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それがもたらした損害

「さて、事件についてだが。

 あらためて進めていく。

 静粛に聞いてくれるとありがたい」

 言われた通り、貴族令息と令嬢達は黙っていく。

 下手な事をすれば、子爵令嬢のようになる。

 その事を嫌と言うほど感じ取って。



「被害は基本的に、こまごまとしたものを盗むといったもの。

 先ほど言った通りだ」

 王子は子爵令嬢によって中断させられていた話を続ける。



「例えば、鉛筆だとか、ノートだとか。

 あるいは教科書だとか。

 上履きなどもそうだな。

 制服の一部、首に巻くスカーフなどだ。

 それらが無くなるというものがほとんどだ」

 それを聞いて、多くの者達が思った。

 たいした事ではないと。



 実際、たいした損害や被害とは思えない。

 それだけ聞けば、小さな問題だとすら思える。

 わざわざ取り上げるほどなのかと。

 少なくとも、事件にするほどではないのでは、と多くのものが思った。

「そう思わせるのが策略や謀略だ。

 陰険で姑息だ」

 王子はそういって、誰もが思い浮かんだ事を切り捨てた。



「だからこそ、計略としては効果的だとも言える」

 小さな事である。

 だから見逃せ。

 そう言う者も出てくる。

 実際、そう言う者は多い。

「だが、とんでもない大間違いだ」

 王子は断言する。



「小さくても損害は損害。

 見逃して良いわけがない」

 この事を忘れ、取るに足らない事と片付ける。

「そうさせる、そう言っていく。

 それが計略や謀略だ」



 小さいからといって放置して良いわけがない。

 被害は被害なのだ。

 それで損害を受ける者はいる。

 鉛筆一本でも、無くなればそれを購入する費用の分だけ損をする。

 ノートもそうだ。

 その損失を無視しろというのは間違ってるだろう。



 小さい事も積もれば大きい。

 このことも見落とされがちだ。

 例えば、鉛筆。

 一本100円程度だとしよう。

 あるいはもっと安いかもしれない。

 そんなものでも、まとめて何本もなくなれば損失は大きくなる。



「毎週何本もなくなれば、損害は大きい。

 仮に一日一本無くなれば、まあ、一週間で5本か6本。

 これが毎日だと損害も馬鹿にならない」

 しかもなくなるのは鉛筆だけではない。

 消しゴムに定規にノート。

 様々なものがなくなる。

 それらの損害合計は、決して安いものではない。



 もちろん、貴族だったら、それほど大きな損害にはならない。

 少なくとも大貴族にとっては。

 しかし、末端の貴族ならばこれが結構大きな痛手になる。

「有力貴族の親戚など、後ろ盾があるならともかく。

 末端の貴族なら、これだけでも大きな損害だ」



 貴族と言っても様々だ。

 本当に末端だと庶民と大差ない暮らしをしてる。

 それらは役所の一般職員だとか、そういった仕事に従事している。

 一応は政治に携わるので、貴族が従事しているのだ。

 貴族とは名ばかり、という事も多い。



 また、本当に貴族ではない者達。

 庶民や平民などからすると、鉛筆やノートの紛失はそれだけで大きな損害になる。

「そういった者達の事を考えず、小さな損失だと思わないでもらいたい」

 王子はパーティに参加してる一定以上の地位にいる貴族子弟に釘をさす。



 しかし、王侯貴族の通う学院に、そんな身分の低い貴族子弟がいるのか?

 庶民や平民がいるのか?

 そういう疑問も出てくる。

 いるのだ、そう数多くはないが。

 単純に爵位だけなら、件の子爵令嬢が良い例になる。

 子爵の地位そのものは貴族の中では低い。

 しかし、それでも有力貴族子弟の通う学院の生徒になっている。

 これは、子爵といえども元をたどれば有力貴族だからではある。

 しかし、爵位だけで選別されてるわけではない証拠でもある。



 また、そうでない、本当に爵位の低い貴族。

 そして貴族ではない庶民や平民。

 そういった者達も確かにいる。

 成績優秀という事で特待生として入学してきている者達が。

 将来の高級官僚などに育てるために、貴族の学院に通っているのだ。



 これには、まだ国内に統治に関わる教育を施す機関が他にない事。

 それに、将来に備え、学生のうちに顔なじみになっておく事。

 ついでに下級貴族や庶民・平民にはなかなか縁の無い上流社会の雰囲気を伝える事。

 こういった理由により、王侯貴族が通う学院にて学ぶ事になっている。

 もっとも、それだけでは手狭になってきてるので、新たに専門の学習機関を作る計画もある。

 だが、今はまだ上流貴族から庶民や平民までおなじ学院に通わせている。



「そんな者達にとって、鉛筆やノートが何本も無くなるのは大損害だ」

 余裕のない者達にとっては、小さな損失もかなりの痛手になる。

「それを狙っての事だろうな。

 ここにいる大半には分からない。

 何の問題もないと思える事。

 だから誰も問題視しない。

 なんでそんな事を、とすら思う。

 そういう所に目をつけている」

 だからこそ悪質だった。

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