあ、我々生徒の家などを気にしてるのだろう。
だから適当なところで終わらせようとする。
しかも、被害者が爵位の低い者や庶民・平民だ。
そいつらに押しつけた方が楽だと考えるんだろう」
教師陣にしても、上級貴族などを敵に回したくはない。
だから悪いのは立場の弱いに者にしていく。
「そのあたりの責任もしっかりとってもらう」
校長をはじめとした教師。
ならびに、学校の運営側の者達。
それらが震え上がった。
「さて、支給される官給品だから個人の損はないといった。
だが、これにもいくらかの修正や訂正が必要だ」
ここに来て更に一転する話。
生徒達は何がなんだか、といった気分になる。
しかし、相手は王子。
下手に茶々を入れるわけにもいかない。
したら、縛り上げられてる子爵令嬢のようになる。
「官給品の支給にも制限がある。
となれば、無くなった数が支給される限界になれば、あとは自費になる。
そこまでいけば結局、個人や家の損失になる」
つまり、個人にも予算にも打撃を与える。
小なりとはいえども。
「まあ、金銭だけでもこういう問題がある。
その事を、これから国や領地を背負っていく諸君には知っておいてもらいたい」
王子の声に、誰もが背筋をただした。
それらは無関係な出来事ではない。
何らかの形で関係してくる事なのだ。
「さて、金銭や予算の問題はこのあたりにして。
もっと別の、もっと大事な問題について語っていこう」
いったい何なんだと皆が戦々恐々とした。
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